「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞 |
コミュニティビジネスによる商店街活性化、地域活性化 |
東京都国立市 NPO法人くにたち富士見台人間環境キーステーション |
活動記録 私たち、NPO法人くにたち富士見台人間環境キーステーション(略称KF)は、商店街、国立市、一橋大学、国立市民の、産官学民が連携してまちづくりを行なっている団体です。KFの前身は、2001年にはじまった「国立プロジェクト研究会」です。全国的にそうであるように、国立市富士見台でも商店街は停滞し、空き店舗も目立つようになっていました。そこで国立市産業振興課の声かけで、地元の一橋大学というリソース(資源)を活かし、商店会(谷保駅北口商店会、ダイヤ街、むっさ21)、商工会、国立市民が参加して富士見台1丁目(JR南武線谷保駅北口地区)の商店街の活性化を考えていこうという月1回の研究会がはじまりました。この研究会に参加していた教授のゼミ生も参加しました。 教授と学生を中心として「人間環境キーステーション構想」が作成されたのが、2002年の春先でした。それをもとに、一橋大学全学共通教育科目「まちづくり」がスタートします。授業「まちづくり」では、国立市の課題(たとえば緑化、自転車問題、コミュニティビジネスなど)ごとに学生が班を作り、まちに出て課題解決に取り組みました。そしてコミュニティビジネス班のメンバーが中心となり、学生サークル「Pro-K」が発足しました。 2002年の「国立プロジェクト研究会」では主に空き店舗活用法について話し合われました。授業「まちづくり」を履修している学生の様々な提案と商店主との議論をもとに、むっさ21内にある3つの空き店舗を利用してコミュニティ・カフェやカルチャー教室を開くことが決定しました。これらの店舗の運営は、学生が主体となることも決まりました。そして3月に「くにたち富士見台人間環境キーステーション」が設立されました。参加者は、商店会、国立市、商工会、教授、市民、そして一橋大学の学生という構成でした。 空き店舗で学生が中心となってカフェなどを経営するという珍しい企画に、様々な人々が協力してくださいました。例えば、長野県朝日村からはカラマツ材の無償提供を受けました。あるいはタウン誌『どんなくにたち』や農作物の地産地消を考える『地域自給くにたち』が企画に参加。武蔵野美術大学の学生もデザインに参加しました。 このように、店舗の開店準備の段階から、地域のリソースを活かしたまちづくりを展開していきました。 2003年6月には「エコスポット」が稼動を開始しました。エコスポットは空き缶・空きペットボトルを機械に投入するとカードにポイントがたまり、ポイントがいっぱいになると商店街で商品券として利用できるというシステムです。「エコスポット」は2004年9月よりコカ・コーラ社の協賛を受けて、運営を継続しています。 翌7月には、事務局「KFセンター」がオープンしました。続いて8月にはカルチャー教室「まちかど教室」、コミュニティカフェ「cafe ここたの」がスタート。「まちかど教室」は一橋大学の教授をはじめ、市民や商店主など多くの方がこころよく講師を引き受けてくれています。 翌2004年の2月には多目的ホール「KFまちかどホール」がオープンし、「まちかど教室」の開催や市民のギャラリー、カルチャー教室の場として、広く利用されています。 2005年には、「食」で地域を盛り立てる「とれたの」をオープンし、地産地消を推進しています。2008年からはオリジナル商品「ほうれん草うどん」の販売を開始しています。 さらに学生が地域、商店街に密に入り込むきっかけとして、商店街や自治会で開催しているお祭りにお手伝いとして参加しています。また、学生の方からイベントを企画し商店街を巻き込むこともしています。地域住民に商店街のことをよりよく知ってもらうために、2010年4月より商店街のクーポン付情報誌「やっほー」を発行しました。これは商店街の各店舗で無料で配られ、さらに地域活性化戦隊「やほレンジャー」というキャラクターも生み出しています。 こうした活動が評価され、「学生サークルPro-K」は一橋大学『学長表彰』を受賞し、一橋大学の「人間環境キーステーションとまちづくりの授業」は文部科学省から『特色ある大学教育支援プログラム(GP)』に選定されました。2005年12月には東京都商店街グランプリで活性化部門の優秀賞を受賞しました。2006年2月には、KFの設立段階の総まとめとして、特定非営利活動法人として法人格を取得しました。そのほか、各種新聞や雑誌、テレビで報道されています。具体的には、「とれたの」のほうれん草うどんは「ぶらり途中下車の旅」で阿藤快さんが、「メレンゲの気持ち」で石塚英彦さんが召し上がっています。 組織としては、学生で参加する人が年々増加しており、現在は70名ほどで活動しています。経営も3年目から黒字に転換し、独自採算での運営を続けています。 現在までの成果 コミュニティカフェ「ここたの」では、通常営業で市民スタッフ、学生スタッフがお客様とのつながり創出、またお客様同士のつながりの創出に日々取り組んでいます。また、人前で気軽に発表したいと思う特技や趣味(歌、楽器演奏、詩の朗読など)を持っている方のために、「ここたのナイト」というオープンマイク式イベントを月1回、さらに市内のマジシャンを招いての「マジック教室」を月1回、継続的に開催しています。そのほかにも不定期で、折り紙教室やキャンドル作りなど、コミュニティを創造するさまざまなイベントを運営しています。 くにたち野菜と地域食材の店「とれたの」では、今まで国立市の人が手に入れにくかった国立産の野菜を、恒常的に購入することができるようにしました。国立の農家を保護するとともに、新鮮で安全な野菜を地域に供給しています。また東京都西部の多摩地域に販売拠点のある加工品会社に限定して仕入れている加工食品も併せて販売し、住民の方に地元のよさを知ってもらい、愛着を持ってもらえるよう手助けしています。さらに国立で多く生産されているほうれん草を使ったオリジナル商品「ほうれん草うどん」を市内の農家の方と共同で開発し、販売しています。これまでお土産品、特産品のなかった国立市に、新たな魅力を付加しました。この「ほうれん草うどん」は、国立市の商工会の認定する「国立Style」というブランドに、姉妹品の「こまつ菜うどん」とともに認定されています。さらに2007年と2010年には食育連続講座、2007年に野菜の収穫イベント、2008年にうどんの手打ちイベントなど、食育の推進にも寄与しています。 KFまちかどホールでは、国立市という文教地区に住み学習意欲の高い方々を対象に、一橋大学の教授や市民、専門家などを講師にした市民向け教室「まちかど教室」を開催しています。8年間で、計130回の講座を開講し、講師と市民、受講された市民同士のつながりを創出しています。それまで地域住民と接触のほとんどなかった大学教授にとっても、刺激になっています。また一橋大学の教授のまちかど教室をきっかけに、一橋大学で600人を集める市民講座が、2006年から2008年にかけて、年に10回開催されました。さらに演劇ワークショップのまちかど教室の講師をなさった方を発端に、講座の受講生が集まりまち劇団「えんがわカンパニー」が発足しました。2010年現在、まちなかを演劇の題材として活動を続け、またまちなかを舞台にした演劇も行なっています。貸しホール事業としては、カルチャースクール団体への貸し出しやギャラリー利用者への貸し出しを行なっています。地域の文化拠点として、市民の自己実現の場として、機能しています。 店舗を持たない事業として、商店街や自治会に学生が直接入り込んで地域活性化に貢献しているものもあります。まずは、商店街や自治会で開催するお祭りのお手伝いに行きます。これは、高齢化が進む地域においての重要な労働力として、地域の文化の保全に役立っています。また、商店主の高齢化によりなくなっていた「もちつき大会」を、学生の力で復活させました。次に、学生が独自にイベントを企画します。これは、イベントの目的をしっかりと見据えたうえでコンテンツを決めていく、つまりきちんと戦略を立ててイベント事業を行なうものです。具体的には、夜、シャッターの閉まる商店街が多いことを問題視して、夜に広場に小さな商店街を作って住民の方に商店街を知ってもらう「ナイトバザール」、富士見台の商店街をエコでブランディングする「富士見台グリーンフェスタ」「エコフリーマーケット」などです。最後に、商店街のフリーペーパー作りがあります。これは知られざる商店主の魅力を地域住民に伝えるために学生が編集し発行しているものです。他地域で発行されているフリーペーパーと大きく違う点は、記事を商店主自身が執筆している点です。これにより商店主の魅力をうまく住民の方に伝えています。このフリーペーパーにはクーポン券をつけていますが、商店街の約半数の店舗に協力していただいています。またこのフリーペーパーのキャラクターとして「やほレンジャー」を作り出しました。これは学生が衣装を手作りし、学生がキャラクターに扮して、毎週「やっほー」を配り歩いています。特に地域の子どもたちに人気があり、国立市でもさまざまな活用方法が検討されています。さらに、商店街をよりよく知ってもらうためのマップ作りも、現在進行形で進んでいます。 KF全体の成果として、商店主の意識の向上があります。「学生が頑張っているのだから」と、自分たちの店や商店街の改善に意欲を見せる人が増えました。また、空き店舗が埋まったことで人通りも増え、学生が頻繁に出歩くことで活気も感じられるようになりました。 |