「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載 |
<食育推進活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
地域発の「食育」の推進 |
兵庫県神戸市西区 竹の台エコタウンクラブ |
神戸市西区にある西神ニュータウンは、神戸の副都心として1972年(昭和47年)開発が始まり、そのほぼ中央に位置する竹の台地区は1985年(昭和60年)に入居が始まり、現在人口9300人、3200世帯が生活しています。また、西区は神戸市の中で最も農業の盛んな地域で、竹の台は周りを田園地帯で囲まれ、たいへん恵まれた環境にあります。 一方、街開き以来20年以上が経ち、小学校の児童数がピーク時の半分以下となり、急速に少子高齢化が進みつつあります。自治会長が年度交代となっている自治会は本来の機能を失い、テーマ型地域団体は役員が高齢化し、地域活動の担い手不足に悩まされています。 私は、竹の台地域のテーマ型団体「竹の台エコタウンクラブ」の代表をしており、地域の環境についての活動をしていますが、地域住民の多くが興味を持つ「食」をキーワードとする活動を通じて、地域内外の人々と交流を図るとともに、地域の課題解決へのきっかけ作りをしようと考えました。 実施にあたっては、エコタウンクラブを中心として、地域の他団体(青少年育成協議会西神NT東支部、竹の台子ども連絡会、竹の台地域情報局、NPO法人ぴっぴ、NPO法人社会還元グループ「わ」)と協働で進めています。 その方法として、次の三つの活動を同時並行で進めることにしました。 地産地消を目的とする「竹の台朝市」の定期的な開催と「食育」をテーマにした講演会、親子料理教室等の開催 (1)「竹の台朝市」の開催 平成18年3回実施(6月、10月、12月)、平成19年5回実施(予定も含む)(2月、6月、8月、10月、12月)平成20年2月 平均入場者数約300人/回 「食育」とは一般的には食生活の改善、栄養バランスの改善等を指すように思われがちですが、広い意味では、地産地消、フードマイレージの考え方に基づく輸送エネルギー削減、環境保全、農業振興等、さまざまな概念を含むものだと思います。そこで、朝市を通じて地域住民一人ひとりが、現代人が抱えるさまざまな「食」に関する問題点に気づき、生活様式を考え直すきっかけとして欲しいと考え、野菜の販売とともに、さまざまな啓発活動をしました。具体的には、 @地産地消の意味、省エネルギーの啓発パネルの掲示 A旬の食材を使った料理のレシピ配布 B家庭で作れるリサイクル用品の展示(環境) C地元の育苗家による寄せ植え講習会(地元の農家紹介平成19年6月10日実施) Dリユースマーケットの開催(環境) E地域住民による手作り品の展示・販売(交流) F子どもコーナーの運営(交流) G休憩所の運営(飲物販売、映画の上映等)(交流) ■活動効果 朝市という企画は、住民の多くが「食」に関心を持っているうえ、集客力もあり(毎回入場者数約300人)、地域活動における「食育」の推進という観点から、非常に有効なものとなりました。具体的には、 ●主催者側も参加者側も楽しみながら取り組むことができました。 ●朝市の野菜販売では、JA兵庫六甲櫨谷支所の協力を得ることができた上、竹の台在住の野菜作りに取り組む住民の出店もあり、多くの地域住民が農村地域のすぐそばに住んでいるという地理的環境を実感できました。また、農村部とニュータウン住民の顔の見える販売により、安心・安全な無作物の供給体制が整いました。 ●今までの朝市は主に農村地域の直販所で行なわれており、車での移動が無理という高齢者は行けず、また、農村地域での体験教室は、興味のない人は参加しません。本取り組みのように、ニュータウンに農家の方々に来てもらうことにより、農村地域に出向けなかった(出向かなかった)ニュータウンの住民と農村地域住民の交流の輪が広がりました。また、ニュータウン住民同士の交流にも貢献しました。 ●野菜の販売と同時に、すべての年代層の地域住民を対象に、「地産地消」を初めとするさまざまな啓発活動ができました。 ●出店者の数も少しずつ増え、地域への定着が進みました。 地域への「食育」といえば、栄養士が学校や園を対象に実施するものがほとんどです。次世代を担う子どもたちへの「食育」は大切ですが、それ以外の年齢の人々への「食育」はどうでしょう。行政(神戸市環境局)から助成を受け運営しているテーマ型地域団体が「食育」に取り組むことで、年間を通じ、継続的に、効率よく、全世代に「食育」を行なうことができます。また、農村部とニュータウンの間に地域団体が入ることで、地域の公的施設(小学校)を有効に利用し、ほとんど経費もかけずに実施することができました。 (2)「食育」をテーマにした講演会の実施(平成19年2月、4月、5月)参加者約40人/回 竹の台地区の最寄駅「西神中央」にある西神オリエンタルホテルより講師を招き、私たちの「食」に対する誤った知識を科学的検証を交え、わかりやすく解説していただきました。 ■活動効果 「食育」に関する講演会を実施することで、正しい食生活が私たちの健康に大きく影響するということを多くの人に伝えることができました。 参加者の多くは中高年の方で、メタボリックシンドロームを心配する声が多くありました。食に関する情報が氾濫する現代、多くの人が求めている正しい食への知識を、専門家によって適確かつ効果的に得ることができました。 地域の子どもたちへの農園活動を通じての「食育」 竹の台地域から徒歩20分の農地を借り、そこで「なかま農園」を運営しています。平成16年より、年間を通じ地域の子どもたちへ、畑の作業、野菜の植え付け、収穫体験等の機会を提供することで、「食育」「環境」プログラムを実施しています。 ■活動効果 ●自然とふれあいながら野菜を育て、収穫したばかりの野菜をその場で味わうことで、本当の野菜の美味しさを知ることができ、また、その美味しさは大人になっても忘れないと思います。子どもたちに対する体験型の自然環境学習が実践できました。 ●のどが渇いたといって、もぎたてのきゅうりをぼりぼり食べている子どものお母さんが「家では野菜を食べないんですよ」と言っていました。百の講義を聞くより、このような体験そのものが「食育」として最も効果があります。 竹の台地域情報局から地域住民へのタイムリーな情報発信 竹の台地域情報局は、全ての地域団体と、自治会、管理組合が協力し運営しているもので、次の三つの情報発信ツールを持っています。(平成18年3月より運営開始) @竹の台地域の地域情報誌(竹の台総合新聞) A総合ホームページ(http://takenodai.furemachi.net) B一斉配信システム(住民が登録した携帯電話に防災・防犯情報などを即座に配信する機能で、現在多くの住民が登録しています) ・@Aの取り組みを地域の総合情報誌やホームページから発信しました。 ・「食育」の概念に含まれる「食の安心・安全」についても、Bの一斉配信機能を利用し、昨年末、神戸市が発令した「ノロウィルス警報」を住民に配信しました。 竹の台では、平成17年まで、地域団体による地域への情報提供はほとんど行なわれていなかったといっても過言ではありません。そのため、地域の行事は一部の人の参加に止まり、地域全体への面的な広がりへと繋がっていくことがありませんでした。 そんな中、平成18年すべての地域団体、自治会・管理組合が運営する竹の台地域情報局の発足により、この1年で竹の台総合新聞の購読者も住民の7割を超え(平成19年2月アンケート調査による)、地域の行事の参加者も次第に増えてきました。 ■活動効果 情報誌、ホームページから催事内容だけでなく、その意味・目的などを発信し、当日の参加者だけでなく、地域の全世代の住民に「食育」を効率よく行なうことができました。 従って、地域全体への「食育」を考える時、催事内容とともに地域への情報提供の充実は欠かすことの出来ない要素です。「食育」の概念に含まれる「食の安心・安全」についても、ノロウィルス警報の配信などにより、地域レベルでの「食」の危機管理ができました。 |