「あしたのまち・くらしづくり2007」掲載 |
<まち・くらしづくり活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
安心して暮せる私たちの街を目指して |
滋賀県大津市 さくら福祉の会 |
発足のきっかけ 平成7年、阪神・淡路大震災のとき、私たちの町も大きく揺れました。幸い被害はありませんでしたが、もしこのような震災が私たちの街で起こったとき「住民の皆さんを助けることができるだろうか」と自治会の中で話し合われました。その当時、私たちの自治会では70歳以上の方が100名を超し(現在154名)、60歳以上が3人に1人といった状態でした。先のことを見据えた対策を打ちたいと、防災と福祉の2本柱が決定されました。福祉の部分を受け持つのは、福祉推進委員・福祉委員・民生委員で、自治会の四役とともに相談しつつ計画していくことになりました。この年から自治会予算の中に福祉予算が組まれることになりました。 当初は何から始めてよいのかわかりませんでしたので、ボランティア活動の活発な地域の見学から始まり、私たちの町ではこれをどのような形にすれば運用出来るのかを何度も何度も話し合いました。自治会館は既にありましたので、ここを拠点にしてホットライン(ひとり暮らしの高齢者の方や、高齢者夫婦に電話で安否確認をする事業)から始めました。 目指すもの 1 数人の人が中心になり活動を組み立てますと、その方たちが大変忙しい思いをされ長続きが困難になりますので、多くの人が関われる活動にしようと、ボランティアを募ることにしました。1か月に2~3時間のボランティア「月に半日のボランティア」が始まりました。気楽に参加でき、都合の悪いときは気楽に休めるよう複数性にし、どのボランティアに参加するかは本人の希望に従っています。現在33名のボランティアで活動していますが、現在までに参加していただいた方を含めますと67名が参加したことになり、それは住民の10%に当たります。町内の様子がよくわかり顔見知りが多く、現在参加していなくても見守りはしっかりしてくださっています。こころ強い支援者といえます。 2 福祉は高齢者だけの問題ではなく、どの人にも対応しなければならないと考え、赤ちゃんからその人の人生が閉じるまでを踏まえた多様な事業とふれあいを考えてきました。 特に世代間交流に配慮した事業を行なうようにしています。高齢者だけのサロンでなく、子育て世代の方のサロンや、福祉講座も高齢者向けの介護保険等の説明会もありますが、子育て講座も年2回行ない若い世代が住みよい町だと思って長く住んで頂くことが、私たちの思いが続くことになります。また、子どもたちの良きふるさととして位置づけば、きっとこの精神を受け継いでくれるものと考えています。 3 細く長くがモットーです。決して派手な活動ではなく、毎日を安心して暮らすために必要な対策を考えました。老化予防として、サロン活動や喫茶店・福祉講座やふれあい活動があります。いざ緊急の事態が起こったときのためには、お手伝いボランティアのシステムを作っています。このシステムは、自治会内にお住みの方はどなたでも(非自治会員でも)使うことの出来る24時間態勢のお手伝いです。38名の方が「こんなことなら出来ますよ」と登録をして頂いております。昨年度の活動は、病院の付き添え・薬を頂きに行く・買い物・大型ごみの搬出・資源回収などなど約150件の活動がありました。 地域福祉計画の作成 平成14年、大津市の「げんきクラブ」(高齢者対策の一環として、事業を求め援助)に応募しました。さくら福祉の会の提案は、IT教室の立ち上げと自治会単位の地域福祉計画を作ることでした。その計画が認められ、3年間の援助(援助金と指導)を受けました。 今までの事業の見直しと今後の計画を作りました。「地域福祉計画ってなに?」から始まった私たちでしたが終わってみるとすっかり団結していました。 私たちの地域福祉計画の特徴は、各事業を5年ごとに見直していくことと、福祉推進委員会・福祉連絡会の明記です。当自治会では、自治会長をはじめ自治会の四役は1年交替になっています。しかし福祉関係のメンバーが1年交替では困るであろうと、本人の事情があり交代を希望するまでお願いすることにしております。1年交替の自治会より、福祉関係の方が町内の事情がよく分かっているため摩擦が起きることがあります。それをなくすためにもまず自治会の役につかれた方によく説明をし、福祉の会に入って頂くことにしております。福祉の目と自治会の目、更にボランティアの目が重なり、現在は大変良くまとまっています。 福祉推進委員会では、今問題になっていることは何なのか、どのような対策が必要なのかや事業計画が主な内容です。福祉連絡会では、町内の困ったことや現在手助けのいる方についての話し合いです。どの様な手助けが必要か・誰が見守るのかなどを担当しています。 13年目になって(成果として) 1 町内の方の顔がほぼ分かります。特に70歳以上の方はほぼ100%分かります。お誕生会のお誘いをするとき、お目にかかって招待状をお渡しします。来て頂いた方はそのときお話をしますのでよく分かりますし、来て頂かなかった方はお赤飯を持って再度伺います。入院などされている方についてはお花やお見舞いの言葉をもって伺います。また自治会主催の敬老会もお手伝いをしますので、再度伺います。何度も訪問させて頂き顔の見えるお付き合いをしています。 2 何人かの方を助けることが出来ました。自治会ホットラインで何度電話をしてもかからず戸を開けて入ったところ、飲まず食わずで寝ておられ助けることが出来ました。また、友だちのおられない方が、ホットラインを待ちわびて内容を日記に書いておられました。心の支えになっていました。夜中に、隣の方が階段から落ちてうなっておられるとの通報もあり、戸を破って助けたり、壊疸で動けない方からの連絡で駆けつけ、入院までの数日間お世話をしたりと、住民の方に心強いと思って頂いています。お手伝いボランティアの電話番号をハードケースに入れ、裏には緊急の電話番号を入れて頂き各家庭に配布しています。特に高齢者の方は、これがあるから安心と枕元においておかれます。 3 住民同士のつながりが深まりました。いままでは挨拶程度の方も、いろいろな活動を通して知り合うことになり、話が弾みます。また、先だっても風邪をひかれ動けなくなった方がメールをされたところ、その方に必要なものが届き大変感謝されていました。とっても良い町内に住んでいると実感されたようです。若い方との交流も増えています。 4 パソコンをされる方が多くなりました。IT教室を開催して5年目ですが(自治会館の2階で3台のパソコンを使用)延べ131名の方が受講されました。20代の方から84歳の方までが学習され、メールや写真・インターネットを楽しんでおられます。これからの社会を考え、町内でパソコンや携帯を使った情報交換が出来ないものかと現在研究中です。 5 住民全員が簡単に取り組めるものを用意し、協力して頂く体制が出来ました。たとえば悪徳商法追放のスッテカーを作成し、全戸の玄関にはって頂いておりますし、犬を飼っておられる方には見守り犬の認定をし散歩はなるべく町内を歩いて頂くようにお願いしています。高齢者の方には、朝夕子どもたちの登下校時に散歩をお願いしています。押し売りなどの姿が見えたときは、直ちに情報が流れ、被害に遭いそうな家庭を数人が見守ります。 これからの課題 もっと多くの方が町内の福祉に関わりを持って生活をして頂くよう、楽しく取り組む事業を考えていくことや、世代間交流を深めこの活動が長く続くような取り組みを考えていきたい。一日でも多く自分の家で過ごして頂けるよう、また心豊かな生活でありたいと願っております。 |