HOME>あしたのまち・くらしづくり活動賞>29年度あしたのまち・くらしづくり活動賞発表
|
|
|
|
|
29年度あしたのまち・くらしづくり活動賞発表
|
独自の発想により全国各地で活発に展開されている地域づくり・くらしづくり・ひとづくりの活動に取り組んでいる地域活動団体等を表彰する、平成29年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(主催・公益財団法人あしたの日本を創る協会、NHK、読売新聞東京本社など)の各賞が以下の通り決定しました。
■内閣総理大臣賞
京都府 特定非営利活動法人加茂女
■内閣官房長官賞
京都府 中世木区
■総務大臣賞
福井県 特定非営利活動法人農と地域のふれあいネットワーク
■主催者賞
岩手県 特定非営利活動法人くちない
大阪府 箱の浦自治会まちづくり協議会
広島県 PiNECoNeS LLP
福岡県 特定非営利活動法人チャイルドケアセンター
宮崎県 塩見まちづくり協議会
また、振興奨励賞には20団体が選ばれました。今年度の応募総数は218編でした。
|
|
■内閣総理大臣賞
竹を活かした町づくりを目指して |
京都府 特定非営利活動法人加茂女 |
【活動内容】
地場産業だった竹や筍の需要が減少し、荒れた竹林にゴミが不法投棄された。それが誘因となり、産廃の埋め立て地ができてしまった。自分たちで元の美しい竹林風景を取り戻すべく、荒れた放置竹林の整備に取り組む。しかし、工作品なども手掛けるも一向に減らない竹の活用に「食べて減らす運動」を展開。竹や筍の食品開発、製造販売に取り組む。
1.活動の発端
「特定非営利活動法人加茂女」は、35年前に加茂町(現・木津川市)の南の端、奈良市との県境に新しくできたニュータウン(南加茂台)に引っ越してきた女性たちが集まって、子育ての悩みを相談したり、生活の知恵を教え合う公民館サークルとして発足した。活動する中で「何か地域に役立つことをしよう」と、アルミ缶回収を行い、その売却益を社会福祉協議会に寄付した。
当時、住宅地の周辺は、山城筍の主生産地であり風光明媚な竹林風景が広がっていたが、竹の需要の減少により、竹林が荒廃した。そこにゴミが不法投棄され、産業廃棄物の埋め立て地ができてしまった。そこで、森や竹林を荒らさないことが重要だと考え、自分たちで竹林整備に取り組む。しかし、整備しつつ、竹の工作品なども手がけたが、竹は一向に減らず、熟慮の末、「竹を食べて減らそう」と、竹や筍の食品開発に取り組む。「筍お焼き(かぐや姫のおやつ)」の製造、販売を手掛け、また、竹の器を使ってのカフェやランチ提供などにも取り組む。
2.活動の発展
ボランティア活動から始めた団体だが、法人挌を取得し、食品部門で人を雇用するまでになる。高齢化が進む地域における町づくりにおいて、雇用の場の提供や居場所づくりは大きな意義がある。
また木津川市の美しい竹林風景を内外に再認識してもらうため、地域のコミュニティの拠点となる「竹と筍の魅力発信活動拠点」としてのアンテナカフェを目指している。
そのほか、アルミ缶回収活動、リサイクル啓発活動を中心にした月1回のミニコミ誌の発行。竹林整備活動とそれに付随する筍食品開発と製造販売や町おこしのためのイベントへの積極的な参加など、スタッフ一同は日々奮闘中である。
3.今後の目標
今後も地域の竹林を守り続けるために、竹や筍で採算が合う安定した事業を展開することが必要であり、それを成し遂げ他の見本となるような団体になることを目標とし、次世代へ確実に引き継ぎたいと頑張っている。
【評価された点】
女性だけで荒廃した竹林の整備に乗り出し、竹、筍を利用した商品開発に取り組み、成功している。まさに、邪魔者を宝に変えた地場産業復活への取り組みである。常に、町づくりを念頭に、前向きに将来を見え据えた姿勢で取り組んでおり、今後の町づくり活動も大いに期待できる。他の同様な問題を抱える地域のお手本になるのではないか。
|
|
■内閣官房長官賞
子どもの声が聞こえるむらづくり |
京都府 中世木区 |
【活動内容】
南丹市日吉町中世木区は急速に高齢化が進行し、65歳以上が49%と限界集落直前だった。あきらめと閉塞感が漂い、「なんもないところ」「いいところなんかあらへん」と言われていた。そのような中で平成24年に就任した新区長が、「このままではいかん。なんとかせねば」という危機感から、集落に元気と明るさを取り戻し、「子どもの声が聞こえる村づくり」をしたいと思い、40代、50代を中心にした壮年会有志が未耕作地の棚田を棚に見立て、お雛さんを飾る「棚田ひな祭り」を実施した。また、集落に30、40歳以上の独身男性も多いことから、同時に婚活も実施。祭りには多くの都市住民はじめ、区外の人々が訪れ、また婚活では集落の独身男性にカップルも誕生(平成27年度には入籍し、中世木区に居住)するなど大いに盛り上がった。
その成功を受け、集落のみんなで「集落のいいとこ探し」の発表会を開催した。そこで集落の山野草愛好家が絶滅危惧種セツブンソウの群生地を発見したことを発表。「これを公開して集落の活性化に役立てよう」と、「せつぶん草まつり」と称してセツブンソウの公開を平成25年3月に実施した。都市の山野草愛好家を中心に4日間で、集落の人口の約5倍にあたる約600人が訪れた。集落には団結と自信が湧き、活動が始まった。
当初「棚田ひな祭り」に疑問を抱く住民もいたが、翌年からは老人会が焼き芋スタッフとして参加、うどんやお弁当作りは奥さんたち、3年目には都会に出ている息子さんや娘さんも帰省して応援。集落全体が楽しむお祭りになった。
山間の集落である中世木の厳しい自然環境の中でみんなが助け合いによって暮らしてきただけに、いくらか閉鎖性もあったことは否定できない。しかし、これらの取り組みにより集落外の人々、都市住民の交流を通じ、集落のみんなに自信が芽生え、誇りが養われ、「ウエルカム」「オープン」精神が湧いてきた。昨年、集落の空き家に3組の若い家族が移住し、5人の子どもも集落に加わった。ついに「子どもの声がきこえるむら」となり、限界集落から脱することができた。集落に元気がある、集落の人たちが楽しそう、里山や棚田がきれい、春になるとセツブンソウが咲くこの里で暮らしてみたい、これが移住の動機だという。
継続的に実施していくため、「棚田ひな祭り」は区の事業とし、お祭り当日地元の野菜や米等を販売し、運営資金を捻出することとした。「せつぶん草まつり」は、山野草を愛好する地元住民が「中世木せつぶん草を守る会」を結成し、参加者から保存維持協力金を頂き、運営することにした。
一旦は限界集落から脱したものの、急激な高齢化は避けられない。今後も美しい里山環境を守り、みんなが楽しく過ごせる集落を創っていくため、集落の将来構想を提言する「中世木ビジョン委員会」を今後の集落を担う、壮年層や女性、Iターン者を中心に立ち上げた。すでにいろいろなアイデアや実践活動が出ている。例えば、集落の背後の急峻な岩山から流れ出す清流で栽培したお米は京都市内などの直売店で「中世木産」として直売し、好評を得ている。また、鳥獣が食べず地元でもあまり食べなかった「鬼ひかげわらび」を京都市内で販売したところ珍味として好評を得た。また、山に群生する「ひげのかづら」もお茶花としてお花の先生に販売できた。
さらに、福知山公立大学の塩見直紀准教授の指導により、みんなで中世木の良いところを紹介した「AtoZ」誌を作成。なにもないところから、動けば形になることがみんなに実感できるようになった。
【評価された点】
地域特性を生かした活動で、地域の魅力を再発見し活性化を進め、実際に移住者が出ている点等が評価された。
|
|
■総務大臣賞
農林水産業ビジネスの創出と地域づくり |
福井県 特定非営利活動法人農と地域のふれあいネットワーク |
【活動内容】
福井の豊かな里地・里山・里海を再認識するために、心の原風景というべき場所を訪れ、家族と生活、食と文化、歴史と産業について、様々な視点から専門的な解説者と交流し、地域づくりと新しいビジネスの創出を行うことを目的としている。
1.設立の経緯
平成16年6月福井県農林水産部の技術者OBが中心となり、「NPO法人農と地域のふれあいネットワーク」を設立。現在会員は40名、理事5名、常勤者は理事長1名で、理事会は月1回開催され、各事業別に会員が担当することを原則としている。法人の理念は、地域における農林水産業と消費者・地域資源との結びつきを深め、新しいコミュニティビジネスの創出を図るとともに、農林水産業が地域にとって、かけがえのない財産であることを普及することである。
2.主な活動内容
@梨の木オーナー、梅の木オーナー、田んぼのオーナー体験事業
平成17年度から開始の坂井市三国町池上地区における「梨の木オーナー体験事業」、平成19年度から開始の若狭町西田地区の「梅の木オーナー体験事業」、平成23年度からは「田んぼのオーナー体験事業」を越前町上糸生地区で実施し、農業を軸とした活力ある地域づくりを目指している。梨園の継続に悩む農家からの相談をきっかけにはじめた。オーナー制の事業により、農家が一定の収入を得られることになったこと、農家と消費者である市民との交流が新たな農業体験ビジネスへとつながっている。
A農林水産業の多面的機能を活かした体験学習・教育支援「ふるさと学級」
福井の生活と家族、文化と歴史、食と産業について様々な視点から専門的な解説者と交流しながら心の原風景というべき場所を訪れ、福井の豊かな里地、里山、里海を再認識することを原則として開催。平成17年度から実施し12年目。28年度は23回実施、558人が参加。
Bふるさとワークステイ(田舎暮らしを宿泊体験・福井県の田舎でボランティア)
県内農山漁村に滞在し、農作業、地域づくりのお手伝いなどを体験。期間は1泊〜3泊程度で長期滞在などの研修等については別のプログラムを用意。28年度は年間68人が利用。
3.今後の課題と展望
・グリーンツーリズムとふるさとワークステイとの連携も視野に入れながら地元の県農林総合事務所や農協、梨組合、農家の協力を得ながら今後も継続していきたい。
・就農希望者や移住希望者に対する行政の役割、農家の役割、NPO法人の役割をもって明確にして、農地の貸し出し、農地の購入等に積極的に対応すべきと考えている。
・地域住民と交流しながら、公共施設も利用しながら、その地域にあった地域づくりとして、農産物の直売・直販など多様な流通の組織形態にも対応できるように続けていきたい。
・農林水産業の単なる体験ではなく、時代の背景や産業の変遷を知り、触れて、見て、味わい、考え、心に感じる事業を展開したい。
【評価された点】
◎農林水産業を生かしたコミュニティビジネスを創出。農業維持と地域の魅力再発見に取り組んでいる。
◎都市と農村との交流、農村の魅力再発見といった成果につながっている。
◎地域資源を活用しながら、人口増加や就労などのきっかけになる取り組みをしている。
|
|
■主催者賞
地域のために何ができるか常に考えて |
岩手県 特定非営利活動法人くちない |
【活動内容】
「最寄りバス停まで徒歩30分以上かかる高齢者の足を確保したい」
路線バス廃止に伴う地域住民の困ったの声がきっかけとなり、平成20年、口内地区における「自家用有償旅客運送」の取り組みがはじまった。岩手県北上市口内町は人口1,600人ほどが暮らす中山間地域。かつては3,000人以上が暮らしていたこの町も現在では高齢化率43%超。このペースで人口減少・少子高齢化が進むと、2020年には地域コミュニティの維持が困難となる「限界集落」となる。
そこで平成20年度に口内町自治協議会が林野庁の山村再生プラン助成金を活用して自家用有償旅客運送の実現に向けた社会実験を実施。地域の実情に添った交通システムの構築を目指して、町民アンケートの実施とボランティアドライバーによる試験運送を行った。自家用有償旅客運送を本格実施するために動き出したが、実施には法人格が必要とわかり、平成21年にNPO法人を設立。また国土交通省・東北運輸局岩手運輸支局へ申請のため、公共交通機関、タクシー会社、労働組合などが参加する協議会の同意が必要だったが、タクシー事業者から猛反対されるなど各方面との調整に1年以上かかり、平成22年に自家用有償旅客運送のスタートを切った。
運送には2種類あり、一つは町内の好きな場所まで行くことができる町内型運送(公共交通空白地有償運送)で、登録に1世帯あたり年間1,000円、利用料金は片道100円である。もう一つは病院や公共施設まで行くことができる町外型運送(福祉有償運送)で、「要支援、要介護、または市が同等に認める人」が対象となり、料金は距離制で800円〜1,200円となっている。運送を行うドライバーは現在11人で、法定講習を受けた30代から70代までの地域住民が担っており、車両はドライバーの個人所有車と当法人の所有車を利用している。また、利用者は事前にチケットを購入して支払いを行う。
利用者数は初年度の261人から年々増加し、平成28年度には交通空白地有償運送と福祉有償運送合わせて、延べ1,300人以上の利用があった。さらに、町の中心部にあったJAストアが撤退したことを受け、買い物困難者のために旧ストアを借り上げ、平成22年の運用実験を経て翌23年4月から日用品の販売を行う「店っこくちない」の運営を開始。その後、厨房の増設等を行い、手づくり総菜の販売を始め、買い物困難者のための宅配サービスも行っている。バスと自家用有償旅客運送の結節点(待合場所)に当法人の機能を集約し、「地域のよろずや」として多くの人が訪れる場所になっている。来店者数は現在、買い物客を含め年間5000人以上、売上も400万円ほどとなっている。
課題は、自家用有償旅客運送の登録世帯数が少ないことがあげられる。法人設立当初は町内全世帯の登録を見込み、50万円ほどの活動資金が確保される計画だったが、平成28年度の登録世帯数は58世帯と、町内全世帯の約1/10程度にとどまっている。当事業収支は運賃収入や市からの補助金があっても赤字の状況が続いている。しかし自家用有償旅客運送は活動の原点であり、地域の重要な生活基盤を支えているという思いから利用料金の値上げは行わず、他事業の収益でまかなっている。
【評価された点】
NPO法人として、自家用有償旅客運送を運営し、地域に根差した活動を行うとともに、待合場所での販売、特産品の開発などにも取り組んでいる。
|
|
■主催者賞
箱の浦のことは、箱の浦で解決する |
大阪府 箱の浦自治会まちづくり協議会 |
【活動内容】
1.概要
人口1,930人・世帯数732世帯、平成24年6月には地域の高齢化率が39%に達し、市内中心地まで8km、最寄り駅まで2kmに位置する交通困難地域で生活課題をいかに解決していくか。地域の自治会、地区福祉委員会、趣旨賛同者等が集まり、2012年6月にまちづくり協議会を立ち上げた。
行政に頼るのではなく住民同士の支え合い活動として、高齢者等住民の集まれる場所「おしゃべりサロン」、高齢者がランチをともにとる「ランチハウス」、子どもたちが集える場所「子どもサロン」等を開設して地域の活性化に寄与している。活動の自主財源を確保するため、廃品回収、お助け隊、サロンでの収入で運営を行っている。また、買い物困難地域を解消するため、朝市を平成24年11月より毎週土曜日9時より開催。その他として生協の移動販売車の誘致に取り組んでいる。
2.活動内容
@「おしゃべりサロン」
行政の援助を受けずに地域のことは地域で解決を目的に、まず高齢者が集えるたまり場「おしゃべりサロン」を開設。平成28年10月に毎週火・木の週2日の運営でスタート、1回40人(予算は20人)と予想以上の賑わいだった。
A「朝市」
「おしゃべりサロン」を拠点に同年11月には、買い物困難地域を解消すべく、「朝市」の開催を計画して毎週土曜日開催。野菜、新鮮な魚、パン・ケーキ・漬物・陶器と販売品目もできるだけ多彩にした結果、毎回100名の参加者があった。参加者から精肉や日常生活品の販売の要請があり、平成26年12月から「生協の移動販売車」を導入して、買い物困難地域を名実ともに解消して5年になる。
B「子どもサロン」
平成25年には、地域の子どもは地域で育む、を合言葉に、「のびのびクラブ」を創設して毎月イベントを運営し、平成28年度末には最終目的の「子どもサロン」=子どものたまり場として読書、語り、宿題などができる子どもが主役のサロンを開設した。
C財政基盤の確立「お助け隊」「再生資源の回収事業」
他方、財政基盤の確立にも努力を注ぎ、平成25年には、高齢者の便利屋として「お助け隊」を創設して高齢者に喜ばれている。現在では地域の空き地の除草、屋根のペンキ塗り等に発展して財政に寄与している。また平成26年には「再生資源の回収事業」を開始。業者に回収させるのではなく、自分たちでアルミ缶・新聞紙・段ボール・雑誌などを回収して業者に持ち込み、年間65万円(市からの協力金を含む)の収入になっている。
D「ランチハウス」
平成27年には、食事から健康を考える為の「シニアランチハウス」を開設。民家を借りて高齢者、特に一人暮らし、認知症の人たちの参加を積極的に呼び掛け「ランチハウス」には毎回20数名が参加し、500円の会費で食事はもちろん食後はカラオケ等を楽しんでいる。
【評価された点】
◎高齢者の生活に視点を置き、いま必要とされている活動を展開。自主財源で補うなど継続性も保たれている。
◎地域のことは地域で解決を図るべく、地域の困難な課題を乗り越え、バイタリティにあふれた様々な取り組み。
|
|
■主催者賞
自然体でまちづくり=「まちあそび」 |
広島県 PiNECoNeS LLP |
【活動内容】
「都市に行けばお洒落なイベントや場所がたくさんあるのに、この辺りには全然ない」と劣等感を感じていた平成23年秋、大竹市にゆかりのある雑貨作家にこだわった「デアイマルシェ」というイベントを企画・開催した。小さなイベントに、約900人のお客さんがやってきた。
メンバーはすべて女性、カフェやエステ店を経営したり、WEBデザイナーやグラフィックデザイナー、カメラマンの仕事をしていた。
デアイマルシェを開催した地区には、平成20年に廃校になった『旧松ケ原小学校』が壊されず残っていた。「次のデアイマルシェは、この廃校を使いたいね」と、2回目以降のイベントはこの廃校で行うことになった。平成24年に2回目、平成25年に3回目を開催し、延べ7千人以上のお客さんが山間の廃校に足を運び、中には「懐かしい!」と見て回る卒業生もいた。
平成25年の初夏、市役所の人たちと別の取り壊し予定の廃校に入る機会があった。転売できそうな廃校備品は業者が買い取っていき、残ったものは捨てるという。「もったいないですよ!これ売れますから!」思わず言ってしまった。旧松ケ原小学校にも備品がたくさん残っていて、イベントでの廃校備品販売を市役所に打診し、OKの返事をもらうことができた。
小さな椅子や楽器、ビーカーや絵本や教材。使われずに朽ちていくのはもったいないし、子どもたちにまた使ってもらいたい。旧松ケ原小学校を会場に、平成26年11月、市役所との市民協働事業として《廃校ノスタルジア》を開催。この日、廃校備品販売だけで100万円以上を売り上げた大竹市は、広島県から表彰された。
大竹市は、広島県で唯一、手漉き和紙の文化が残る地域。高齢化や原料の問題など多くの難題を抱え、近い将来、途絶えてしまうのでは…というところまできていた。平成24年、「大竹和紙を盛り上げて手伝ってくれないか?」という話をもらった。「まずは体験してみよう」と《大竹手すき和紙の里》へ行った。和紙の原料である楮(こうぞ)がこの地で栽培され、使われていることをはじめて知った。この地に残った貴重な和紙の文化を何とか残し伝えたい。でも自分たちがそうであるように、よく知らない人も多いはず。…なら、楽しみながら知ってもらうのはどうだろう?と、多くの作家に大竹和紙を使って作品を作ってもらい《大竹和紙小市》という和紙のイベントを開催した。
平成25年頃からは、《楽しいことを作り、ひとが集まって、行き交い出会える場所=拠点》を真剣に探し始めた。平成27年の夏、期間限定の選挙事務所として使われている空き家があることを知り、築70年のこの空き家を思い切って借りることにした。空き家の改装でも、今までの活動でつながった人たちが大竹市内外から手伝いに来てくれた。
改装中のこの拠点は、玖波駅の近くにあることから《98base(くばべーす)》と名付けられた。
「空き家の1階は絶対にカフェにしよう!」とメンバーたちは決めていた。見ず知らずの人たちが自由に集まるにはカフェは必須。おいしいものを一緒に食べれば、人は自然と仲良くなる。
半年かけて改装した1階は、手作りの美味しい食事ができるカフェとしてオープンし、若い人から近所のおじいちゃんやおばあちゃんまで、ふらっと食べに来てくれる素敵な空間になった。2階は赤ちゃんからお年寄りまでが来て家族の記録を残す明るい写真スタジオとなった。
仕事場でも家庭でもない「第3の居場所」を得たという6人。自分たち以外の人にとっても居心地のいい場所になれたらいいなぁと、98baseの楽しさを日々発信している。
【評価された点】
女性6人で古民家、廃校を利用しての様々なイベントを開催し、楽しいことを共有できる場づくり、また、市外からの参加者も増え地域の活性化に大いに貢献している。
|
|
■主催者賞
地域の皆で地域の子どもを育てる子育て支援 |
福岡県 特定非営利活動法人チャイルドケアセンター |
【活動内容】
福岡市の南に隣接する大野城市(人口約10万人)を拠点に、筑紫地区4市1町(人口約43.5万人)で子育て支援活動をはじめて20年、NPO法人化して16年になる。主な活動と成果は以下の通りである。
1.子育て情報誌「びぃーんずキッズ」を基盤にした乳幼児の子育て支援事業の創出、20年間で75号、約150万部を筑紫地区で発行する。
・「HAND IN HAND」:育児サークルのリーダーをネットワーク化、各地の育児サークルのリーダーの悩みの解決と活動内容の充実を図る相互学習を行う。
・「中学生サロン」:乳幼児の親子と中学生が家庭科等の授業の一環で育児体験をするサロンを学校と協働で立ち上げ、シニアボランティアと「ママ先生」約30名と一緒に運営。現在は、九州大学の授業でも行っている。
・「キッズステーション」: 0〜6歳の年齢別の有料育児サークル事業を立ち上げ、子どもの育ちに合わせた同じ悩みを持つママ同士の交流を広げている。
2.大野城市との協働で子育て支援施策の充実
・「ファミリー交流センター」の管理運営:大野城市が平成16年に子育て支援の拠点「ファミリー交流センター」の設置が決定し、乳幼児の子育て支援の実績から管理運営を行う。平成22年からは地域の親子サロン「ぞうさんひろば」を4つのコミュニティセンターで開催する。
・学童保育:大野城市の学童保育(市直営、月〜金)から相談を受け、平成15年、自主事業で土曜日学童保育を実施。この実績から平成16年から大野城市の学童保育事業を受託、現在、学童保育の支援員144名、市内10カ所、小学1〜6年生の児童1,000名以上を月〜土曜日まで預かっている。特徴の1つは、支援員がファミリー・サポート・センター事業のお助け会員となり、学童終了の19時以降は、学童保育所で延長でのお預かりに対応する。
3.「子ども食堂」と「子ども食堂に特化したフードバンク」の両輪で地域の居場所づくりを支援
・子ども食堂の立ち上げ支援:平成27年から全ての子どもたちの居場所となる「子ども食堂」の立ち上げに必要なノウハウを、地域の会議に参加して伝える支援を自主事業として行っている。大野城市の27行政区の各公民館のうち12カ所(今後新規で5カ所開催予定)、春日市3カ所、太宰府市2カ所、那珂川1カ所を支援する。
・子ども食堂の支援に特化した「ふくおか筑紫フードバンク」事業:平成27年にNPOの自主事業ではじめた食材の寄付受付・配布を平成28年7月に運営委員会方式にて透明性ある体制に刷新、子ども食堂の支援に特化したフードバンクを事業化。子ども食堂の運営団体をネットワーク化して、調理時の安全対策、運営の悩みを意見交換する場を設け、食材と運営ノウハウの両方を提供して「子ども食堂」の運営の継続を支援。
かつての子育てママが支援する側になり各事業への参画も増加。1,000名以上のボランティアと共に、世代を超えた縦、横、斜めの交流機会をつくっている。
【評価された点】
活動開始から20年、子育て情報誌発行、自治体との協働による子育て支援、子ども食堂の立ち上げ支援など多くのボランティアとともに実績を重ね、世代間交流事業にもつながっている。
|
|
■主催者賞
安心して3世代が暮らせ笑顔あふれる塩見 |
宮崎県 塩見まちづくり協議会 |
【活動内容】
宮崎県日向市にある塩見地区の40代を中心とするメンバーで平成22年に結成し、まちおこしの活動に取り組んでいる。基本理念は「えがおがあふれ、ひょっとこもびっくり、やっど!!403(しおみ)」。大学と連携したブルーベリー葉栽培や、放課後子ども教室における子どもの健全育成に力を入れている。
1.設立の経緯
塩見地区は、農村地域で6つの自治会で構成し、人口3,500 人、1,200 世帯が暮らす。近年は少子高齢化と若者の減少が進み、地域行事の衰退や農業後継者不足などの問題を抱えていた。平成22 年9 月に、当時の塩見厄年会・厄年OB会の40 代を中心とするメンバーが立ち上がり、「塩見まちづくり協議会」を結成した。
2.主な活動内容
@ブルーベリー葉の栽培
遊休農地の解消と自主財源確保のため、平成24年からブルーベリー葉の栽培に取り組む。平成24年に、宮崎大学から日向市へ実証ほ場の打診があった時に名乗りを上げて、その年の11月に、塩見地区内の20aの畑(遊休地)に約7,000本のブルーベリーの苗の植付け。年々収量が伸び、28年度には4.3tの収量、約100万円の収入となった。また塩見独自のブランドとして開発した「ブルーベリー&へべす」ブレンド茶も道の駅やインターネットで販売。
A放課後子ども教室
平成23年から市の委託を受けて、日向市立塩見小学校の児童を対象とした『しおみっ子放課後子ども教室』を運営。教育活動推進員や教育活動サポーター12人が、日替わりで担当し、年間を通じた農作業体験や、陶芸、お菓子作り、太鼓の練習などの活動を行う。特に、農作業体験では、校舎横に子ども教室用の畑を設置して、子どもたちが教育活動サポーターとともに、四季折々の野菜を苗の植付けから収穫を行う。子ども教室の運営について、毎月定例会を開催し協議。子ども教室が設置されて以降、塩見小学校児童数の3割以上が子ども教室を利用。市内全体の児童数が減少している中で、塩見小学校の児童数がここ数年は増加に転じている。
B403(しおみ)弁ラジオ体操第一
地域住民の健康増進と塩見への一層の愛着を育むため、平成26 年11 月にラジオ体操第一を塩見弁にナレーションしてCD化。地区内外の反響の大きさからCD約800枚を無償提供。
C塩見ウォーク
まち歩き専門家を招き、歴史や文化を結び付けながら、塩見の宝の再発見を行う。
D市の施設を核とした活動
平成24年度から日向市農産加工施設「日向市農村交流館」の指定管理者として運営。ここを拠点に、地元の河川組合との共催「塩見川かんきょう教室」や、親子で参加の「しおみ竹細工教室」、高齢者ストレッチ教室などを開催。
【評価された点】
◎財源確保のため、ブルーベリー葉の栽培を行い確実に収入を得ている。
◎地域をあげた取り組みで、小学校の児童数が復活傾向にある。
◎40代の父親世代が中心となり、大学等と連携した特産品栽培や放課後子ども教室運営支援、ウォーキングイベントの継続開催などを実践している。
|
|
■振興奨励賞 |
北海道函館市 高丘町会 地域活性化のための3本の矢 |
|
北海道浜中町 特定非営利活動法人霧多布湿原ナショナルトラスト この湿原を未来の子どもたちへ |
|
岩手県奥州市 水沢南大鐘寿会 震災復興支援「咲かそう笑顔、つくろう元気」癒し励まし演芸仮設訪問公演 |
|
宮城県登米市 特定非営利活動法人とめタウンネット ばけつから始まる街と田舎の交流事業 |
|
埼玉県狭山市 特定非営利活動法人グリーンオフィスさやま セルフエイドによるコミュニティ&団地再生 |
|
千葉県船橋市 NPO法人情報ステーション 民間図書館事業を中心とした多世代交流事業 |
|
千葉県佐倉市 特定非営利活動法人人づくり街づくり環境づくり 地域で推進する「もう一つのがっこう」 |
|
千葉県流山市 東初石一丁目自治会 自主防犯パトロール隊
自主防犯パトロールによる地域防犯、地域点検による安全・安心の町づくり活動 |
|
新潟県上越市 NPO法人三和区振興会 交通弱者のための外出支援 |
|
石川県七尾市 小牧壮年団 世界農業遺産「能登の里山里海」の祭りを守る! |
|
福井県福井市 福井県生活学校連絡協議会 動けば変わる、変えられる |
|
山梨県甲府市 羽黒町自治会 自分たちのまちは、自分たちで創る |
|
三重県四日市市 防災一座 防災と災害救援をテーマにしたまちづくり |
|
滋賀県東近江市 能登川病院をよくする会 地域医療の拠点たる病院の存続と発展のため |
|
京都府長岡京市 乙訓地名詩編纂「チーム乙訓」 みんなで作る乙訓の景観カード |
|
大阪府吹田市 特定非営利活動法人吹田市民NPO 住み慣れた地域での共生の場づくり |
|
兵庫県明石市 特定非営利活動法人兵庫子ども支援団体 子どもが笑って過ごせる地域の形成 |
|
兵庫県太子町 斑鳩ふるさとまちづくり協議会 斑鳩の文化・歴史的景観を活かしたまちづくり |
|
岡山県瀬戸内市 牛窓しおまち唐琴通りの保存と活性化プロジェクト 地域に自信と誇りを醸成するまちづくり活動 |
|
鹿児島県枕崎市 特定非営利活動法人子育てふれあいグループ自然花 体験活動を通じて取り組む子育て支援 |
|
|
|