「あしたのまち・くらしづくり2008」掲載 |
<子育て支援活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
子どもの声を聴き大人社会に発信 |
石川県金沢市 子ども夢フォーラム |
NPO<子ども夢フォーラム>は、1999年8月に発足しました。 21世紀を担う子どもたちの支えになれるよう、そして子どもたちが夢や希望をもって生きていける社会をつくることを目的にしています。 具体的には、石川県内の18歳以下の子どもを対象にした、子ども専用電話【チヤイルドライン・いしかわ】の活動を中心にサポートしています。 そして、子どもの声を聴くだけにとどまらず、そこから気づいた子どもの現状を、大人社会に発信していくことを常に心がけています。 子ども専用電話「チャイルドライン・いしかわ」の動き 子どもの声を電話で受け止める人を「受け手」と呼んでいます。そうした「受け手」ボランティアを募集し、養成講座を行なっている。それらの学びを経た人が子どもの声に向き合っている。 2000年5月5目に「チャイルドライン・いしかわ」をスタートさせたが、その時から現在もフリーダイヤルで実施している。 当初から2007年3月末現在までの子どもたちからのアクセス数は、5万件を超えている。 その中で、子どもの声を聴き、子どもたち自身から学んだことを、大人社会に発信していく手段のひとつとして、行政やPTA、団体、企業などへの講演や研修に積極的に応じている。 チャイルドラインの子どもからの受信と大人への発信が、地域で子どもを見守り、育てるための知恵となり、家庭や地域、学校に関わる大人たちの子育ての力につながっていると自負している。 大人社会への発信 (1)定期ニュースの発行 2000年より、隔月で「子ども夢フォーラムニュース」を発行して、支援者や関係者に活動の報告を行なっている。現在は、400通あまりを配布している。 (2)「受け手」養成講座の実施 子どもたちからの電話を実際に受ける「受け手」の養成を、年1〜2回の割合で行なっている。現在は、第12回目の養成講座を11月に終えたところである。 「受け手」は、子どもの声を受けとめ、子どもの抱えている気持ちを聴くことにより、子どもの現状を直に感じることができる存在である。 「受け手」という役割を学ぶことは、子どもの心を感じることの幅が広がる。 これは、電話を受けていない時の、身近な子どもとの関わりにも活かせる。 このように、【チャイルドライン・いしかわ】に関わる大人が増えることは、日常的な子どもとの関わりにも効果的といえ、「受け手」になるか否かに関わらず、参加者を募っている。 (3)児童虐待防止活動推進事業に参画 金沢市が、2002年度から2007年度までの6年間、市民団体に委託して児童虐待防止に係る事業を市民にむけて行なってきた。その企画・運営・実施を、「子ども夢フォーラム」は、中心的に担ってきた。 これまで、「子どもの虐待防止活動を考える」「虐待予防の多様な活動から見えるもの」「大丈夫?子どもの気持ち、見えてますか」などの内容で、参加者が体験・実感できるワークショップなどを多く取り入れて実施してきた。 この事業は、関係機関や母親たちに、児童虐待防止活動への啓蒙と活動の理解を進めることに寄与するものとして金沢市内で位置づけられてきている。 そのため、金沢市の別のセクションが受け継ぎ、引き続き今年度も実施していくことになった。 (4)父親への意識調査を実施 子どもからの電話に父親の存在が皆無だったため、子どもたちへの対応のヒントをつかむ目的で、「父親の子どもに対する意識調査」を2003年から2004年にかけて実施した。 調査は、全県を対象に2000枚配布し、そのうち1300枚余りの回答を得ることができた。 得られた回答からは、『子育てに責任を感じる』は9割にのぼったが、そのうちの4割から『関わり方がわからない』という興味深い回答が得られた。 その後、シンポジウムを開催して、調査結果をもとにパネルディスカッションを行なった。 これらについては共に、「父親たちはいま・・・子どもと父をつなぐもの」と題して、それぞれの報告書を作成し、広く関係機関や関係者に配布した。 (5)「家族の関わり方を考える講座」実施 調査からみえたこと、特に「関わり方がわからない」という回答に着目して、それを発展させる形で、ワークショップなど体験的な内容を盛り込んだ「家族の関わり方を考える講座」を組み立て、その実施を呼びかけた。 講座は、10人ぐらいの小規模なものから、100人ぐらいの大規模なものなど、PTAや職員研修などで、とりあげられている。 (6)「パパ子育て講座」の実施 次世代育成支援対策推進法に沿った子育てのための行動計画のひとつとして、パパに特化した形で企業に向けて実施する出前講座、「パパ子育て講座」を2006年度に県から委託され、現在3年目を継続している。 この内容は、「家族の関わり方を考える講座」をパパに特化して構成・組み立てたもので、企業や団体に広く開催を呼びかけ、毎年10か所に限定して実施している。 これまでに600名近くが参加しており、参加者の感想には、『もっと子どものことを気にかけなくてはと思う』『もっと子どもの話を関かなくてはと思った』『妻ともっと会話をするようにしたい』などが多く出され、子どもや妻との関係を構築していく必要性や重要性に気づく重要な機会として、この講座は位置づけられてきている。 このように、多くの大人の気づきは、子どもが家庭や地域で育つ際の大きな支えとエネルギーにつながるので、今後、さらに充実させていきたいと考えている。 (7)「チャイルドライン全国フォーラムinいしかわ」を開催 2007年10月20日(土)21日(日)の2日間にわたり、全国のチャイルドライン実施団体および県内の関係者ら600名が一堂に会して、子どもの今の状況などについて、記念講演、シンポジウム、分科会を行ない、学びあった。 全国フォーラムは、好評のうちに無事、終えることができた。 このことにより、これまで以上に石川県内においてチャイルドラインに対する関心と理解が拡がり、子どもへの関心とまなざしに光をあてる機会のひとつとなった。 また、子どもの声を受け止める【チャイルドライン・いしかわ】の質の高さは、受信件数の多さにも表れてきている。それが、全国の他のチャイルドライン実施団体からの大きな信頼を得ることにもつながり、全国フォーラムの開催地として期待されたものと考えている。 (8)「子どもの権利擁護支援室」の動き 2008年度、石川県に新たに新設された「子どもの権利擁護支援室」の運営・実施を「子ども夢フォーラム」に委託された。 これは、これまでの「子ども夢フォーラム」の地道な活動実績が、行政から高い評価と信頼の結果、得られたものと考えている。 これにより、石川県内の大人・子ども両面にわたる相談活動が可能になった。 成果と課題 これまでの地道な活動は、子どもの大人への信頼回復につながっており、また丁寧な地域社会への発信と報告が、少しずつ着実に地域に根ざしてきたと感じる。 現在、『石川県子ども政策審議会』や、金沢市の『要保護児童対策地域協議会』『虐待・いじめ・子育てを考える実行委員会』などにおいて、他の専門家や専門機関と席を並べるほどに、「子ども夢フォーラム」が位置づけられるまでになった。 子どもの声を電話で直接受け止めていることで、子どもの状況や気持ちを子どもの目線で発信できる団体として、着実に地域に位置づけられてきていると考えている。 一方、NPOとしては、「資金」、「人」、「場所」の三つの要素がバランスよく充足していることが大事であり、そのことが活動を継続していく上での課題として常にあると考えている。 「場所」に関しては、行政の支援がようやく得られるようになってきたが、「人」に関しては、量と質の確保が、常に課題としてある。 また、「資金」の面でも、チャイルドラインを子どもの負担にならないよう、フリーダイヤルにしているので、常時、その捻出には頭の痛いところである。それは、活動の運営にも直接影響している。 資金不足は、すなわち活動の停止を意味し、常に活動資金の調達は課題としてあるが、これまで地域の企業や団体、個人などの理解と協力、そして支援のもとに、今日までなんとか運営できているのが現状である。 今年度は、場所の提供を受けるなど、行政の協力や理解も拡がり、活動を継続していく上で心強い支えとなっている。 しかしながら、行政だけに頼ることなく、市民活動としての柔軟な姿勢を大切にしながら、安定した運営のために、一般へのさらなる理解を求めつつ、今後も活動を続けていきたいと考えている。 |