「あしたのまち・くらしづくり2009」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
大人も子どものいい顔で!―「共育型」学童保育を目指して― |
富山県富山市 水橋ミニクラブ「アドベンチャーじょうじょう」 |
はじめに (1)地域の特徴 富山市は、富山県の県庁所在地で富山湾に面し、県のほぼ中央に位置する。当水橋地区は富山市の北東にあり、周囲はほぼ田園地帯で住宅地が点在する。 当クラブが発足した上条新町は水橋5校区の一つ、上条校区に平成15年に造成された新興住宅地で、水橋上条地区において一番戸数の多い町内。 ・世帯数 201戸/586戸 ・人 口 726人/1900人(ウエイト38%) 平成21年6月末現在(水橋の歴史 第5集(発行・水橋郷土歴史会)/富山市統計データより) 新町誕生は、上条小学校児童数を平成14年の66人から平成19年151人、平成21年175人と6年で3倍近くになるほどの影響を地域に与えている。子どもたちの放課後児童対策も従来からある地域児童健全育成事業(上条こども会/平日16時、夏休み12時まで、春・冬休みは休業)だけではカバーしきれずカギっ子が増加。 (2)クラブ発足の経過 このような新旧町共存地域は、他の富山市西部地区をはじめ、富山県の様々なところで発生しているが、スピード社会のなか見落とされがちで、急に新しい地域で生きる人々の生活の悩み対策は、行政や関係窓口でも解決の糸口が掴みにくく、解決が難しいのが現状である。(当地域外でも同様の放課後事情に悩むところは多数あり、相談は今も尽きない) これらを背景に新町全世帯(当時170戸)ヘアンケートをポスティングし、必要性を確認、有志を募り、地域内での学童保育(働きながら子を育てる環境)づくりに取り組んだ。が、地元とのつながりもなく、新町の横のつながりも希薄で、なかなか前へ進められなかった。 しかし、諦めず、真剣に理解を求めて、歩くことでたくさんの協力者に出逢うことができ、地元の正専寺さんで平成19年3月、水橋ミニクラブ「アドベンチャーじょうじょう」を誕生させることができた。 趣 旨(特色) 当クラブの特色は、徹底的な子ども目線を貫いてきたこと。(子どもの気持ちを真ん中に置く考え)発足当初、「新町の子だけを」の声にどうしても「子どもが地域で育つ際、新町の子も地元の子もみんな同じ」という思いを譲ることができず、せっかく決まった新町公民館でスタートする話を白紙に戻すことになっても、『子どもにとってのいいこと、大切なこと』にこだわりを持ち続けた。 今はそれが逆に、「若い世代の働く親の預け先」ではない、「子どものための楽しい放課後の居場所」を、新旧町の垣根を越えた地域の中で創っていける結果につながっている。 また、地元の方の意見や指摘を批判とせず、助言として受け止め、活動に反映してきたこともこのクラブのよさであり、今の活動のベースになっている。(若い世代には年配者の知恵と経験が不可欠。異なる角度からの意見は重要) 組 織 ☆構成員 ○児童の保護者…26人 ○学童保育指導員…3人 ○活動アドバイザー ・愛知教育大学(前富山大学)・竹井史教授(美術教育、幼児の遊び・造形遊び) ・富山国際大学子ども育成学部・開仁志先生(幼児教育学、教師教育学、遊び学) ○地域住民ボランティア…2人 ☆児童教 ○1年…4人 ○2年…7人 ○3年…2人 活動の概要 (1)活動の内容 ◇地域に根付く「共育型」学童保育づくりと地域に向けた「遊びと交流の機会」づくり ①「社会」と「会社」の板ばさみに悩まない子育ての支援 ・地域(校区)で共働き、1人親家庭が生き生きと子を育てるための学童保育を運営。 ②かぎっ子、TVっ子、ゲームっ子を作らない環境づくり ・TVもゲームもない中で単発(イベント)ではなく、「生活の中」で「継続的に」提供。 ③身近(地域)で体験学習できる機会づくり ・「ワークショップ(参加型学習)」「手作り体験教室」などを身近(地域)で提供。 ④みんなで育ち合い、支え合う関係づくり ・力不足を批判し合うのではなく、カバーし合うこと、勉強して補うこと、助け合うことの大切さを親も子も実際に学ぶことを実践。(企画や運営、イベントに全員が関わる) (2)活動の対象者 ◇学童保育活動対象者 ・主に上条小学校に通う小学生とその親 ◇地域向けイベント対象者 ・主に上条校区に住む地域の老若男女すべて(救急救命等、大人のみ対象の場合有) ・イベントによっては地域から羽ばたいて富山市広域親子を対象 ・実践活動(地域ボランティア)を希望する教員、保育士の卵(大学生・短大生) (3)活動の範囲 ・通常は上条小学校区内で活動。イベントオファーによっては、富山市広域 ・同じ価値観を持つ活動への協力(富山県内NPO、ボランティア団体への応援) ・他の地域からの母親悩み相談(クラブ発足や子どもの預かり相談等主に富山市内) ※基本は「地域活動」、親子育ちとして「社会活動」 (4)広報活動内容 ・毎月クラブニュースを発行し地域へ配布 ・回覧板でイベントや利用者募集のお知らせ ・上条小学校からイベント案内を配布 ・翌年小学生になる親子に活動説明 ・ラジオ、新聞社の出演・取材対応 ※とにかく未知との遭遇(前例なき活動)への戸惑いをなくすため「活動を全公開」に。 活動の成果 (1)親子の居場所として「徐々に」、「確実に」イベント毎に参加率が上昇してきた。 ・藍、和紙染めワークショップ27名 ・救急救命(AED)講習28名+託児15名 ・エコ縁日140名(親子70組) ・物語と遊びのワークショップ63名 ・ミニミニ縁日65名 ・ボン菓子屋さんがやってきた90名 (2)学童保育の新たなスタイル構築→大人も子どもも共に育つ「共育型」スタイルヘ 活動事例1 流しそうめんランチに休みもほとんど取れないフルタイム勤務の母親が、会社の昼休憩を使って駆けつけ、そうめん茄でに徹し、一言「自分も参加したくて!」 活動事例2 看護士の母親は夜勤明けにもかかわらずサーカス遠足に引率。「私も一緒に!」 活動事例3 産休中の母親たちは孤独保育になりがちだが、子ども主体縁日に「産休カレー屋」で応援、地域参加住民へ提供。 (3)クラブ指導員の成長 ・指導員の中で10年以上うまく社会の波に乗れずにもがき悩んできた(いわゆる世間でいう不登校からの引きこもり)青年がいるのだが、この活動で初めて社会で1年以上同じ仕事に就き、今は子どもとクラブのかけがえのない存在に成長している。 地道な活動の継続は自立支援にもつながっている。 (4)学生たち(地域活動ボランティア)の支援と頑張り ・将来、子どもたちと関わる仕事を目指している地域の学生たちが、進んで協力を申し出てくれた。貴重な時間の合間に積極的に子どもたちと関わってくれる。 感想1 縁日等のイベントは子どもが楽しむと同時に大人も楽しむことが大切だと感じた。 感想2 子どもたちの提案を重視する大切さを学んだ。親子や地域で築き上げている場に参加することができたことは得るものが多かった。 などなど。 (5)多様な行事で広がる交流の輪 ・地域での開かれたバリアフリー活動と熱意により、地元の方とのつながりができた。 ・老人会よりおやつを頂くなど、新町の子を地元の方が気にかけてくれ出した。 (6)NPO創造的地域活性化事業応募…入選(平成19年度) ・県NPO組織が募集するレポートに応募した。組織が発足して間もないこともあり、ただ挑戦しようという意識だった。活動内容が充実していて、十分効果を上げているとは思わなかったが、選んでいただく。 (7)富山県ふるさとづくり賞で大賞に輝く(平成20年度) ・あすの富山県を創る協議会主催のふるさとづくり賞に応募した。前年度同様、挑戦的な気持ちで応募したところ、多様な活動と意欲的な実践活動が認められ、子育て支援活動部門で見事、大賞に輝いた。特に子どもたちは大はしゃぎで喜んでいた。 今後の展望 ◇地域の子どもたちと親たちの居場所づくりを目指して立ち上げた当クラブは、予想以上の成果を上げている。子どもたちの目線に立って、みんなで励まし合い、支援し合う姿はまさに親子共々育っている実感を持つ。今後は、地域の人々との交流を深めて、地域全体で多彩な行事を通して、子育て支援活動を継続していきたい。 ◇子育て支援に関わる問題のみならず、地域の問題を今後も継続して受け止めるためには、安定した運営資金と指導員が必要である。この先、『放課後子どもプラン』の補助金対象のクラブと、認めてもらえるよう、これからも積極的に地域の中から実践的にモデル提案していきたい。 そして、地域と共に生きる温かいクラブを継続していけるよう努めていきたい。 |