「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

【鉄道のまち】を合言葉に、そこに暮らし、勤め、学び、そして訪れる人がともに考えるまちづくりを実現します
東京都北区 東田端まちづくり協議会
「鉄道のまち」東田端

 東田端地域(東田端1、2丁目と田端新町1~3丁目)は、東京都北区の最南にある1日の乗降客数が約8万6000人のJR田端駅の東側に位置しており、全域が低地となっている。当地域内及び周辺には山手線、京浜東北線、新幹線、東北本線、JR貨物線が走っており、また、背後には田端・尾久操車場がある等、鉄道施設により地域が分断されている。線路敷きとして利用されている土地の面積は約4割を占めている。
 古くから農村地帯だったが明治29年に田端駅が開設されたことで、市街化の基礎が築かれた。震災後は産業の発展に伴って機械や工具を取引する機工街が形成された。現在は、住宅、商店街、工場等が混在する複合市街地が形成されている。平成20年3月には尾久橋通りに日暮里舎人ライナーが開通し、同年7月には田端駅舎がリニューアルし、駅及び周辺の活性化が期待されている。


設立までの背景

 地域では以前、24時間型大型店舗の開発の話があったときに、陳情により、開設を防いだ経緯があった。そこで、「反対型」のまちづくりではなく、主体的に取り組む「提案型」のまちづくりができないかと6町会自治会、商店会、PTA、地元企業から参加を募り、自分たちでまちづくりの提案を行なうための「まちワーク東田端」を平成14年に設置実施した。まちワークは10回、述べ約200人が参加し、まち歩き、まちづくりの提案発表会、分科会を設け具体的課題の調査研究を行なった。1年間の議論を経て、まちワークが発展的に改組し、東田端まちづくり協議会が平成15年に設立された。まちワークでは、実際にまちを歩いてみた時に、線路等の鉄道施設により地域が分断されていることがメンバーからたびたび問題視されてきた。しかし、視点を変えて見ると、これほど鉄道を身近に出会えるまちはない。そこで、地域を分断している鉄道にスポットを当て、地域の財産と捉える発想に転換し、素材や情景を見つめ直し「東田端ならではの価値」に磨き上げることに力を注ぐことにした。そして、まち全体を「鉄道のまち」にすることを目標として「レールパーク型まちづくり構想」を掲げ、まちづくりの課題を、「鉄道」という遊び心が感じられるテーマでつなぎ、ハードとソフトの両面から誰もが親しみを持って参画できる地域活動に広げていくことを目的に様々な事業を展開している。


「東田端レールパーク型まちづくり構想」の実現を目指して

 本協議会には、地域に関わりのある、法人会員18社、個人会員147名(平成22年3月31日現在)が参加している。8つの部会(①レールパーク型まちづくり構想部会②駅周辺活性化部会③みちづくり部会④うるおいづくり部会⑤広報部会⑥情報戦略部会⑦旧新町中学校利活用審議部会⑧コミュニティバス誘致促進部会)から構成されていて、定例会を偶数月に開催している。定例会には常に50人ほどの会員が出席し、毎回白熱した議論が交わされている。
 協議会では、まちづくりの推進のため、これまでに官民協働で地域課題の解決に取り組んできた。田端駅前広場の改修の要望に当たっては、コンサルタントの協力のもと、整備イメージ図を作成し、東京都第六建設事務所と数年に渡って協議を行なってきた。現時点で実現には至っていないが、東京都からは今後も引き続き検討していくとの前向きな回答をもらっている。地域内の中学校跡地利用計画に当たっては、コンサルタントの協力のもと、利用計画図を作成し、協議会の定例会に区の担当課を招いて、意見交換を行ない、協議会の要望が反映されるよう、調整に努めてきた。その成果もあり、特別養護老人ホーム整備計画の方針及び既存体育館の存続が決定された。鉄道のガード下のひとつは落書きがひどく、夜は真っ暗だった。別のガード下の歩道は狭く、踏切の路面も凸凹があり高齢者には歩きづらいものであった。落書きの対策として、壁面に街の有志の協力のもと、機関車の絵と地元小学生の作品を描き、踏切及びガード下の改善、照度の向上については、鉄道事業者や道路管理者に働きかけ、踏切内のカラー舗装化及び拡幅、照明器具の取換えが実現された。協議会の方針をまとめ、実施方法検討等、実施に至るまでに1年以上の時間を要した。そして、平成21年度には、協議会からの働きかけもあり長年の地域課題であった都市計画道路補助93号線のJR東北線の鉄道高架部の拡幅の事業認可が決定された。
 会の活動費は、会費と一部を助成金で賄っているため、計画したものを実現するためには、企業や学校、個人に対してボランティアとして無償での協力を仰がなくはならず、資金集めに苦慮している。
 これまでに、様々な助成制度(内閣官房都市再生本部「全国都市再生モデル事業」・東京都「地域の底力再生事業」(2回)・北区「地域づくり応援団事業」(2回)・北区まちづくり公社「まちづくり推進団体助成」(4回))を活用し事業に取り組んできた。
 地区内の東田端の心惹かれる鉄道風景等8ヵ所を鉄道八景と称したビューポイントとして整備するために選定し、これまでに鉄道モニュメントや玉石アートを公園等2ヵ所に整備してきた。整備に当たっては、地元企業から、運搬及び資材の提供、地元小中学生による玉石の制作等総勢数百名の協力が得られた。整備した2ヵ所は北区の産業振興課が発行している「北区鉄道viewマップ」(平成20年)でも紹介されている。メディア等にも多数取り上げられており、東田端が鉄道のまちとして認識されてきた証ではないだろうか。
 本協議会の活動や地域のイベントを周知するため、紙媒体によるニュースを発行しており、関係町会自治会に回覧板による全戸配布をしている。また、地域外の人にも知ってもらうため、ホームページを運営しているが、内容を充実させるため、地域の専門学校の協力の下、一昨年度大幅なリニューアルを行なった。また、5周年にあたる平成20年度には、鉄道のまち東田端を積極的にPRすることで、まちの活性化を図るとともに、住民主体のまちづくりを発信するため「東田端PR大作戦」として、まちの魅力をアピールするため地域の情報を収めたDVDを製作した。また、普及啓発活動の一環として、平成15年より「東田端ぽっぽまつり」を開催している。これまでに計4回開催され、地域住民のみならず、地域に係わる様々な人の手作りで行なわれるまちづくりイベントであり、誰もが親しみを持って参画できるまちづくり、愛着のもてるまちを実現しようと活動を進め、子どもからお年寄りまで地域住民が一体となってまちを盛り上げている。第4回のぽっぽまつりには、約2400人もの来場者があった。


平成22年度の活動について

 地域の要望のもと存続が決まった既存体育館の運営及び管理方法について、定例会の中でワークショップを数回開催し、現在、協議会の考え方をとりまとめているところである。まとまり次第、北区へ提案する予定である。
 これまで、うるおいづくり部会が中心となって、橋と公園の2ヵ所に設置されているプランターの花の植替えや日常の管理を行なってきた。今年度、新たな取り組みとして、地域内のさらなる緑化推進を目的として、地域住民・企業の協力のもと、道路から観賞できる私有地内にミニプランター500基を設置する運動を展開した。設置したミニプランターには、小学生の描いた絵をステッカーにして貼りつけた。この運動を通じて、住民自身が街の美化、しいてはまちづくりに関与していこうという意識啓発が促されたのではないだろうか。また、本協議会の「住民自らが考え提案し行動していく」の理念のもと、多くの人にまちづくりに参画する機会を提供することで、新しいコミュニティの創出や、新しいまちづくりのきっかけになったのではないだろうか。


北区まちづくり公社から一言

 (財)北区まちづくり公社では、東田端まちづくり協議会の設立当初から、助言・まちづくりコンサルタントの派遣等を行ない協議会と関わってきた。現在、協議会の思い描いていたものが着実に具現化されてきており、「鉄道」をキーワードとしたまちが形成されつつある。今後、協議会が提案してきたJR高架下道路の拡幅、地形的高低差解消のためのエレベーターの設置、中学校跡地の利活用等の事業が実施される予定である。設立以降、会員数も着実に増加しており、地域コミュニティが希薄な時代の中、東田端まちづくり協議会の活動は持続的に発展しており、今後、東田端をモデルケースとしたまちづくりが広がっていくことを期待する。