「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載 |
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
川の清掃活動を通して小中高校生の健全育成 |
東京都町田市 真光寺川を清流にする会(エコネット町田生活会議・真光寺川部会) |
活動の動機と経緯 真光寺川は町田市の東南部を流れ鶴見川に注ぐ全長5キロメートルの小さな川である。 昔は多摩丘陵の谷戸を潤し、小鮒の群れる清流だった。1960年代、宅地造成が始まると、生活排水が流入し、生物の住めない死の川と化したことがあった。その後、下水道も整備され、ようやく自然も甦ってきた。しかし、粗大ゴミやビニール袋が投げ込まれ、数年前までは皆から敬遠される、汚染された川になってしまっていた。3K(キケン・キタナイ・クサイ)と嫌われて、そこには子どもたちの姿はなかった。 65歳でリタイアし、「濡れ落ち葉」にならないよう市民大学・環境講座に学び環境問題に目覚める。修了後、エコネット町田に加入し仲間ができる。「川の水をきれいにする市民会議」に応募し川の定点観測を始める。「川をきれいにして、子どもたちに還ってきてほしい」という思いが、次第に強くなってくる。 1998年、仲間と真光寺川を探索する。 1999年、住居に近い下堰親水で、川の観測と記録を始める。年間187回通う。 「真光寺川を清流にする会」の発足 2000年1月、同じ思いを持つ仲間8名が、小田急鶴川駅前の焼鳥屋に集まる。 会の名は「真光寺川を清流にする会」とした。水が温むのを待って3月から活動を開始する。毎月第2日曜日(ただし厳冬期の1、2月は除く)を定期清掃作業と定め、それ以来、継続し6年半になる。毎回、20名近くの会員が集まり作業に汗を流す。平均50袋の拾得がある。その処理は管轄する南多摩建設事務所に依頼する。 「真光寺川を清流にする会」は、現在43名で常に活動の中核となっている。活動の指針として2001年9月「行動基準」を作成した。常に原点に立ち返り方向を誤ることがないようにしたいためである。 2001年4月、ドイツの例にならい「真光寺川里親の会」をスタートさせる。地元住民と連帯し誰からも親しまれる川にしたいという願いからである。現在、会員は138名となり活動を応援する心強い存在である。 2001年5月から毎月「真光寺川里親通信」を発行している。通算61号となる。 また2002年2月、ホームページを開設した。 観測と水質改善の努力 清掃作業によりゴミは除去されて、川の環境は物理的に格段に改善されてきた。問題は「水質が子どもたちが遊ぶにふさわしい水準であるかどうか」である。その観点から毎月第3木曜日に4か所で水サンプルを採集し北里環境科学センターに依頼し分析してもらっている。水質は徐々に改善されつつある。 また、水質の改善のため試験的に上流区域に「EM菌だんご」の投与を行なっている。 周辺の小、中、高校との交流と体験学習の支援 「川をきれいにして、子どもたちに還ってきてほしい!」そのことがわれわれの活動の原点だったが、期待以上に早い反響があった。 概要を記すと… 2000年3月から清掃作業を開始するが、早くも6月には鶴二小の児童が清掃作業に参加するようになった。また同年8月から鶴三小の3少年が清掃作業に参加するようになる。鶴三小は3少年の参加がきっかけとなり、2001年3月、校長から要請があり最も熱心な実践校となる。以降、川の体験学習、出前トーク、「町田ごみフェスタ」への児童参加、「真光寺川まつり」への参画、そして地域ぐるみで支援する「真光寺川ウォーク」へと発展していく。「地域で子どもたちをはぐくむ」方向が実りつつある。 2000年12月、和光鶴小の児童の小瓶に入った手紙を拾得し交流が始まる。公開講座を通じて優れた指導者であるO先生と知り合う。和光鶴小は既に川の体験学習の先進的システムが完成しており教わることが多かった。「真光寺川まつり」にも全面的応援を得ている。体験学習の支援、出前トーク等緊密な交流を続けている。 2001年夏に鶴四小、2002年3月に忠生七小、同年12月には真光寺中、2004年11月には麻生総合高校との交流が始まり川の体験学習の支援、出前トークを行なうようになる。期待通り真光寺川が川の体験学習のフィールドとなった観があった。 このように順調に推移した背景としては、①学校が「ゆとり教育」を導入する機運にあったこと、②マスコミが取り上げてくれたこと等があげられるであろう。 しかし、学校によって取り組みは一律ではなく濃淡がある。その原因は、①公立と私立による自由度の差、②計画性・リーダーシップのある教師の有無、③校長始め全学的理解と熱意、④父兄の同意と理解の有無等によるものと思われる。 基本的には子どもたちは川が大好きである。川では開放されて生き生きと生命力を躍動させる。昨今「ゆとり教育」が俎上にのせられている。先生方の熱心な試行錯誤の末ようやく定着し、子どもたちに喜ばれている体験学習が無に帰さないことを願っている。 「地域で子どもたちをはぐくむ試み―真光寺川ウォーク」の実施 2004年3月、鶴三小で地域懇談会が持たれた。出席したのは校区の各町内会長、老人会長、市民団体、PTA役員等であつた。A校長から次の主旨が述べられた。「昨今児童の情操教育や躾のことが問題になっています。この地域にはいい所が一杯あります。学校を地域の核とし地域に根ざした教育を進めることがいいと考えています。安全が脅かされる事件が頻発していますが、学校を地域から閉鎖しても子どもたちの安全は守れません。むしろ地域の人々に顔なじみになってもらうことが子どもたちを守ることになると考えます。その手始めとて地域の方々の協力により『真光寺川ウォーク』を実施したいのです」 A校長は転出されたが後任のO校長によってその方針は堅持され実行に移された。全校生徒が数名単位のグループに分かれて、真光寺川沿いに設けられた6拠点を巡回し自然に親しむ。それを支援するのは町内会、老人会、市民団体、それにPTAの方々である。今年も5月23日、真光寺川全域で展開された。3年目である。子どもたちは初夏の一日、川を満喫した。そしてそれを支援した地域の人々の間に連帯感が芽生えつつある。 環境教育―「町田ごみフェスタ」における子どもたちの研究成果の発表 市民の「ごみ減量」の意識を高めるために毎年「町田ごみフェスタ」を開催され多くの市民が集まる。小学校では4年生の教課に「ごみの問題」が折り込まれている。鶴三小の4年担任のK先生へ「ごみフェスタ」での研究成果の発表をお願いした。4月からグループ別に発表を目標にその準備に取り組んだ。今年も11月27日(日)4年生、全員44名が舞台の上で元気よく発表した。「ごみフェスタ2005報告書」に記載された子どもたちの感想文から、ごみ減量に対する意識の向上が読みとれる。この発表は2003年以降実施し定着しつつある。 「出前トーク」の実施 「真光寺川について」トークを求められる事が多い。 ・町田の川・真光寺川の今昔・真光寺川の魚・川の鳥・真光寺川の環境を守る活動等について話をすることにしている。川で繰り広げられる生存競争・サギとアオダイショウの闘い等を話すと目が輝いてくる。必ず感想文が送付されてくる。子どもたちの自然・風土への関心の高まりに手応えを感じる。 ビオトープ造りに協力 2004年夏、真光寺中のH副校長から依頼があった。「校庭の一隅にコンクリートの池があります。折角ですから真光寺川に自生する植物を植えてビオトープにしてもらえないでしょうか」早速仲間と相談した。水中にプランターを沈め、生徒たちに真光寺川の植物を数種採集してもらい移植した。和光鶴小から鶴見川系の「めだか」を20匹もらい放流した。翌年の6月にはプールから「ヤゴ救出作戦」で救出したヤゴを放した。今ではI先生と自然観察班が観察し面倒を見ている。 学校の諸行事、運営委員会に積極的に参画 入学式、卒業式、運動会、学芸会、文化祭、公開講座等関係の学校から招待状をいただく。万障繰り合わせ出席するようにしている。子どもたちの瑞々しい息吹に接することができ、喜びと感動がある。 鶴三小では「地域住民の意向を的確に把握し反映させるとともに、その協力を得て学校運営を行なうことにより、地域や社会に開かれた特色ある学校つくりを推進することを目的に」運営協議会を設置された。「真光寺川ウォーク」を契機に「地域で子どもたちをはぐくむ」方向へ着実に進みつつある。2007年の創立40周年の記念行事が話題になりつつある。 「真光寺川まつり」の開催 子どもたちや地域住民に真光寺川に親しんでもらう手段に何が最も適切か相談した。「真光寺川まつり」のアイデアが出された。2002年のことだった。6か月近く計画を練った。計画を練ること自体が楽しく会が活性化された。そして関連の学校、地域との絆がつよくなってきた。今年は7月30日(土)の開催を予定している。地域の夏の風物詩として定着しつつある。今年で第5回目となる。 市民大学「環境・参加体験講座」、ボランティアセンターの「ボランティアスクール」等への協力 市民大学「環境・参加体験講座」では約30名の受講者が清掃作業に汗を流す。毎年その中から新らたに会員に加入する者がある。 ボランティアスクールは、小、中、大学生、シニアが対象である。特に小学生は毎年夏休みに約40名近く受け入れることが恒例になっている。 行政との協働 活動の上で行政との協働が欠かせない。活動に関係のある、市民大学、生涯学習課、東京都南多摩東部建設事務所、下水道部、公園緑地課、ごみ減量課、ボランティアセンター、福祉協議会等と連携を保っている。行政も協力的でありわれわれも積極的に協働を計っている。会の活動を理解してもらうために常時「エコネット通信」「里親通信」を送付している。また必要により打ち合せを持つようにしている。 会の活性化 マンネリ化しないように常に会の活性化を図っている。 8名でスタートした会員も「清流の会」43名、「里親の会」138名、計181名となってきた。 |