「あしたのまち・くらしづくり2011」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
未来を見据えた地域ぐるみの環境活動 |
静岡県掛川市 NPO法人エコロジーアクション桜が丘の会 |
1 これまでの活動内容 (1)活動のスタート 会を発足させた当時は、環境問題はそれほど問題となっていなかった。しかし、近い将来必ず重要な課題となって来ると考えた。そこでこの環境問題を地域ぐるみの活動として取り組むことにした。地域の学校の校舎は、一日中太陽の光が当たっているが、ほとんど利用されていない。校舎の屋上へ太陽光発電のパネルを設置し、環境教育を推進することができないかと考えた。地域の役職ある方々(区長、議員など)へ働きかけて賛同を得た。また、掛川市(教育委員会、環境政策課)とも協議をし、連携できた。 (2)組織つくり 会員には、地域で信頼のある人(区長経験者等)、事務仕事ができる人(行政書士等)、力仕事ができる人などに加わってもらえるように勧誘をした。サポート会員には、地域の中から趣旨に賛同し古紙回収に協力していただける人に加入をお願いした。結果として、地域内から会員30名、サポート会員198名が集まった。 (3)古紙回収 活動の収入源として地域での古紙回収を行なっている。会員の会費、寄付金、出資金等の徴収は一切受け付けていない。回収は、定期回収と月例回収を行なう。 ①定期回収 年2回(3月、7月)サポート会員の協力を得て地域内の全戸(2000世帯)へ呼び掛けて実施する。収益金は、1回平均60万円となる。 ②月例回収 地域の2か所に「エコ桜が丘倉庫」を設置し、地域住民がいつでも古紙を入れられるよう協力を呼び掛けている。回収は、会員及びサポート会員の有志で行なう。また、図書館、県教育センター、保健センターなどの協力施設からも回収を行なう。収益金は、月に10~15万円となる。 (4)太陽光発電所建設 環境教育で最も重視する自然エネルギーとして太陽光発電の普及を考える。地元中学校へ地域住民の力で太陽光発電所を建設した。ここから環境教育を進めている。 太陽光発電所は、10kwで1200万円を必要とした。約2分の1はNEDOと掛川市の補助金を受けて設置した。表示板は、教育的配慮をし、C02削減量や石油削減量などを表示するオリジナルのものを作成した。 建設資金は、古紙回収の収益金を充てる。収益金は年間100万円を予定し、5ヵ年計画で建設する計画を立てた。しかし、予想外に協力体制が整い収益増となり、3年半で借入金を全て返済できた。そこで、地域の小学校2校へ小規模(5kw)の太陽光発電所を建設することにし、古紙回収を継続してきた。 掛川市では、本会の活動を評価し、全小中学校(31校)へ太陽光発電の設置を決め、平成22年10月までに全校に設置され、11月に落成式典を行なった。そこで我々の計画は中止し、これまでの積立金約700万円の使途を現在検討中である。 (5)環境教育 環境教育は、本会の最大の目的であり、小中学校の環境教育だけでなく、広く一般市民へも行なっている。 ①学校における環境教育 太陽光発電を設置した掛川市立桜が丘中学校を中心に「エネルギー資源」「地球温暖化」「生物多様性」等の問題についてわかりやすく授業を行なうほか、「マイバッグ運動」「緑のカーテン」「省エネ・省資源活動」など、実践に結び付く指導を行なってきた。その結果、生徒会でエコ活動に取り組み、「掛川市環境を考える市民の集い」で発表し、その成果が認められ、教育長表彰を受けている。昨年度は全小中学校へ太陽光発電が設置されたため、掛川市の依頼を受け、13校に環境教育を実施してきた。 ②一般市民への講話 市内外の行政や地域団体(生涯学習部、地域活動部など)からの依頼で地域活動や環境活動の実践事例発表や環境についての講話を依頼されて実施している。 ③環境イベント 毎年、桜木、和田岡両地区の文化祭にそれぞれ環境イベントとして参加している。昨年度は、「荒れる竹林」をテーマに地区民と共に考え、竹材を活用する作品作りを行なう。子どもたちは、竹馬、竹トンボ、竹笛などを会員の指導で作成し、遊びに興じた。大人の作品としては、竹骨のテントや屏風、熊手、竹箒など、地区民の中から年配者が技能を披露し、参加者を感心させた。また、竹が林に侵入し樹木が育たないという半面、筍がイノシシに食い荒らされ、竹が育たなくて困っていると、逆の話も出るなど、荒れる竹林について地区民で考えるよい機会となった。このように毎年テーマを決め、地区民と共に環境問題を考える環境イベントが行なわれている。 ④環境講演会 毎年3月には、「環境講演会」を実施している。古紙回収による豊かな財源により講師料を賄うため、比較的知名度のある講師をお願いできるので毎年200名程度の聴衆を集めることができる。会場は、近くの県総合教育センターを借用する。講演会は地区民だけでなく全市民へ参加を呼び掛けている。 (6)太陽光発電を活用する防災訓練 東海地震が心配される中、長期停電が起きた場合の対策として太陽光発電を活用した防災訓練を実施している。訓練は9月1日、12月第1日曜日の年2回、掛川市の防災訓練と、桜が丘中学校の避難訓練と連携を取って行なっている。長期停電を想定した訓練には次の内容を実施している。 ①市と地区内住民との情報交換(パソコン起動、印刷物作成) ②地域住民への情報提供(テレビ、ラジオ設置) ③地域住民への電源提供(携帯電話、電動自転車などの充電) ④その他 2 現在までの成果 (1)マスコミの追い風 活動を始めて以来、「古紙を回収して太陽光発電所を設置するユニークな市民団体」としてマスコミに取り上げられることが多かった。これまで全国紙4回(読売2回、朝日、毎日)、地方紙(静岡、中日その他)には多く取り上げられてきた。また、県内のテレビでは4回放送された。こうしたことは、会員をはじめ協力してくれる地域住民にも励みに繋がってきた。このため、マスコミに取り上げられるような中身の充実した活動を展開するように努力をし、情報をマスコミヘ流すようにしてきた。マスコミに取り上げられるエコ桜が丘の活動は、行政にも信頼され、評価されるようになったと考えられる。 (2)エコ桜が丘の広がり 掛川市では、平成18年度「掛川市地域新エネルギービジョン」を策定し、その中で、エコ桜が丘の活動を評価し、他の市民団体へ同様の取り組みを奨励した。その結果、市内にNPO法人WAKUWAKU西郷が誕生し、西郷小学校へ古紙回収による太陽光発電所を設置した。また、掛川市では、学校へ太陽光発電を設置する市民団体を助けるために環境基金を設け、その資金源となる段ボール等の古紙の提供を企業に呼び掛けた。 (3)掛川市の環境政策 掛川市の環境活動は、「ゴミ減量作戦」「マイバッグ運動」など、全国の環境先進都市として名を馳せている。昨年度、「環境日本一」「福祉活動日本一」「市民活動日本一」を掲げ、いずれも市民ぐるみの活動を働き掛けている。特に「環境日本一」の分野では、「全戸太陽光発電導入」を目指しており、県下ではトップクラスの導入率になっている。また、国の「スクールニューディール構想」を活用し、全小中学校への太陽光発電導入も図られた。それに伴い各小中学校で環境教育の推進が図られている。松井掛川市長は、「こうした掛川市の環境政策は、エコ桜が丘の活動が基礎にある」と多くの場で高く評価してくださる。 3 これからの活動の抱負 (1)平成23年度の活動 ①東日本大震災復興支援廃品回収の実施 被災地支援の募金活動は各地で行なわれている。我々は、市民へ募金でなく古紙の提供を呼び掛け、収益金を義援金に変えて送ることにした。ここでもマスコミ(NHKニュース、静岡、中日、郷土新聞)の力を借り、市民への徹底を図り多くの市民の協力を得ることができた。2週間の活動で収益金は43万1639円となった。エコ桜が丘としての義援金20万円を加え、計63万1639円を日赤掛川支部ヘ寄託した。この活動でも地域の農協、神社、生涯学習振興公社など、古紙回収コンテナの設置場所の提供に協力を得ることができた。 ②地域に根差すモデル防災訓練の実施(計画) 9月1日の防災の日を目指し、太陽光発電を活用した「モデル防災訓練」を行なうことにしている。全小中学校に太陽光発電が設置され、非常用電源が取り付けられた。折角の機能を全ての学校で活用できるように学校・地域へ公開し、東海地震等の大震災に備えるようにしている。 実際には、9月5日に教育委員会の依頼を受け、市内小中学校の教頭が参加する研修会を兼ねて行なった。太陽光発電の活用の他、これまで活用されなかったデジタル無線、避難民用公衆電話の設置、活用なども取り入れ、行政、学校、地域、エコ桜が丘の連携した訓練を行うことができた。参加者も地区内の議員、区長、副市長、教育長など約60名の参加を得て好評を得た。 (2)今後の活動 ①会員の高齢化が進み、若い後継者を会員として誘うことが課題となっている。 ②全小中学校へ太陽光発電が設置され、大きな目標が達成されたため、今後は、身近なところで地区民と密接な環境活動を展開していくことが大事と考えている。 |