「あしたのまち・くらしづくり2009」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
粗大ゴミの森を「市民が憩える森」に再生 |
神奈川県横浜市緑区 鴨居原市民の森 愛護会 |
森の概要 1.鴨居原市民の森の所在地は、横浜市緑区鴨居町にあり「鴨居原緑地保全地区(一部私有地)」は高低差25mある傾斜地で、1・2ヘクタールの雑木林の森である。 2.この森は30年ほど前から市道に面した箇所から傾斜地に向け粗大ゴミが捨てられていた。当時は市道に面した箇所には、「不法投棄禁止」の看板やトタン板で囲いがあったが、粗大ゴミや古タイヤ(約2000本)が低地に散乱し、樹木の茂りで薄暗く人を寄せつけない荒廃の森となっていた。 3.住宅地に隣接する緑溢れる森が「ゴミ捨て場」と化し、地元住民としては何とかしたいと思っている人は多くいたと考えられるが、誰も手を付けなかった。 鴨居原ふれあいの森愛護会発足式まで・平成15年2月~平成16年9月 1.平成15年2月に地元鴨居町の森元壽一氏(故人・当時の鴨居第8地区自治会長)の発意で鴨居第4地区自治会長(当時)、鴨居駅周辺まちづくり研究会代表(執筆者)に、森を綺麗にしようと提案があった。この森の側道は住宅地に隣接し散歩する人も多い。 2.横浜市から「森のボランティア」活動として期待すると賛成を得た。 3.早速、会員集めに動いた。鴨居第4・第8地区自治会の役員、鴨居駅周辺まちづくり研究会(略称・鴨居まち研)のメンバーで約30名の参加が決まった。 4.森の知識を得るため緑区で開催された「里山研修会」にメンバー4名が受講した。 5.6月に里山の専門家と行政関係者を招き、森の再生事業の可能性について協議した。現地視察後の検討会で問題点は3点あり。 第1.森に隣接する民家の了解を取り付けられるか。 第2.傾斜地のため、どのように活用するか。 第3.2000本とも言われる古タイヤと多くの粗大ゴミの処分をどうするか。 以上は関係者の協力を得ながら時間を掛けて解決することにした。 6.7月に「鴨居原ふれあいの森」準備会を結成し、「森のボランティア」活動団体として横浜市に団体登録し承認された。あわせて隣接する民家に森の再生事業を説明し基本了解を得た。 7.準備会は素人集団であり、森づくり関連の有資格者「里山管理指導者・高木宥氏、樹医・阿部昭雄氏、森林インストラクター・須長勲氏、自然観察・山岸和子氏」にボランティアで、鴨居原の森再生事業の協力を要請し快諾を得る。 8.10月に関係者で森の内部を視察し、11月からの作業手順を打合せた。 9.平成15年11月1日(土)「鴨居原ふれあいの森」準備会第1回の活動を開始。毎回9時に「鴨居第8地区自治会館」に集合し、資料に基づきミーティング後に森に入り活動した。活動は毎月第1・3土曜日の9時~午前中と決めた。 10.粗大ゴミとジャングルのような森に、まず、地元の方の案内で昔歩いたと思われる「昔道」を造ることにした。タイヤとゴミで地形が変わっているが、何とか一本の道(下の入り口から上の市道まで)を開拓するルートが決まった。現在の「こもれびの道」である。 11.作業は、一本道づくりと、下と上に1箇所ずつ広場を造ることに集中した。間伐材は白山高校に陶芸釜用に薪として提供する一方、一部は消防署の許可を得て焚火で処分した。 12.作業に必要な道具は各自持参した。平成16年6月に横浜市から道具に貸し出しを受けた。鎌、ノコギリ、ナタ、刈り込み鋏、スコップ、カケヤ、ベルト等である。 13.森には、「トイレ及び水飲み場」がなく不便である。横浜市に要望しているが、「市民の森」か「公園」でないと設置出来ないとの返事。トイレは近くの自治会館を利用した。 14.道具等を格納する倉庫は、会員から中古倉庫の寄贈を受け設置した。 15.下の広場から一本道の通じる傾斜面に、4メートルの小橋と6メートルの階段は間伐材で設置した。森全体が傾斜地のため、階段や道の両側には手作りのロープ柵を設けた。 16.森の活動に関する資料等は緑区役所、農政事務所から提供を得て会員に配布し、資格者の指導で勉強会を重ねた。 17.取りあえず、2箇所の広場と一本道が完成し、多くの人に来て頂くために「愛護会発足式及び植樹祭」を実施することにした。 鴨居原市民の森が(南地区)誕生・平成16年10月~17年4月 1.平成16年10月2日(土)に「鴨居原ふれあいの森」愛護会を発足させた。「発足式&植樹祭」には緑区市会議員、緑区長及び行政関係者、地元の自治会長、小中学校長、関連団体と近隣市民約300人が参加しイベントも盛り上がった。多くの出席者に、散乱したタイヤ・粗大ゴミが目に止まり、今後の作業が大変だとの印象を抱かせた。さらに「トイレ」「水飲み場」がない不便さも参加者から声が出た。なお、発足式会場で会員募集を呼掛けたところ約40名の新規加入があった。 2.タイヤ等の粗大ゴミの処分に苦慮したが、横浜市とその都度相談しながら予算化して、長期的に処分することになった。 3.16年11月、行政との協議で17年4月に「鴨居原市民の森」としてスタートが決まり、会員一同は小躍りして喜んだ。あわせて念願の「トイレ・水飲み場」等の工事及び、造成工事も12月から取り掛かった。 4.早速、古タイヤ等の処分を検討した。取りあえず、目に付く箇所のタイヤと粗大ゴミは、4月の開園までに「第1回目のクリーンアップ作戦」で撤去することにした。 5.「クリーンアップ」は2月に実施した。これには鴨居連合自治会、各団体、東鴨居中学校生徒、愛護会員等150人の協力を得ることが出来た。文字通り地元の協力で、集めた’古タイヤ・粗大ゴミは4トン車2台分あった。 6.開園時に配布する、「市民の森マップ」に記載する、「森の広場・森の道」の名称検討会には中学生の意見を採用し、上の広場を「ハンカチの木広場」(植樹祭でハンカチの木2本植樹)、下の広場を「ふれあい広場」、一本道を「こもれびの道」と命名した。 7.11月に「ふれあい広場」の真ん中にある古い栗の木4本を伐採し、「椎茸栽培」を行なうことになり、ホダ木づくりを行なった(18年末から収穫が始まった) 8.平成17年4月2日(土)「鴨居原市民の森」開園式典&イベント開催。参加者は横浜市環境創造局長、緑区長、市会議員、近隣の自治会長、小中学校長、老人クラブ、小中学校PTA会長、各団体代表者、一般参加者等500人(推定)が参加し祝って頂いた。 北地区の開園と横浜市長来園・平成17年5月~18年4月 1.5月のホームページ立ち上げ。http://www.kamoihara.org/ 2.今年から市民が森に触れ親しむイベントをスタートさせた。5月には親子を対象に「森であそぼう」(野仏ラリー&クッキング)、8月に「ソーメン流し」、11月に「焼き芋大会」(クリーンアップと併催し、クリーンアップ参加者は無料で焼き芋をプレゼント)の三つの行事を実施し「鴨居原市民の森」を印象付けた。 3.10月に子どもたちと鳥の巣箱を作成し6箇所に巣箱を取り付けた。 4.北地区(竹林で0・8ヘクタール)の開発準備工事がはじまる。北地区も高低差が大きい斜面で、上の農道から粗大ゴミや木々、野菜クズが多く捨てられており、南地区同様にゴミ問題が開園の課題となったが、当面は放置して18年度中に横浜市で処分して頂くことにした。(北地区も緑地保全地区に指定された民有地である) 5.南地区は愛護会員による手造りの森であるが、北地区は業者の工事でスタートした。森の設計(広場、道のコース、出入り口等)については愛護会の意見が反映された。 6.TVK(テレビ神奈川)の横浜市広報番組「HI!編集長」の取材に、編集長の中田宏横浜市長が4月11日に南地区に来場され、愛護会員と一緒に作業したり取材を行なった。(4月29日(土)に放映された) 7.4月22日(土)「鴨居原市民の森」北地区の開園式・イベントを昨年と同様に開催した。式典は自治会館で開催し、北地区でテープカット式と園内の案内を行なった。イベントは南地区の「ふれあい広場」たくさんの模擬店と中学校のブラスバンドで賑わった。ケーブルTVの取材があった。 定例活動等について・開園~現在に至る 1.定例活動(原則として第1・3土曜日9時~) 草刈(広場、道、花壇、植え込み)、道の補修(傾斜地のため毎回点検整備)、間伐、トイレ清掃(2人1組で火曜日、土曜日にローテーションを組んで実施)、園内パトロール(トイレ清掃後に実施)、廃材で焚き木作り(災害時に使用するため備蓄中)、道に木チップ散布(傾斜地で滑りやすいためチップを散布している)、剪定作業、竹垣作り(地元造園業の指導で行なった)、花壇整備(造園業の指導)、 2.森の将来をどのように育成するかの検討会「ゾーニング」を専門家を招き4回開催し、この計画に基づき森を管理している。 3.18年度から鴨居小学校の郊外授業等に森の活用が増えてきている。 4.愛護会員の定例活動は毎回20~30人が出席し、全員でミーティング後に作業をしている。また、愛護会の活動は「生きがい・楽しみ・地域の居場所」となっている。 年間のイベントその他の行事 【イベント】 5月「森であそぽう」…親子を対象に「ラリーとクッキング・森の遊び」 7月「七夕まつり」…小学校3年生以下の児童と保護者を対象に開催。 8月「ソーメン流し大会」…待ち時間には模擬店及び森の遊びで楽しむ。 11月「焼き芋大会」…クリーンアップ参加者は無料。 12月「ミニ門松作り」…併せてトン汁会も併催。 【行事関係】 11月「消防訓練」…緑消防署と消防団の協力で実施。 11月「クリーンアップ作戦」…地元関係者約150人が協力。 |