「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

新旧住民の融和をはかる地域づくり
栃木県上三川町 明治コミュニティ推進協議会
はじめに

 私たちの地域は、上三川町の西部にあり、戸数約1500戸、人口約5300余名で、農村部と新住宅団地が戸数と人口共に相半ばしているところである。
 農家の多くは、稲作と園芸作目を栽培しているが、規模はいずれもあまり大きくはない。かつては干瓢の特産地だった。
 団地は若者世帯が多く、小学生530名の7割は、団地の児童で占められている。おかげで平均年齢は町内で最も低い地域である。
 転住者の出身地をみると、全国に及んでおり、正月とお盆は帰省のために、団地はまるでゴーストタウン化する状況である。
 このような地域の住民が、お互いに顔見知りになり、言葉を交わせる安心・安全な地域づくりを目指して、まず児童を媒体とする活動から始めた。
 さらに高齢者と、一般を対象とする活動へと進め、その結果が評価されて、今年の4月に『明治コミュニティセンター』を、オープンさせることができた。
 以下取り組みについて概要を述べる。


児童に関する活動

①ふるさと学習と福祉体験
 まだ地域に全く何の活動拠点もない10年前、地域内の特養老人ホームを会場に、夏休み7日間、小学生35名~50を対象に、民生・児童委員等を講師にして、ふるさと学習会を開催した。
 地域の歴史、地名の由来、お神輿やお盆等の伝統的な行事、地域産業に加え、福祉体験学習等を行なってきた。
 毎回の最後の時間は、高齢者の中に入って、歌や朗読や和楽踊りで交流して、大変喜ばれている。
 施設の納涼祭にも、色とりどりの浴衣の子どもが加わり、高齢者の追憶と郷愁を誘い、感激されて真に好評である。
②休日利用の活動
 年間を通しての土・日曜日に、単なる居場所づくりでなく、○英語遊び、○物作り教室、○楽器遊び、○お習字教室を開講している。
 学習塾ではないので、楽しいということを最大の狙いに実施されている。特に、文化や芸術に対する感性を豊かにする楽器遊びが基礎になって、コミュニティセンターの着工を記念しての、児童吹奏楽部が昨年5月に創設された。『明児吹奏楽部』42名である。
 楽器はもちろん地域が購入し、指導は保護者が協力して実施している。学校の運動会、地域のふれあいまつり、町の健康福祉まつりなどで演奏して、町民の注目と他地区から賛嘆と羨望の喝采を浴びた。しかし、何よりも児童自身が自信を持ったことと、他の児童までも触発して、やる気を喚起し子どもたちが元気に、地域の活性化にも役立ったと思われる。

☆長期休業中の活動
 年間を通してのことではないが、夏休み等に講座を開催している。
○籐細工 ○ストーンペインティング ○勾玉づくり ○ソバ打ち・田舎まんじゅうづくり ○お茶教室 ○囲碁・将棋・オセロゲーム ○自然観察 ○事業所見学など。
 次に今年度から、○アートバルーン ○折り紙と紙細工 ○子どもカレッジ等がある。
 子どもカレッジは、夏休みに入ってから、学校が授業を5日間午前中行なうのである。給食はなく昼に帰られると、ローンを抱えた共働きの家庭には深刻な問題である。
 低学年の子に家のカギを預け、食事を用意して気掛かりなまま、出勤して行かなければならないからである。
 そこで特に事情のある家庭を支援するために、学習活動を主体にして、午後まで預かる講座がカレッジで、家庭では愛情込めたおにぎり弁当を持たせてもらえばよいのである。
③放課後の居場所づくり
 学童保育は3学年までなので、対象からはずれる子どもも多いことから、月曜から金曜まで放課後の居場所を毎日開設している。
 来年度からは、曜日ごとに特色あるテーマを持った、居場所に改編する計画で研究している。
④幼児サロンの開催
 18年の10月から週3日開催、子育て経験者3人の指導員が交代で、アドバイザーとして、母親の相談に乗りながら幼児を見ている。


世代交流活動

①高齢者と児童の交流
 地元老人会と3年生の交流を図っている。
 グランドゴルフ、輪投げ、昔遊び等での交流である。
②ソバ打ち体験
 配食ボランティアの指導で年越ソバ打ちを、児童が体験して試食している。
③三世代交流親睦ゲーム大会
 これは親子とシニアが、グランドゴルフとアキュラシー、輪投げを楽しむもので、独自のルールで実施する。
 終始笑いがあり、賞品を低学年に持っていかれても、孫のような子どもたちだけに、高齢者はニコニコみている。
④故郷探訪ウォークラリー
 新住民に地域を知ってもらうために、これも10年前から、家族で参加を原則に実施している。
 地域内の古道、東山道や官衙跡、城址や社寺、その他の史跡はもちろん、農家の屋敷内にある銘木めぐり、農業ビニールハウスめぐり等である。
 トマト、キュウリ、いちご、アスパラをみて、試食もあり、『嫌いなトマトが食べられた』『取り立てキュウリにトゲがある!』と、発見や感想を書いた子どもたちがいる。
 ウォーキングから戻ると、ボランティアが温かいトン汁を振る舞い、そのあとで地域の民話や伝説を聞いて、五七五の感想文を書いて終わる。
⑤ふれあいまつりでの交流
 この行事は14年続く地域最大のイベントで、17自治会と小学校PTA、サロンや老人会等が参加する。
 なかでも各自治会自慢の模擬店が人気である。つきたて餅には行列ができる。児童の特技発表や、一昨年から東京の俳優座を呼んでのエコ演劇、創設した吹奏楽の演奏等で、一日中地域が盛り上がる。


高齢者関係の活動

①いきいきサロンの開催
 高齢者の閉じこもりをなくそうということで、お茶を飲んでお話をする『いきいきサロン』を月に2回開催している。
 一昨年から別会場1回も加わり、秋には合同で町のバスで日光方面へ小旅行を楽しんでいる。
 サロンは自主性を尊重し、手芸、料理、体操等バラエティに富んだ内容になっている。在宅支援センター等の応援も受けている。
②元気アップシニア大会
 いきいきサロンに以前は男子も見えた。しかし、女性に圧倒されて、最近は稀である。男子を呼んだのは体を動かすサロン、グランドゴルフと輪投げのシニア大会であった。月1回の定例大会、他に特別大会を実施することもある。介護予防の健康づくりを目標に和やかな集いになっている。褒美の賞品も上位者だけでなく、『健康づくりに汗を流した人』と、結果の悪い方にも配慮している。
③友愛訪問
 ふれあいまつりの益金と、予算の中から、85歳以上全員の方へ、正月に長寿と新年を祝って記念品を毎年贈っている。10年前43人、昨年は97名、今年はさらに増え、高齢化社会の到来を実感している。
④ふれあい配食
 独居高齢者、両老者、障がい者等から、30名を選んで毎月1回弁当を配食している。見守りと安否確認をかね、民生委員が言葉の味付けを加えて届けているが、調理は地域内ボランティアがつくる。
⑤見守り隊サポート
 今市事件後組織した、高齢者による小学生の登下校見守り活動を、地域がサポートしている。高齢者でなければ出来ない力を借りて、子どもが安心して通学できる。
⑥高齢者の集い
 これは今年度秋から開催するもので、コミュニティセンターの運用開始に当たり、高齢者を主体にして、配食や吹奏楽、その他住民による世代交流的な敬老会を企画している。全て手作りの集いの予定で今から期待されている。


成人向け活動

 住民からの提案を募りながら、成人講座を開設することにした。手始めに郷土行事食(かんぴょう料理、田舎饅頭、ソバ打ち、しもつかれ、漬物)、介護予防や介護食等調理室を利用した講座から始め、地域活動から最も疎遠な年代対象のプログラムを、今年から漸く実践に移した。介護食とかんぴょう料理は既に3回実施し好評であった。


地域づくり関係活動

①地域安全啓発活動
 小中学生、一般から住み良い安全な地域をイメージした標語を募集する。約650点集まる中から数点選定し、印刷して各戸に貼付し、地域安全の意識化と啓蒙に努めている。合わせて、防犯や交通の危険な場所等の調査も実地している。昨年度は、県道通学路の歩道部分の拡幅を行政に陳情し、その実現をみた。
②広報の発行
 今年度古いがパソコンが入った。即手作りの地域内広報を充実して、印刷機も近く配置される見込みである。行事への参加の輪を広げたい。
③福祉教育の助成
 小中学校が行なう福祉教育に助成金を進呈している。
④コミセン広場の管理
 町からコミセン広場の指定管理者に選任されたので、管理と共に、有効利用に努めている。シニア大会もそのひとつである。小学校の行事、部活、隣接保育所、中学の行事等広場を有効活用している。


おわりに

 旧住民は団地ができて、職業も出身地もバラバラな大勢の転住者を迎え、どう付き合えば良いか戸惑った。新住民の方も土地柄も分からず、コミュニティ組織づくりもままならなかった。
 しかし、子どもたちは学校で直ぐに同化し、混然一体となってくれた。そこで、親にはそれぞれ素敵な故郷があるが、子どもたちは“ぼくも わたしも 明治の子”と校歌で歌っている通り、『故郷はここ』であるから、誇れるような故郷をつくり、美しい思い出を創ってやりましょうと訴えた。
 つまり子どもたちが媒体となって、地域活動を展開する中で、住民が『交わり知り合い、仲良くなってきた』。そしてコミュニティ組織ができた!

 地域の社会的資源を発掘して、地域力を高めることが課題であると考えた。予想通り団地には多様な、有能な人材がいることが分かり、その力を地域づくりに向けてくれる方が次第に出てきた。

かくしてセンターも出来た!

 新旧異質な住民が融合してこそ、新たな『今までにない地域』ができると信じて、最初から全て満点の成果を期待せず、やれることから実践している段階である。
 まだまだ未成熟地域であるが、活動の拠点を得て、新たな出発の覚悟で地域づくりに臨むため、今日までを回顧してまとめた次第である。
 絆を結ぶ子どもたちの吹奏楽に鼓舞され、やさしい心、潤いのある街が実現できるよう、皆で努力をしているところである。