「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載 |
<食育推進活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
朝食応援大作戦! |
埼玉県熊谷市 熊谷の子ども達を朝食で元気にする会 |
活動の動機 私には現在、中学校1年と小学校6年の女児がいます。数年前子どもの学校の先生とお話しする機会があり、そのとき伺ったことによると朝ごはんを食べないで登校する児童が増えているというお話でした。校門で登校時の声かけ運動を行なっていると「先生、僕、朝ごはん食べていないんだよ」と自分から話しかけてくるそうです。また、授業中体調の悪くなった児童に話を聞くと朝食を食べていないケースがほとんどだと言うのです。そのころ市内のPTAで行なったアンケート調査によれば、「楽しい食事はいつですか」という設問に「朝食」と答えている児童は0%でした。私はこの現状に疑問を感じました。何とか朝食の現状を変えていけないものか、子どもたちに楽しく朝食を取って元気な一日をスタートしてもらう方法はないものかとの思いが日に日に強くなってまいりました。 はじめの一歩 平成17年に熊谷市立東小学校の母親委員(当時)に選出された私は、熊谷市PTA連合会の母親委員長に就任しました。母親委員会では、毎年一つのテーマについて研修活動を行ないます。その年のテーマは「朝食応援大作戦」と、一も二もなく決めました。まず、アンケート調査を行なってみると、朝食を欠食する児童が約2割いることが分かりました。また、ひとりで朝食を取る児童が家族全員で食べる児童を上回っていました。その上、ちゃんと食べているといっても菓子パンやシリアルなど内容に問題がある児童も多かったのです。そこで、親が簡単に朝食を用意でき、少しでも座って子どもと一緒に食べられるようにと、レシピ集を作成することになりました。1校から3枚、当時熊谷市には31の小中学校があったのでそれで93枚のレシピを集めることができました。地元の商店の協力もあり最終的には111レシピを1冊の本にまとめました。それを1校に2冊ずつ配布しましたが、PTAの予算にも限界があり、圧倒的に足りないことを痛感しました。 新たなる挑戦 平成18年度は、昨年度のレシピ集の好評を受けて、小中学生の全家庭に配布するという目標に挑戦することになりました。しかし、PTA活動の枠内では、予算でも活動でも限界があり実現が難しいのです。そこで、市民団体として立ち上げて活動しようと全員の意見が一致しました。団体名は「熊谷の子ども達を朝食で元気にする会」としました。 PTAでの活動は、1年単位ですが市民活動なら継続して行なえ、「食育」を推進するにはより適切なのです。当初の会員は、10名でのスタートでした。最初の難問は、資金面でした。私たちはまず、同じ小学校の子どもを持つ印刷会社を経営するお母さんに相談しました。そこから、最初に商工会議所の女性会の皆さんを紹介していただきました。「食育」の大切さを理解してくださったのは、同じ女性でした。自分たちでも地元の企業の皆さんにお願いして歩き、協賛広告という形でレシピ集の作成資金をお預かりすることができました。また、行政にも働きかけ、町おこし事業「暑いぞくまがや」に応募し冠エントリー事業としてノミネートされ、報奨金をいただくことができました。普通の母親である私たちにとってここまで出来るということは、大変な自信になりました。新しいレシピ集は内容面でも一段と充実をはかろうということになり、 ・「現役パパママからのレシピ30」 (昨年のレシピ集から30レシピを抜粋したもの、ごはん パン スープ おかず) ・「保存食」 (地元の料理研究家による手早く調理するには作り置きしておくことが大切というもの) ・「地産地消」 (熊谷産の農作物を使用したレシピを推奨するもの) ・「地域のお店」 (地元のお店に聞いた秘伝のレシピや朝食に困ったときのお惣菜案内) ・「あつい熊谷をのりきるレシピ」 (熊谷と言えば夏の暑さで有名、子どもたちの夏ばてを防ぐメニュー) ・「季節のおみおつけ」 (熊谷市学校給食センターの栄養士の先生お勧めの12品) と自信を持って薦められるものになりました。自分たちで実際に作って、それを写真に撮り、巻頭カラーページを飾りました。各章の間には、タウン誌の記者や商工会議所会頭の随想、熊谷地方気象台のコラムなども入れ、読み物としても楽しめるものに仕上げました。実際に学校生活の現場で朝ごはんを食べてこない児童・生徒に接している養護教諭の随想は参考になりました。さらに、子どもたちにより「朝ごはん」に親しんでもらおうと「あさごはんのうた」を作成することにしました。作詞作曲は、元市内で校長先生をされていた新井俊一先生にお願いしました。 「ご飯には作った人の大きな愛がつまってる」という心温まる歌詞は、私たちの会の趣旨をまさに表現しているものでした。これを熊谷西小学校の合唱部の40人の子どもたちに歌ってもらい、録音してCD化し市内全ての小中学校に配布しました。各学校では、給食時や清掃時に校内放送で流し多くの子どもたちが口ずさんでくれました。 こうして出来上がったレシピ集は、1万8000冊出版され(A5判カラー刷り80ページ) 1万4700冊を9月15日に市内の小中学生のいる全家庭に無償で配布されました。その後新聞等でも取り上げられ、県内県外を問わず、多数の問い合わせをいただきました。小中学生の親御さんからだけではなく、年配の方からも健康な食生活を送るためにとご要望をいただき、食に関する関心の高さがうかがえました。問い合わせをいただいた方にも全て無償で送らせていただきました。自分たちの作成したレシピ集が多くのご家庭で役立てていただけたことは、大きな喜びになりました。 さらなるステップ 市民団体となって、より多くの人たちとともに「食育」を進めていきたいと考えた私たちは、同じ市民活動をしている他の団体と一緒に「燃えよくまがやん」という市民参加のイベントを開催しました。そこでは、レシピ集の中から子どもたちにも出来るメニューを選んで料理を体験してもらうブースを設けました。おりしも夏休みだったこともあり多くの子どもたちが参加して「そぼろカレー」や「冷や汁うどん」を作りました。また、「親子料理教室」や「お父さんの作る朝ご飯講習会」なども開催し、母親たちだけではなく父親も巻き込んでの「食育」の大切さを認識していただきました。市内市外を問わず小中学校からも講演の依頼をいただき、PTAの集まりや学校保健委員会で朝ごはんの大切さのお話をさせていただきました。 まとめ 現代では、子どもにまつわる事件や親子間の問題などが多く報道されています。事件の多くは家庭内でのコミュニケーションの不足だといわれています。朝食を親子が一緒に食べるというごく普通の朝ごはんの風景を通して家族の絆がより一層強くなればと願います。朝ごはんは、ただ食べれば良いというものではありません。子どもがより良い学校生活を送れるように「スイッチ」を入れて応援して送り出す大切な一日のスタートの時間なのです。私たちの会では、これからも多くの家庭で充実した朝ごはんの時間が送れるようにと活動していきたいと思います。 |