「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
地元のおじちゃん・おばちゃんがつくるコミュニティ活動 |
埼玉県和光市 和光市コミュニティ協議会 |
和光市コミュニティ協議会(以下コミ協)は、地域の人々が、健全で住みよい快適な環境をつくり、人々との「ふれあい」を大切にする心を養うことが必要であるという観点から、昭和57年度に発足しました。 8つの団体(自治会連合会・社会福祉協議会・文化団体連合会・体育協会・交通安全協会・交通安全母の会・婦人会・くらしの会)から構成される地縁系の連合組織です。5つの委員会を構成し、様々な活動をしています。 「自分のまちを見つめ直すきっかけ」について 静岡県富士宮市への視察研修に行ったときのことでした。富士宮の魅力紹介のあとに、担当者が次のようにコミ協委員に問いかけました。「ところで、和光市の魅力は何ですか?」その問いに会場は、水を打ったように静まりかえりました。お互いに顔を見合わせ、黙ってしまったのです。それこそ、うん十年和光市に住んでいる人たちであり、コミ協を通じたまちづくりを何年も行なってきたにもかかわらず、誰一人、自分のまちの魅力を説明できなかったのです。 それをきっかけに、もう一度コミ協の活動を見直し、地域の人たちや団体を巻き込みながらつながりの強い地域づくりをしようと各委員が立ち上がりました。以下その活動を委員会毎にご紹介します。 「不良少年や不審者がいる公園」を「子どもの笑い声の響く公園」に再生する! 市内の市民活動団体が2年にわたり、市内公園調査を行なっていました。調査結果で危険箇所がある公園を知った緑化推進運動委員会は、安全で安心できる公園にしなければいけないと立ち上がりました。 具体的には、調査からあがってきた危険箇所を市民活動団体と一緒に再検討し、モデル公園を設定し、地元の自治会や育成会を巻き込み、現地調査をしました。その公園は、24年前の昭和60年に、地域の大人と子どもたちが手作りで作った公園でした。 24年経った今、その公園は不良少年や不審者が出て、子どもたちが安心して遊べないものになってしまったのです。 コミ協は、この公園を地域で安心して利用できるようにするために、地元の人たちが愛着を持って管理し見守れる体制が必要であると考えました。 そこで、地元の大人から子どもまでを巻き込めるイベントを企画し、実施しました。2部構成のイベントです。1部では、大学教授から地域で愛着を持って公園管理する方法について学びました。また、24年前の公園づくりに携わった大人や、子どもたち(今はお母さん)に集まってもらい、当時の思い出話をしました。 そして、2部は、愛着が持てるための公園づくりです。公園に行き、地域の子どもたちが親と一緒に、事前に設置した5箇所の花壇に芝桜を植え、水遣りをしました。 イベント後、きれいな芝桜を見に、地元の人が散歩でよく集まるようになりました。花の水遣りは地元の自治会が担当しています。人の目が多く集まるようになったことで、公園で不良少年が溜まったり、不審者情報が入ったりすることはなくなりました。また、そこに住む人たちからは、公園から子どもたちの笑い声が聴こえるようになって嬉しいとの声が多く届きました。 このイベントはコミ協が、公園の専門知識を持つ市民活動団体、地元2自治会と育成会と協働で実施したことで、延べ80名の参加者が集まりました。地域課題を解決でき、大きな成果を挙げることができました。 私心なく地道に道路や歩道のゴミ拾いをしている人を表彰する! 太陽が照りつける暑い日や北風が吹く寒い日も毎日、道路のゴミ拾いをしている人や掃除をしている人がまちにいます。その道を通る人たちの中には、見向きもしない人もいれば、感謝はしているが声はかけられない人がいます。このような中で、私心なく地域の環境整備活動を一生懸命に実践している人たちに光を当て、みんなで表彰してお礼を言う!事業が美しいまちづくり推進委員会が実施する「勝手に感謝表形式」です。 和光市の全自治会から、私心なく地道に活動している人たちを推薦してもらいます。推薦されてきた人たちを推薦者と共に、表形式にご招待します。 表形式では、推薦者が表彰者の活動を説明し、感謝の気持ちを述べます。それを受け、表彰者が感想を述べます。中には、自分の小さな活動が公の場で表彰されることで感極まって涙を流しながら逆にお礼を言う人もいます。表彰されたことで、今まで以上に頑張って活動していきたいとの感想を言う人も多いです。会場にはその方たちの家族も見守っています。最後は全員で記念撮影をします。時間にして2時間と短いですが、地域で私心なく活動している人に光を当て、その人はより生き生きと活動を続けています。 おじいちゃん・おばあちゃんの知恵を学び、伝える! コミ協広報委員会では、和光市に伝わる風習や知恵を調べて、文字化し、今の親や子どもたちに伝えています。例えば、家の中にいる荒神様の話、和光市になる前の大和町時代の大和音頭などです。昔はおじいちゃん・おばあちゃんから聴いていたはずのお話です。それらを実際に今の親や子どもたちに伝えるために、「おじいちゃん・おばあちゃんの知恵袋おはなし会」を実施しました。おじいちゃん・おばあちゃんが知恵袋を発表したり、盆踊りの踊り方を子どもたちに教えたりしました。 また、昔の和光市の様子を昔の人に聴いて書き残していかなければ、いつの間にか忘れられてしまうということに気が付き、和光の昔のことを知っている100歳近い古老を探し、その古老の話を聴き、レポートを作成しました。 それで終わりではありません。調査まとめ冊子を用いて、子どもたち や大人たちに対して語り継ぐことやふれあいの機会の提供が大切です。学童や文科省からの受託事業である放課後子ども教室や『市民大学』歴史講座の1コマ等への参画を目指しています。また、コミュニティセンター等でお話をしてもらい、和光の歴史を受け継ぐ人々を増やしていきたいです。 青少年に社会現場を体験させる! 青少年にとって、大人と一緒に行なう社会経験が大切であるとの意見があり、市民まつりにおけるボランティア体験を実施しました。 具体的な内容として、ゴミの分別作業、駐輪場の整理、会場案内です。事前説明会で、ゴミの分別の仕方等をきっちりと説明しました。子どもたちは、自分たちも1人のまつりのスタッフとして、働かなければいけない緊張感と高揚感で不安そうな表情をしていました。しかし、まつり当日は来場者からの「ありがとう」の声をかけられて、恥ずかしそうにしていましたが、嬉しそうな表情もして、より一層元気良く働いていました。後日、アンケート結果を見ると、「大人と同じ仕事を一緒に経験できて大変だったけど楽しかった」との感想が寄せられました。また、子どもの親からも、「まつり後、ゴミに対する意識が変わった」との意見が寄せられました。 地元野菜をふんだんに使った地元おふくろの味! 市民ふれあい委員会では、市民同士の心のふれあいを深める事業を行なっています。そのひとつとして、和光市には、全国の鍋自慢が集まる「彩の国鍋合戦」のイベントがあり、和光市で採れる旬の野菜を使った「地元おふくろ鍋」で参戦しています。都心に近い和光市でも美味しくてみずみずしい野菜が採れることをPRします。販売ブースの前に、おふくろ鍋の具材となるおふくろ大根 やにんじんを並べることで、鍋を食べた人がその野菜や味噌に興味を持ち、地場産の販売促進につながります。 市制施行40周年でのお祝い!今年のコミ協 各種事業を実施し、地域や地域の人とのつながりを深めていく中で、自分たちのまちの伝統(うどんづくり、おまんじゅうづくり等)や地域資源があり、それがまちの魅力であることに、コミ協の各委員は気が付きました。今年のコミ協は市制施行40周年に合わせ、その隠れた地域資源である「白子宿」にスポットを当て、「NPO川越着物さんぽ」に協力 をいただき、『白子宿着物さんぽ』を実施します。大人と子どものみならず、以前から暮らしている住民と新しい住民の融合を兼ねて実施する予定です。もちろん、“古老トリオ”も参加して交流しますっまた、この地域の商店も巻き込むことで、商店の活性化も併せて行ないます。 これからについて 和光市は、都心まで電車を使い20分で行ける利便性の良さ等から、住民の1割が毎年入れ替わるまちです。 旧住民、新住民と分けられてしまったり、ワンルームマンションの増加等で、自治会への加入率が50%を切ってしまったり、コミュニティができにくい要素が多いまちです。そのような中で、コミ協は、自治会を含めた和光市の大きな8団体からなる団体で、たくさんの人のつながりや動員を持っています。この力と今までの事業のノウハウを使い、多くの住民を巻き込みながら、今後は以下のことをしてコミュニティづくりをしていきます。 40周年の体験型イベントで実施するように、コミ協のネットワークを使って地元の人たちと一緒に「場所」や「人」の魅力を伝えるためのプログラムづくりを行ないます。プログラムを実施するのは、もちろん地元の人たちです。まちのことを知らない人たちが、そのプログラムを体験することで、まちの魅力や人とつながることができます。地元のおじちゃん・おばちゃんからなるコミ協は、行政ではできないけれども、最も大切な地域でのコミュニティづくりの最前線を多くの主体を巻き込みながら、いつも担っているのです。 |