「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

今によみがえる「古代の流れ源流網代滝」
岩手県奥州市 古代の流れ源流「網代滝」を守る会
概要

 地元でも見た人が少ないといわれる「幻の滝」が、地元住民の苦難の作業を経て見事に今に姿を現し自然の造形美を見せ、コミュニティの絆のもと地域おこしに輝いている。
 岩手県奥州市水沢の中心地から北上川を越え約13キロ東部、36戸の集落「小黒石」がある。地元でも見た人が少なく幻の滝といわれてきた「源流網代滝」が、魅せられた人びとが、偉大な自然の造形美を今に甦らせ「環境保全と地域活性化の貴重な財産」として活かしたいと地区民の協力のもとにたちあがった。
 何十年の手の入らない荒廃した山林の整備から、落石・土砂崩れ箇所の難工事に悪戦苦闘し、作業は困難を極めたが、ふるさとづくりに燃える集落住民の熱い思いが連帯感の絆となり、散策コース・遊歩道整備、手づくり看板も設置し、平成13年9月、藤蔓のテープにハサミを鎌に変えてユニークな喜びのテープカットで一般公開となった。
 以来、自然散策やウォーキング、子ども会遠足、小学校の環境総合学習、観光にとマスコミに載り、話題を広めながら多くの人びとが訪れている。
 その後の来訪者は一般者はもちろん、小学校の遠足や若者、写真家や水沢からの歩こう会の皆さん等多数が訪れ新観光地、自然・環境実践体験の最高の場ともなっている。
 また、小学校での総合学習の場やエコキッズ環境学習の揚ともなり、子どもたちの歓声が山あいに響き、地域住民は来訪者の案内も担うなど活き活きとふれあい交流も輪が広がっている。さらに、地元集落あげて子どもたちのためのエコキッズ事業の展開を実施し、「里山体験自然林」構想など集落の活性化とともにコミュニティ交流に源流網代滝を核に新たな夢を画き、地区民の熱い想いが輝いている。


活動内容

(1)網代滝の自然の良さを奥州市民や県民に知ってもらう。
(2)子どもたちは、水質調査やエコキッズ等の自然体験学習から自然のよさを学ぶ。
①毎年6月中旬頃会員による滝周辺の通路(林道)の草刈や川の清掃や草刈、支流河川の草刈や清掃等を行なっている。
②平成14年から現在まで、地元の黒石小学校の総合学習(水生生物調査)での水質調査や水棲生物調査等毎年網代滝に来ている。これらの案内役も行なっている。
③川に親しむことや、田んぼや畑で農業を体験、さらには間伐体験をすることにより、より具体的な自然の良さを知ってもらう。16年8月に行なわれた、水沢エコキッズでは、初の民泊体験活動の場を提供した。
 そのエコキッズ活動(地球環境を自然から学ぼう等)は17年には、春から冬にかけて通年活動として年10回網代滝がある小黒石集落で実施された。(民泊体験あり)。
 今年度もエコキッズ事業を受け入れし、通年自然体験や宿泊体験を実施する。
④集落の小高い山林を伐採し、伐採木で櫓を組み「小黒石城」と命名、登り道に薪を積んで見上げ塀をつくり子どもたちが自由に遊べるお城を造った。平成17年8月、地元黒石小学校の先生方が網代滝や私設公園「小黒石城」、エコキッズ畑等に来訪し案内活動実施。
⑤2年に1回実施している黒石小学校での学習発表会では、網代滝をテーマにした創作劇「大久保川の桃太郎」(平成15年)「私たちの川」(平成17年)を発表し、地域の皆さんに対し実践発表の場となった。


活動成果

(1)網代滝等を総合学習することにより、より地元の事柄について自信がもてることにつながる。そのことが学習に意欲がでることにもなる。
(2)住民と子どもたち、先生方とのコミュニケーションがますます図られる。
(3)エコキッズ活動をしながら農業体験や自然体験さらには民泊体験(平成17年度は7軒で20名受入)をすることにより、都市部の子どもたちと、地元の子どもたちとの交流が図られる。
(4)昨年、小黒石集落でいままでは少なかったカジカが多く獲れた。河川清掃を地域でやることにより、川にゴミを投棄する人がいなくなった。
(5)年々、網代滝を訪れる人びとが増えている。景観美とともに自然への思い、環境・温暖化問題など地球規模の環境を守る機会になるものと期待したい。
(6)滝の保全作業や訪れる多くの人々とのふれあいで地元住民の「おらが地区みんなの財産」との意識、そして連帯感が高まった。


効果と今後の展開


(1)エコキッズ事業での民泊体験をはじめ、自然体験や、収穫体験等実践することで環境の大切さや生物のこと、物の大切さ、他地区の友だち(異年齢)との付き合い方等が習得されていくものと思われる。
 まさに、教科書にはない学習効果か得られることと思われる。
(2)水資源を探っていくことで、地球環境に関っていくことに気がついてくることが楽しみであり、18年度には、里山にある杉林の間伐体験を予定している。
(3)昔、神社の回りが「鎮守の森」といわれたが、現在で言えば「里山体験自然林」のような形での森林を含めた整備を進めてみたい。
(4)滝を守ることは自然との付き合いでもある。風水害・冬の雪害等にも配慮しながら地域づくりに活かし、地域の貴重な財産とし次代に引き継ぎたい。