「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

もう遅い、いや、まだこれからさ! ホタルより学ぶ環境。そして地域のきずな
群馬県渋川市 宮田ほたるの里を守る会
自然環境の保全・再生活動を目的とする

 宮田のホタルは「無くしてはいけない、いなくなってはいけない」地域の財産。赤城町の自然環境は現在、地域に本来あった水辺の植物や水生生物、里山の植物が外来種に覆われ、歴史的な風景さえも変えられつつある。しかし、人と生き物が共存する田園風景や里山の自然が赤城町宮田地区にはまだまだ残っている。この地区の自然・歴史・文化を守り私たち大人から子どもたちに伝えていくことを目的としている。


活動の動機、きっかけ、その後の展開状況

 平成8年宮田地区生涯学習役員と周辺農家の皆さんにより地域づくり、人づくりの一環としてホタル保護活動をスタート。当初は自生する数匹のホタルを確認。現在では500~600匹の乱舞を観賞することができる。その後、平成10年に自主グループ団体となり、県・市・町各行政機関、自治会と連携し、自主独立の組織で設立当初より会費のみで運営。
 当初は予算がないのでホタルの生態や水辺の環境づくりについて知識人・学識経験者を招致できず、ホタルの生態や水辺の環境づくりについて会員一人一人がテーマを決め資料作成や学習会などを行なう。この苦労が大いに役立ち会員の経験や知識を蓄積することができ現在の礎になっている。平成11年に幼・小・中学生が入会(現在は高校生まで)。
 地元赤城町の環境やホタルの棲める環境づくりについて講演、ワークショップ、総合学習、取材が増えた。平成14年より会員と子どもたちによる水生生物体験学習会、カワニナ捕獲・放流会を実施。県・市・町による環境保護、ホタル保護活動キャンペーンを子どもたちと一緒に展開中。


自然環境の保全・再生への取り組みとこれまでの成果

○ホタルの棲める農業用水路を中心とした周辺の環境整備
・宮田大島地区の水田・畑・雑木林4haは生態系保全型農業特区指定
・農業用水路上流から下流約400mでホタルの生態に合わせ整備年6回以上実施
・散策道(バリアフリー化)・農道・市道の下草刈り、植木・植物の手入れ、ゴミ・空・缶拾い年6回(子どもたちの参加3~4回を含む)
・宮田北地区でカワニナ養殖場の下草刈り、水路整備、エサやり実施
○ホタルの生態系調査・体験学習会の実施
・4月下旬より上陸調査や飛翔数を確認。4月20日~7月31日頃まで毎夜交代で観賞者の案内やホタルの説明、パトロールを実施。調査は10月下旬まで行なう。小・中・高校生含む体験学習会ではカワニナ捕獲・放流や水質調査、水生生物を調査研究。年1回10月に実施。ビオトープづくりを目指す
○体験を主体とした子どもたちに対する環境学習の実施
・子ども会員として加わり世代・職業を超え、地域が一体となった活動により地域の連携が深まる。学校での講演会や総合学習での赤城町の自然やホタルの棲める環境、川の水を汚さない大切さなど自然体験、環境教育、人格の形成などの取り組みで新市渋川の注目を集める
○C02排出削減効果
・年間活動(下刈り、水路整備など)により環境費年間約300~400万円を削減(山岸隆一さん(環境カウンセラー)の試算による)


農業生産に直接または間接的に結びつくような試みなど、農業(農家や営農)との関わり

○ホタル生息地4haの水田・畑は農薬を使用しないか減農薬栽培に取り組んでいる
○農地周辺の下草刈りについては農作物の状況に合わせて実施するのではなくホタルの生態に合わせた時期に作業を行なっている
○生息地で生産された米「ほたる舞(ホタル米)」はブランド名。自家用米、縁故米として生産。生産者・会員・子ども会員で試食会開催(10月末)


自然環境の再生保全活動を通じた、地域の活性化

○行政や学校、地域外より環境問題・自然・ホタル保護活動報告などの講演依頼がある
○小・中学校総合学習での事例発表(ホタル会員も発表を参観する)、市環境まつり、町ふれあいまつりなど、子どもたちと一緒に活動発表を行なう。この活動により、他地域にも広がり、赤城町3自治会や渋川半田自治会、吉岡町漆原自治会にホタルの棲める環境づくり・人づくりを指導している
○地元自治会内各組織の連携、また協賛会員として6社、個人商店2軒(ほたる饅頭、ほたるアイス販売)、宿泊施設、温泉、きのこ野菜の直売所の参加により県内外からホタル観賞者数が拡大。売り上げの一部がホタル基金となり、活動費補助に充てる
○平成21年2月にホームページ開設(www.miyada-hotaru.com)


自然環境の再生・保全効果を把握するための調査

○調査の内容:カワニナ捕獲・放流、水生生物・植物の観察調査、体験学習会実施
 平成14年から毎年開催。今年9回目(年間事業10月開催予定)。この体験学習会を通し、自然を守り育て、生き物と共存する地域づくり、人づくりを進めて自然環境のすばらしさを親から子、子から孫へと伝える取り組みとなっている。
○調査結果の概要:ホタル、カワニナの天敵が共存した環境ビオトープを目指す
 農業用水路を子どもたちの遊び場、自然体験の場として考え、ホタルの棲める環境や農業用水路について理解し、水への親しみや楽しさを知り利用する。その結果、水環境保全に対する関心度が深まった。また、水質・水生生物も良好である。
 平成19年の台風と20・21年はゲリラ豪雨に見舞われ水路が冠水、ホタルの卵や幼虫も流され飛翔数も3年続けて例年の半数の確認にとどまる。水路整備が急務となっている。


農家、農業団体、教育機関、住民グループ等との連携・協力

○連携している機関の名称:
 県、市、町各行政機関、自治会、長野県辰野町、前橋市田口町、東武動物公園(交流)ボランティア団体県一郷一学、渋川広域まちネット連絡協議会、赤城町ボランティア連絡協議会、赤城町幼・小・中学校、ほか、地域ホタルの里づくりを指導中
○連携・協力の内容:
 ホタルの棲める自然環境や保護活動、地域づくり、人づくり体験発表交流会の開催、ほか資料提供をする。地域の子どもたちの総合学習に参加。東武動物公園に(赤城町ホタリューム館構想中。)昼間はホタルを見ることができないので、いつでもホタル観賞ができるミニホタリュームボックスを製作(ボックス名:ローマの休日)し、講演会や交流会、ワークショップ、総合学習、ホタル保護キャンペーンに使用し大好評


活動の方向性、どのように発展させていくか

○平成17年 旧赤城村より4haをホタル公園にと提案があり、山や川などの自然、ホタル、植物(大島地区はカンゾウ、ヒガンバナの群生地)は地域独特の文化や自然、生活習慣を持ち、その地域の人々の感じ方、考え方を大切に考え、里山の風景をそのまま残し、ホタルの棲める環境を選ぶ。地域住民、ホタル会員主体の地域づくり、街づくりへと発展した
○平成18年 赤城町も深刻な少子高齢化が進み退会(高齢)者があり、一家族でホタル会員伝承を呼びかけうまくいく
○平成18年 ホタル生息地が散策道に近いため、ホタルが捕獲される。散策道(農道)の変更を市役所支所(赤城町土地整備課)に要望
○平成19年 農業用水路(ホタル生息地)土積、石積、水路のための整備・修繕が必要。市(農林課)に改修工事を要望(10月15日)
○一昔前の宮田(赤城町ほたるマップ)では農村の自然環境は保存されており、水生生物や植物、昆虫なども共存していた。ホタルもあちらこちらで観賞できた。今、ほたるの里に訪れる人の目に子どものころのホタル狩りを楽しんだ数十年前の記憶が甦る。近年、経済の向上を追い続けた結果、環境という貴重な財産を失ってしまった。時代の変化、生活の多様化により地域のつながりは希薄化した。自然と物と人との関わりをどのように考え、どのように行動を起こせばいいのか現代を生きる一人ひとりに問われている。新たな自己変革、パワーアップも生まれ、地域のつながりも深まりつつある。地域の今ある姿はそれぞれの潜在的可能性の一部の現れにすぎず、ホタル保護活動を通じて地域づくり、人づくりを思う存分、力を発揮していきたい。


自然環境の再生・保全活動に、都市住民の参加

○赤城町大島地区ホタル生息地周辺にはホタル会員でもある温泉・宿泊施設があり首都圏からの観賞者が多数訪れる。ホタルの説明・保護・自然環境を案内。また、私たちが住んでいる身近な小川・川(利根川)は首都圏2700万人の水がめでもある
○毎年6~7月の2ヵ月間、毎夜交代で自然環境やホタル保護活動について説明・案内を行なう
○国際交流
・海外農業研修生、外国人ホームステイ、市ALTとの交流。ホタル観賞案内・通訳・外国人向けの資料配布も行なう
・インターネット技術向上によりホームページヘのアクセス数が増加。外国からのアクセスも増加


自然環境の再生・保全活動の中で、環境教育に取り組み

 地元小・中学校の「地域を知ろう!」をテーマにした赤城町の自然や環境を守る総合学習では宮田ほたるの里を守る会がホタルの活動を通して生き物・植物・水を守ることヘの理解と関心を高めるために、体験学習会に大人会員も参加し交流を深めている。また、県・市・町、自治会主催、環境イベントは必ず子どもたちが主役。ホタルの生態、パネルの説明、質問への応答、資料配布を子どもたちが行なう。地域の自然環境への理解や子どもたちの触れ合いの場、友だちづくりの場(人格形成)として取り組んでいる。「地域の子どもは地域で育てる」を目標に同会では子ども会員71人が参加。その半数は地元以外の子どもたち。同会では大人にも子どもたちのためにもいつでも扉は開いている。
 「宮田ほたるの里を守る会」の活動はホタルを保護し多くの人に見て楽しんでもらうとともに環境をこれ以上悪化させてはいけないという意識を広げ、私たちの宝物を子どもたちと一緒に残していく活動を展開している。