「あしたのまち・くらしづくり2006」掲載
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

商店街をフィールドにした多元的なまちづくり連携
兵庫県尼崎市 株式会社ティー・エム・オー尼崎
取り組みの内容について

(1)動機
 尼崎市の中心市街地活性化のために設けられた当社では、中心市街地の活性化は「尼崎市民が元気になることが一番大切」という方針の下、何ができるかを模索していたところ、「アマを自慢したろっ!」の合言葉をきっかけとして地域の団体や商業者、まちづくりに取り組む若者、行政マンが集結した。(アマを愛する人たちの中には、外からだけでなく、内からも尼崎のことを悪く言われることに大きな不満、うっぷんがたまっていた)
 尼崎市は「阪神工業地帯」の中核を担い「日本の高度成長」に大きく貢献したが、負の資産として「公害のまち」というイメージが定着した。その後の官民をあげての努力により「公害のまち」は払拭されたにも関わらず、マインドとしての「公害のまち」がいまだにぬぐいきれていないという点が大きな不満やうっぷんとして蓄積されていた。

(2)取り組みを行なっている場所
 2003年から実施している、尼崎で自慢できる物、人・・・何でも集めて、その中から本当に良いものを認定・顕彰する「メイドインアマガサキコンペ」は市内全域を対象にしている。また、中心市街地三和本通商店街で認定・顕彰したものを期間を限定し展示即売を2年間実施し、2005年8月には同じ場所にMiAショップとして常設店舗をオープンした。

(3)取り組みの基本的な位置付けと「まちづくり」との関係
 尼崎を過去の「公害問題」などからネガティブに捉えがちな市民や外部の人々に、本当の意味で誇れるもの、自慢できるものを分かりやすく伝えることで「アマってすごいやん!」「アマっておもろいやん!」「友だちに自慢したろ!」「いっぺん行ってみよ!」と思ってもらうこと。
 また、ものづくり産業に従事する人たちが、「自分たちってすごいんや!」と感じ、仕事に誇りを持ってもらうこと。
 さらに、中心市街地の商業機能とものづくりが連携することにより、ものづくりとマーケットが近づくことになり、消費者の視点を踏まえた製品が生まれるといった波及効果の可能性があること。
 中小のものづくり産業、商業にとって、コンペ事業は事業者だけの力では得られないパブリシティ効果が期待できる。
 こうした目標や効果から、市民、事業者の元気を生み出し、尼崎の活性化につなげていくことが、中心市街地の活性化に貢献するという想いで取り組んでいる。
取り組みの内容
 メイドインアマガサキコンペ事業として、①市民等から「尼崎の隠れた逸品、自慢の製品、こだわりの商品」などの情報を広く募集②専門家だけでなく、消費者といった市民の視点から審査し「グランプリ」「準グランプリ」「認証品」を選ぶ③それぞれのプロダクツを「薀蓄」をベースにした読み物「メイドインアマガサキカタログ」として発刊し市民に無償配布している。
 審査結果については、期間限定イベントとしてメイドインアマガサキショップで公開し、可能なものについては販売してきた。
 2004年12月にはインターネットショップを開設するとともに、郵便局との連携により、市内57か所の提携郵便局でのカタログショッピングを行ない、2005年の8月には商店街に常設店舗をオープンした。
 さらに、市内の作業所、シティーホテルなどとコラボレーションして付加価値を創造するなど、アソートによる贈答品を開発しており、「尼崎のお土産・贈答品」として市民から好評を博している。

(4)取り組みがまちづくりに果たした役割・効果
 メイドインアマガサキカタログは初年度1万5000部、次年度1万部制作したが、たちどころに払底、市民から「尼崎の過去の公害イメージにとらわれていたが、高度成長を支えた技術、肥沃な大地からの恵み、瀬戸内海からの海の幸がもたらした様々な文化を知って改めて尼崎が好きになった」などのメッセージをいただいている。ともすればネガティブになりがちな「尼崎市民」から最大級の賛辞を得たことは、「まちづくのりの基本は市民の元気」という初期の目的を達成したと自負している。
 また、コンペで認定、顕彰され、カタログに掲載されたことにより、これまで一般の市民に知られることがなかった工業系の事業者が脚光を浴びることになり、さらにこれをきっかけにマスコミの取材を受けるなど波及効果も生み出しており、従業員の元気につながっている。
 また、障害者作業所の「玉葱漉き和紙」とのコラボレーション、「シティーホテルの割烹料理長によるレシピ」「尼崎発商品の薀蓄集」で商品の付加価値を高めただけではなく、新しい地域内連携の可能性を示したものであり、さらに、従来「業務用」や「自家消費」の需要しか対応できていなかった商品の「ギフト商品化」という新しい付加価値を生み出した。
 さらに2006年度には、今までの集大成として「書籍」を10月に出版いたしました。
 また、向こう3年間の「メイドインアマガサキコンペ」の事業スケジュールを広くお示しし、「中長期的な市民運動」のレベルとしての取り組み姿勢を発表する計画です。
 さらに「メイドインアマガサキ」により新たに始まった様々な取り組み事例※の発表会をあわせて実施し「枠組みに捕らわれない、新しいコラボレーションの可能性」をモデルで提示してさらなるコラボレーションを誘発しようと考えています。
※先述の違うメーカーの商品を「アマガサキ」を切り口にアソート。そのパッケージに「作業所の手漉き和紙」を採用。また、市内のシティーホテルの料理長による「レシピ」の作成などのコラボレーション。
※2004年度グランプリの「有機豆腐」のおからが「産業廃棄物」となっている点に着目。有機おからを主原料にしたケーキ作りのノウハウ確立を2004年度メイドインアマガサキ認証のケーキ店に依頼。そのノウハウを「作業所」に技術移植、新たなビジネスモデルを構築した。


取り組みの特徴や効果について

(1)効果的なまちづくり活動を展開する上で、他地域でも参考になるよう工夫している点
 まちづくの根幹は「市民の元気」という誰にでも理解できる普遍的な部分を事業の根幹に据えていること。
 市民事業者の自発的応募による情報収集という「参加型」事業としたこと。
 事業そのものに行政の関与を避けたことにより、審査を市民の立場で行なうことを可能にしたこと。(楽しさが増し、評価への共感が得やすくなった)
 結果情報も還元(カタログ配布や出版)するという「情報開放型」であること。
 「既存のリソースを活用する」という事業スキームはどのような街であれ、どのようなテーマでも応用が可能であること。
 そのうえで、さらに踏み込んで、既存のリソースに販売チャンネルや新しいコラボレーションを提案することで、単に商品に付加価値を創造するだけではなく新しいビジネスチャンスも生み出し、事業者のインセンティブとしての効果を上げている。

(2)地域社会との連携、密着について
 尼崎市内の製造事業者(工業製品、食料品など)、ホテルなど商業・サービス事業者、商工会議所、工業会、金融機関、農家、作業所、市民活動グループ等と連携している。
 これまで、商業と関係がなかった工業系製造業との協力関係ができたこと、小売可能な製造業等については、新たな販売チャンネルとして友好的な関係にあり、特に障害者作業所との連携では、新たな連携の可能性を示したものであり、現在、商店街との連携により作業所ショップの開設が実現している。

(3)商店街・小売市場の再生や活性化にについて
 常設店舗は、商店街の空き店舗を活用し、開設しており、設置商店街の集客力の向上に寄与している。
 また、商店街、市場の商品を認証、顕彰した場合には、当該店舗の売上向上に直接効果を上げている。

(4)一過性のものでなく、まちづくりの中で、着実に継続するためのしくみづくりについて
 当該事業に、収益事業を組み込むことにより、非収益事業であるコンペやカタログ作成の経費を生み出すとともに、事業者への情報発信だけでなく、販売チャンネルとしてインセンティブを与え、事業の継続性を確保しようと考えている。

(5)その他、アピールすべき点
 商店街がまち全体の活性化に取り組んでいるものであり、メイドインアマガサキ事業をきっかけとして、MiAステーションの開設につながり、障害者作業所と商店街のコラボレーションとして全国の商店街で最高水準を誇るバリアフリートイレが設置され、作業所ショップがオープンした。