「あしたのまち・くらしづくり2008」掲載 |
<企業の地域社会貢献活動部門>あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
ふるさと村づくり―組合員とその家族の第2のふるさと― |
愛知県豊田市 全トヨタ労働組合連合会 |
全トヨタ労連創立20周年事業の柱の一つ 全トヨタ労働組合連合(全トヨタ労連)は、社会貢献活動の一環として、岐阜県大野郡荘川村を28万組合員とその家族の“第2のふるさと”と位置づけた「飛騨ふるさと村」づくりに取り組んでいる。 全トヨタ労連では、1992年創立20周年事業「ANNIV.20」の柱の一つとして取り組んだ「飛騨ふるさと村」の推進は、この年、日本ナショナルトラスト協会が結成するなど野放図な開発や都市化の波から貴重な自然環境や歴史的建造物を守る気運が盛り上がった年でもあった。全トヨタ労連は、この「ふるさと村づくり」を美しい自然環境と生活文化を守る新しい形の社会貢献活動として取り組んでいくこととした。 ふるさと村の対象地域として過疎対策に重点をおいた岐阜県に絞り、白川町、清見村、丹生川村、荘川村の4か町村を候補地として総合的に検討した結果、最終的に荘川村に決定をした。荘川村は、山林が98%を占め、自然が豊かに残っている人口1400人の山村であるが、これといった産業がないこともあって、年々過疎化が深刻化していた。 そんな荘川村を「ふるさと村づくり」を通じて、全トヨタ労連の組合員とその家族には、“第2のふるさと”を、そして荘川村には、村の活性化とふれあいの場をと、このようにして、新しい村おこしとしての活動を始めた。 オープニングフェスティバルを開催 ふるさと村のオープニングフェスティバルは、1992年8月8・9の両日に開催。当日は、全トヨタ労連と荘川村から約1000名が参加して開村を祝った。 開村2周年を迎えた1994年8月7~9日には約4000人の組合員とその家族が集まり「夢マインド94」を開催した。参加者は、ますつかみやバーベキュー、自然観察教室、収穫体験などの多彩なイベントを家族そろって心ゆくまで楽しんだ。 「ふるさと公園」がオープン 荘川村は、99年末には、荘川ICの開通により東名高速豊田ICから一宮JCを経て約2時間、東海北陸自動車道一宮木曽川ICから1時間強、JR高山線で名古屋から高山約2時間、高山からタクシーで約1時間の場所にある。 荘川村には「ふるさと公園」「であいの森」「荘川の里」「山中峠水芭蕉」「一色国際スキー場」「荘川高原スキー場」「村民広場」など様々な楽しみを満喫できるポイントがある。 「ふるさと公園」は、1996年に第1期工事が完了し、公園内には、ふるさと村の玄関となる「飛騨ふるさと村」役場がある。レストラン、300台収容できる駐車場、植物庭園などもあり、「であいの森」には、珍しい荘川の自然に出会える広場散歩道、アユ、アマゴが泳ぐ清流などがある。 「荘川の里」では、築後200年以上の寄棟式入り母屋合掌造りの古い民家を移築、保存している。また、貴重な民俗資料も数多く展示してある。 一色国際スキー場は、雄大な伯山連峰を一望できる高原でありゲレンデは、リフトが4基あり、500台収容の無料駐車場もある。 さらに、四季の変化を織り込んだ多彩なイベントをふるさと村を舞台に一年中繰り広げている。 春には、「荘川桜の開花」「ミズバショウの開花」、 夏には、「キャンプ場のオープン」「ふるさと村の夏祭り」、 秋には、「紅葉狩り」「日本一の連獅子、飛騨荘川ふるさと祭り」、 冬には、「スキー場オープン」「餅つき大会」「耐寒ツアー」など 盛りだくさんの行事がある。 学習体験や農業体験を実施 「飛騨ふるさと村」は、心身をリフレッシュさせる時間と空間があるだけではない。 学習体験や農業体験などもできるところである。学習体験では、自然観察、星座観察、昆虫採取、川遊び、渓流つりなど自然の宝庫ならではの体験ができる。 農業体験では「飛騨ふるさと村」が農地を借り、トウモロコシ、ジャガイモなどを作っている。「田植えや野菜の収穫」などを通して、農村の暮らしや仕事の体験ができる。 「飛騨ふるさと村」の役割 「飛騨ふるさと村役場」は、古い民家をそのまま利用した雰囲気のある建物だ。 スタッフが常駐して宿泊の受付、パスポート(村民手帳)の発行、お茶のサービス、体験案内など、飛騨ふるさと村を上手に体験するためのインフォメーションセンターでもある。 ①ふるさと村の宿を利用するには、まず、組合員がふるさと村役場へ電話で宿泊の依頼をする。予約の可否は、その場で回答される。(宿名は、この時点では未定) なお、依頼者による宿の指定は、原則として認めない。これは、特定の宿への集中を避けすべての旅館、民宿が公平に活性化されることをねらっている。 ②ふるさと村役場のスタッフは、予約人員が各宿に平均的に配分されるよう希望ランクの宿に割り振ったあと、宿に予約内容を通知し、確認をとる。宿泊日の1週間前に各宿より申し込みあった組合員宅へ直接確認の電話が入る。 ③当日組合員は、飛騨ふるさと村へ行き、パスポートを受け取り、パスポートのスタンプ欄に捺印してもらい、宿へ行く。宿泊料は、帰る際に現金で精算する。パスポートのスタンプが5個貯まると、ふるさと村より記念品が贈呈される。 ふるさと宅配便の展開 荘川村の特産品や旬の野菜を産地直送で届ける「ふるさと宅配便」もスタートした。 「ふるさと宅配便」は、年会費として1万円を添えて各組合事務所へ申し込むと、年4回届けられる。「新鮮な素材が、懐かしい風味と手ごろな価格で食べられるとあって、非常に好評です」 荘川村との交流活動に取り組む 全トヨタ労連と荘川村の人たちとのあたたかい交流活動も活発に行なわれている。 1994年5月には、荘川村婦人会のメンバーが全トヨタ労連の研修センター「つどいの丘」へ、また同年8月には、荘川村の中学生がトヨタ関連施設を訪問している。 1992年2月には、荘川村村長と全トヨタ労連会長との懇談会、桜の植樹を「つどいの丘」で行なっている。 新聞など報道機関へのパブリシティや、村おこし、自然保護など様々なテーマでのシンポジウムに積極的に参加することなどを通じて、その意義についてアピールしている。 ふるさと村のすばらしさは、全トヨタ労連の広報誌「Z・ONE」などを通じて、全組合員に繰り返しPRを行なっている。 このような地道な活動により、少しずつ認知度が高まり、それに伴って、組合員の利用も着実に増えている。 来村者数は、雨が多かったり、雪が少ない年にはやや減るが、年間2000~2500人で推移している。当面は、年間約3000人にするのが目標である。開村5周年を迎えた1997年には、「来村者アンケート」を行なった。その結果、「ふるさと村の感想」では、「やや楽しい」「楽しい」という回答が圧倒的に多かった。 自発的な交流から交歓への支援へ 全トヨタ労連では、組合員とその家族に第2のふるさとを実感してもらおうと、ふるさと村の育成・発展に荘川村と一緒になって取り組んでいる。 21世紀に向けて、この取り組みがさらに実りあるものになるように、そしてふるさと村が組合員や村民という枠を超えて、ふれあい、語り合い、喜びを共有できる場所となるための活動と協力をこれからも続けていきたいと考えている。 そのために、全トヨタ労連では、情報発信の一層の充実、ふるさと村役場のコミュニティ機能、サービス機能の向上を図るなどこれまでのイベントを核とした交流から、組合員・村民の自発的な交流と交歓を支援する活動を推し進めていくことにしている。 ◎現在は、全トヨタ労連と荘川村役場、組合員と民宿といった交流が中心であり、唯一中学生の夏休み時に愛知県訪問が続いている。 |