「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
防災・福祉を核として地域コミュニティの再構築を |
東京都東久留米市 防災まちづくりの会・東久留米 |
1 東久留米市の概要 *東久留米市の位置=都心から約25キロ離れた武蔵野台地の中央部。 *人口=11万4430人(2012年6月1日)、 *大規模団地が多い=ひばりが丘・東久留米・八幡・滝山・久留米西団地など。 *農家も294戸あり、農地が193ヘクタール残っている。 *工場はコカコーラボトリング、ダイワ精工、山崎パン、宮坂醸造程度で多くはない。 2 活動内容と成果 (1)防災まちづくりの会・東久留米の概要 平成13年の市民大学中期コース“災害に強いまちづくり”の受講生有志14名で平成14年東久留米自主防災研究会を設立。もう少し防災について勉強を続けようというのが趣旨であったが、調べていくと市役所の防災対策に不十分な点が多数あることが判明した。しかしさらに勉強を続けると、市役所が防災を真剣にやっていないのは市民が防災にまったく無関心であるためだとの結論に至った。そこで私たちは市民を対象にした「防災まちづくり学校」の設立を提案し、市民大学主催者の生涯学習課と折衝した。結果、市は予算がないので当会が企画運営まですべてやるならという条件で平成15年「防災まちづくり学校」がスタートすることとなった。平成18年、会の名称は「防災まちづくりの会・東久留米」に変更した。現会員数は72名で、月例会・世話人会を毎月各1回開催して各種打合せ・研修勉強会を行なっている。 (2)防災まちづくり学校 防災まちづくり学校は平成15年スタート以来毎年開催し9年間継続してきたが、現在、今年度第10期の防災まちづくり学校のカリキュラムを検討中。昨年度までの受講生総数は248人で、受講生は個人参加、自治会からの派遣者、市議会議員などである。自治会からの派遣者は受講後も地元自治会で活躍中で、中には地元の経験を話してもらうため防災まちづくり学校の講師をお願いしている人もいる。市議会議員の受講生は自民党から共産党まで累計14名で、市議会では防災に関する質疑が年々増加している。当会がスタートした平成14年には市役所の防災担当は総務課の中に防災担当係長が一人いただけであったが、現在では市民部防災防犯課として課長以下6名在籍している。 講師陣は当初は1~2名の外部講師も招聘していたが、経費節減から現在は原則当会会員が講師を務めている。これにより逆に当会会員や自治会のレベルがより向上する機会になったと考えている。 *昨年の防災まちづくり学校の例:9~12月開催、講座回数12回、受講生30人(定員) 講座内容 第1回 オリエンテーション:地震と防災対策、地震はなぜ起きるか、東久留米市の危険性等 特に動画「衝撃の映像」「耐震補強有無の比較」「阪神大震災の火災」は受講生の関心を高めた。 第2回 耐震補強:必要性・耐震診断・工法・耐震補強実例等 講師は当会と提携している東久留米市建築設計協会の1級建築士。 第3回 家庭内の防災対策:講義と実習(ガラス飛散防止フィルム貼り、あかりづくり) これらの実習は丁寧な指導で好評、受講生同士の懇親にも役立った。 第4回 立川防災館見学:震度7体験、煙体験、応急救護訓練、消火訓練等 震度7体験はこの立川防災館か本所防災館でのみ体験可能。 第5回 地震だ!あなたならどうする:大地震発生後のケース別・時系列毎のイメージトレーニング このほかに、繁華街、地下街、高層ビル、エレベーター内などの対応トレーニングも行なう。 第6回 地域の自主防災・自治会活動に学ぶ:自主防災組織立ち上げ報告、自主防災組織活動報告 地元自治会で実際に活躍中の当会会員が講師。 第7回 東久留米市地域防災計画:東久留米市防災防犯課長による講演とグループ討論 講演のあと、受講者を4グループに分けた討論とその発表がスタートする。 第8回 救急救護の講義と実習:東久留米消防署で心肺蘇生法・AED・止血法・消防署見学 立川防災館ではAEDの訓練がないため東久留米消防署の協力で実施。 第9回 災害時要援護者対策:国・都の対策、市の計画と実態、グループ討論 実態が確立されていない分野のためグループ討論で受講生も活性化されている。 第10回 市内防災関連部署の見学:浄水場・仮設住宅用地・避難所・備蓄倉庫・防災井戸・危険地域等 これら防災関連部署の見学は普段見る機会がないので受講生に好評。 第11回 避難所の開設・運営:東久留米市と他市の事例、グループ討論 これも実態が確立されていない分野でグループ討論で受講生から活発な意見が出る。 第12回 総合討論・修了式:テーマ「自治会活性化、災害時要援護者対策」グループ討論 グループ討論のあと、修了証交付。4回のグループ討論では受講者同志の理解を深めるだけでなく、防災学校を通じて市内の新しい友人関係、自治会の協力関係が醸成される。 このような学校をわれわれ民間のボランティア団体が企画運営している例は少ないと思われる。しかし防災まちづくり学校の企画運営はわれわれが独自に開発したわけではない。当初この学校設立を企画した折、国分寺市主催の防災まちづくり学校に当会会員2名が域外留学させて頂いたり、初期の学校の講師には「東京いのちのポータルサイト」のメンバーにお願いしてご指導頂いたお蔭である。 (3)防災出前講座 防災出前講座の目的は、①市民の防災意識を高める、②自治会のない地域では防災を中心に自治会をつくる、③自治会が自主防災組織を立ち上げる、④自主防災組織が防災訓練を実施する等である。 そのために当会では以下の出前講座メニューを用意してある。 *出前講座メニュー 防災講話:地震はなぜ起こる、大地震の切迫性、首都直下地震に備える、その時東久留米市は?家庭の防災対策、地震だ!その時どうする、自主防災組織を立ち上げるには、自治会合同の防災訓練、避難所の開設運営、避難所練馬区世田谷区の例等 防災実習:手づくりランプ、ガラス飛散防止フィルム貼り、防災マップづくり、紙ぶるる等 *昨年度出前講座一覧 昨年は東日本大震災の影響で防災出前講座の要請が増加した。従来出前講座先は市内の自治会等が中心であったが、昨年の例ではそれ以外の市教育委員会夏期研修、社協市民スタッフ養成講座、国際友好クラブ(半数が外国人)、市内の各種団体等の新規出前先が増え、出前講座回数は30回であった。
(4)世代を引き継ぐ防災教育 市立第五小学校4年生の総合学習の時間で地震・防災の基礎知識を教えたあと、家具の固定、学校登下校の防災マップづくり、あかりづくり等多数の防災研究テーマを出す。子どもたちはチームを組んでそのなかからテーマを選択して冬休み等を利用して研究し、その成果を学校公開日に発表する。発表形態は4年生が3年生に教える方法である。翌年はこの3年生が4年生になって新3年生に教えるという仕組みで5年間継続した。今年は6年目を予定中。教える立場の4年生は一生懸命勉強し、グラフやクイズを採用するなど発表方法まで工夫している。3年生も来年は自分たちがやるのだと真剣に質問やノートをしている。近隣自治会や保護者の質問・指導まで飛び出す風景も見られる。 (5)イベントサポーター 市内で開催される種々の防災イベントにはその都度要請を受けて協力・協働をしている。 *東久留米市社会福祉協議会主催の防災関係イベント ・防災情報交換サロン:年数回開催のこのイベントではグループ討論の進行役を当会が行なう。昨年度のテーマは災害時要援護者、避難所運営シミュレーション等 ・災害ボランティアセンター市民スタッフ養成講座:昨年度は講話「市民防災の動きを知る」、ボラセン立ち上げ訓練、災害時要援護者の理解・傾聴、避難所体験宿泊訓練等をサポート。 ・つながっぺ福島:被災地支援イベントにボランティアとして協力:福島美味しいもの物産直売他 *東久留米市主催イベント ・久留米西団地防災訓練:災害時要援護者避難訓練 ・東久留米市総合防災訓練:防災グッズ展示協力 ・西中防災訓練:体育館での避難所訓練のための仕切り展示の設営と説明協力 (6)防災かわら版発行 A4裏表で月1回発行。平成14年7月発行スタート、今月6月の防災かわら版が120号で、発行10年経過で毎月欠かさず発行してきた。配付先は会員72名の他に市役所関係者、消防署、社会福祉協議会向けに55部、合計配付総数127部/月。市役所、消防署、社会福祉協議会も含め原則会員が担当を決めて手渡ししている。これは発行スタート以来続けておりコスト削減のためだけでなく、個別のコミュニケーションを大切にしているのが大きな理由である。 1ページ目が当会の活動と新聞の防災記事の紹介。新聞の防災記事の紹介は会員が見落としがちでかつ当会の活動に参考になると思われる東京23区や近隣市の小さな防災記事が中心。2ページ目は月例会の議事録で欠席会員のためであるが市役所、消防署、社会福祉協議会にも当会の活動や、討議をオープンにして理解していただくことを目的としている。 3 私たちの考え方 *自治体と市民の防災意識は車の両輪 自治体の防災が進んでいるかどうかは自治体の考え方や予算だけでは決まりません。市民の防災意識がしっかりしていることが必要で、自治体と市民の防災意識は車の両輪の関係にあると考えます。そして防災はまちづくり、コミュニティづくりなしには防災対策は達成できないと考えます。 *地域コミュニティの再構築 現代は急激な都市化によりコミュニティが失われてきています。私たちは、防災こそコミュニティ再構築には最適のテーマと考えます。そして防災・福祉・環境を核としたまちづくりこそ地域コミュニティの再構築につながると思います。そのためには市民と行政の協働が必要です。 *市民団体と行政の協働 行政は公平性、条例化等に束縛されるため急激な時代変革に素早く対応するのが不得意です。一方市民は少子化、高齢化、情報革命等時代の変革に敏感です。そこで行政の不得意な分野を補うのが市民団体との協働であると考えます。この協働を視点に市民が持つ知恵と能力と時間を活用し、コミュニティづくりを支援することが小さな予算で豊かな地域社会を目指す地方自治体の役目と考えます。従い地方自治体には市民団体との協働を開発する姿勢が必要と考えます。 一方、市民・市民団体も地方自治体との協働により今度は自己実現のために、そしてコミュニティのために生き生きと活動することができるというわけです。 |