「あした通信」186号掲載
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運動に共感 NPOから生活学校が発足
新潟県三条市 三条生活学校
 三条生活学校(代表・川瀬弓子さん)は女性の地位向上を目指すNPO法人「女性会議」と幼児やお母さんに遊ぶ場を提供するNPO法人「三条親子劇場」が手を取り合って発足した生活学校だ。NPOから生活学校がつくられる例は珍しい。もともと女性会議は75名、親子劇場は30名のメンバーで構成されていた。三条生活学校はあしたの新潟を創る運動協会の関良策事務局長が2つの団体のメンバー数名に呼びかけて発足したもの。関事務局長は同校の「他に頼らず野に自立する生きる逞しさをもっている」ところに将来性を感じていると語る。現メンバーの目的は親子劇場に参加してきた者いお母さんたちの視点と男女共同参画を長年考えてきた女性会議の豊かな知識を相互に生かし、暮らしに根ざした活動を進めていくことだ。現在「若いお母さんと幼児」が楽しめる場の提供とそのサポートに女性の地位向上、高齢者の生活のあり方を含わせて考えることで地域交流を進めている。


子育支援や男女共同参画をテーマに

 同校が今までに進めてきた「親子劇場の活動の継続」、「女性会議による調査の継続」、「親子劇場でワークショップの開催」、「子どもと高齢者の24時間調べ」などの活動は、親子劇場と女性会議がもともと取り組んできた活動をさらに深めたものだ。例えば、最近は生活学校のメンバーが子どもたちと遊んでいる間、お母さんたちが体を動かして日頃の育児の疲れをとったり、仲間との交流を楽しんだりする「お母さんのエアロビ講座」が大人気。少なくとも毎回30組の親子が参加するという。これなど同校が発足する以前から小さな子どもやそのお母さんたちに遊ぶ場を提供してきた親子劇場の取り組みを発展させたものだ。女性会議では、同校が発足する前にも男女共同参画に向けて意識調査を中心に様々な活動を行なってきた。三条市内は中小零細家内工業を生業としている女性が多い。そうしたことから同会議は働く女性のために真の男女平等とは何かを考え、その実現を常に目指してきた。
「女性問題には介護と子育ての問題が必然的についてまわります」と同校の代表川瀬弓子さんは語る。親子劇場と女性会議が連携して活動をすすめていくことになったきっかけもここにある。川瀬さんはより暮らしに根ざした活動とは何かを考えた時、3世代にわたる幅広い視点が必要なことに気づき、目の前にある問題を柔軟な姿勢で捉え、ひとつひとつ解決していく生活学校の運動に共感したと言う。
 さらに「行政が縦割りで地域活動をサポートしていくのならば、住民は横のつながりをひろげていくことが大切です」とも。
 同校は今後、学校や教育委員会ができないことを取り組んでいこうと試みている。そして行政には場所の提供をしてほしいと訴え、行政と住民のパートナーシップを形成していくことを目指している。


ワークショップで母親の意識にびっくり

 三条市では市の事務や事業について職員が出向いて説明する出張トークを行っている。三条生活学校はこの出張トークを利用してワークショップも開催している。これまでのテーマは「三条市の学校教育」、「青少年の育成のために」、「ママとパパに応援!子育て講座」、「子育て支援いろいろやっていますよ」だ。こうしたワークショップを実際に行ってみて、「市民が生活にかかわる課題を意外に考えていない」ことに気づかされるらしい。第3回の講座では市内の保健婦がトークを進めていったが、20代のお母さんたちに母親の意識が足りないことに驚かされるという。例えば、子どもが早く寝ないで困っているが何でそうなっているのか考えてみない。質問を投げかけてみても、「だって子ども自身が寝ないんです」という答えが返ってくる。その反面、過保護になり過ぎている部分もあるようだ。幼児が病気になった時など家族全員が総出で病院を訪れる家庭もあるようだ。
 同校はこのように日常、ただ何となく暮らしていただけでは気がつかない生活に密着した課題を素早くキャッチし、少しでも多くの人びとに伝えていきたいと考えている。


調査を基本に据えていく

 三条生活学校は地域で活動を進めていくうえでは、調査が重要と考えアンケートも実施している。今年のアンケートの目的は子ども100人、大人100人の生の声を聞き取ることで「1日24時間から見たあなたの居場所」を調査した。対象は三条親子劇場の子どもたちと、65歳以上の女性会議のメンバーが中心で、調査は午前4時から午後3時まで1時間ごとに何を、誰と、どこでという項目ごとにわけられている。このアンケートをもとに今後、高齢者が元気なうちに社会参加すること、子どもの居場所を知ることで子どもの遊び場を考えていくことができればと願っている。アンケートは夏バージョン、冬バージョンと2回実施された(現在集計中)。
 同校としては今後、アンケートの各種勉強会などに参加してさらに内容の濃いものを実施していきたいと考えている。
 育児サークルは、未就園児の親子を対象としていこうということから、活動の中心は「親のおしゃベり」や「子どもの遊び」が中心であり、子どもの入園、入学をきっかけに退会したり、あるいはサークル自体が自然消滅していくケースが多い。また子どもが小学生、中学生へと成長していくにつれて、親同士の交流、子ども同士の交流も薄れてしまうことがある。今後は、こうした育児サークルを通じて母親たちが感じた子育ての問題をきっかけに、ネットワーク化し、地域の課題に目を向け活動する集団として成長していけるよう、なんらかの働きかけをしていく必要がある。そのため同校では大人にも子どもにもアンケートを行い、より詳しく実態を把握し子どもが就学した後も親も子も地域に根づいた活動を進めていくことができるようにしていくつもりだ。ポイントは高齢者を巻き込み、完全学校週5日制の受け皿づくりのような手段を親子劇場から発展させていくことにある。
 きめ細やかな準備と2つのNPOがひとつになったことの強み、「互いにないものを補い合うこと」を活かすことでさらに奥行きのある活動が期待できる。