「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域の特産品開発の立山おやきをつくる
富山県富山市 立山山麓生活学校
はじめに
 私たちの立山山麓生活学校は、立山アルペンルートの玄関口である立山山麓に位置し、傍には立山山麓スキー場があります。
 立山山麓スキー場は昭和39年に開設されました。スキーが冬季スポーツの花形として、あらゆる年齢に浸透していくとともに、県内外から多くの利用客が訪れるようになりました。中学校のスキー修学旅行や企業、スキークラブ、家族など、多方面からの予約が殺到し、予約受付は1年前から入る程非常に賑わっておりました。そして本県で昭和51年に冬季国体が開催、そして2000年国体が開催されて県全体が大きく飛躍する年となりました。
 しかし、その後レジャーの多様化や少子高齢化などで、スキー人口は減少傾向をたどっていきます。その結果、次第にゲレンデは寂しくなり、スキー客をお客様の主体としていた周辺の宿泊施設は経営が圧迫され、廃業される施設も出てまいりました。経営が厳しい宿泊施設関連では若者が希望を見いだせず、他業種へ職を求めていくようになり、自然豊かな美しい山麓が取り残されていく、そんな危機感を抱くようになりました。

地域の特性を活かして特産品の開発を
 好景気でスキー場が賑わっていた頃は、ファストフードに代表される大量生産・高速型のライフスタイルでした。しかし、近年、有機農産物や地元産の農産物が奨励される地産地消や沈着型でゆっくりした生活様式を唱えるスローライフという言葉が広まっています。現代社会から取り残された感のある立山山麓。しかし、時間が停止した地域だからこそ、発信できるものがあるのではないか・・・そうです、「スローフード」です。
 標高500メートルから1000メートルにある立山山麓は、雪融けの春より芽吹く山菜の宝庫です。その豊富な山菜と、立山山麓に中でも特に粟巣野地区で栽培される高原野菜を利用して、田舎ならではのヘルシーな「おやき」を作ってはどうかと考えたのです。まずは勉強することからと、先進地である長野県白馬村、小川の庄、坂井村、鬼無里村、県内では、五箇山、庄川方面へ視察に行きました。バスをチャーターしていただくなど、大山行政センター、地元商工会、大山観光協会の方々には大変お世話になりました。
 現在でも視察は欠かすことなく行っておりますが、その間、親しいホテルのコック長に相談させていただき、おやきを作る、そして学ぶの繰り返しと試行錯誤の連続で、少しずつ「立山おやき」の姿が見えてまいりました。
 そして、今、立山山麓のおやきの味はこれです!と皆さんに言えるようになりました。

高齢者の皆さんにいつも笑顔でいて欲しい
 立山おやきメンバーはすべて70歳以上の高齢者です。材料はすべて新鮮な地場物、そして人も新鮮ではありませんが、すべて地場物なのです。はじめに、の部分で触れましたが、この地域から若者がどんどんいなくなっていくことは、非常に寂しいことでした。
 しかし、今やこの立山おやきを、「教えて欲しい、一緒に協力したい」と申し出てくれる方々のほとんどは若い方々です。立山山麓の高齢者の力が若い力を吸い寄せているのです。100%手作りの立山おやきの製造現場は、高齢者の皆さんの笑い声が絶えないとても素敵な場所です。

立山おやきを市場に出すためには専門知識が必要
 立山おやきを市場に出すための専門知識を取得するために、富山県特産品アドバイザーの派遣を受けたり、特産品企画、食品流通、商品登録などの専門講師による講義を受けたりしました。また、富山市保健所の認可を取るための準備、中小企業育成支援講座の受講と、味ばかりに気を取られていましたので、この「市場に出すための専門知識」という部分は非常に大変だったと記憶しています。
 富山市大山行政センターでイベント会場などでアピールするための半被や幟を作っていただくなどして徐々に販売形式も固まり、売上も軌道に乗ってまいりました。

田舎の味が循環型社会のリズムに乗って京都へ
 京都府久世郡久御山町の塚本議員が、富山市松浦町にある富山グリーンフードリサイクル(株)製のたい肥「メタちゃん有機」は有機性廃棄物を完全にリサイクルした特殊肥料で、剪定枝と生ゴミ発酵液から作られており、循環型社会を推進していると大変推奨され、富山グリーンフードリサイクル(株)の視察に来県されました。
 当時久御山町は、都市近郊における露地栽培とハウス栽培の中で軟弱野菜の優良ないちだい生産地でありますが、農産物の「京の野菜」より一層ブランド化を推進している、グループ名【久御山・ゆうき・げんき・しょうじき農業研究会】の会員は、赤ちゃんが食しても安全・安心を旗印とした化学肥料を使わない野菜を育成することで、有機肥料(環境循環型)の減農薬栽培を目指しておられます。
 このグループ(農業研究会)のコンセプトと立山おやきのポリシー自然の恵みの融合が合いまって富山県産の「山菜」「高原有機肥料栽培野菜」と京都府久御山産の京のやさいの「有機肥料栽培」と富山のコラボレーションとなり、双方の野菜や素材をふんだんに使った富山は「立山おやき」とし、京都は「久御山薬膳おやき」の名称で製造委託及び販売するという話がとんとん拍子でまとまりました。
 平成22年4月に、久御山町のまちの駅(クロスピア)くみやまのオープン記念日に出展参加させていただき、京都新聞やローカル氏洛南タイムス、城南新報にも掲載されました。
 また平成22年から、久御山町立3小学校の食育で久御山産の野菜を使用した地産地消の観点から、給食の副食素材として年間4回採用されました。

地域の学校へ出張交流会
 地元小見小学校で「地域との交流会」の時間に4、5、6年生を対象におやき作りの体験教室を開かせていただきました。学校の裏山に沢山自生する「ウワバミソウ」(ヨシナ)を子どもたちが予め採取してくれており、それを具材の一部として使用する実習です。我生活学校のメンバーも子どもたちに寄り添い、色々とお手伝いしました。
 ファストフードをよく食べている若い世代にスローフードを知っていただく良い機会でした。出来上がったおやきは給食時間に生徒の皆さんと共にいただいてまいりました。子どもたちが美味しいと喜んで食べてくれる姿は、私たちをまた元気にさせてくれる力となりました。

大型イベントに参加
 私たち生活学校のメンバーは「元気な年金受給者」であるため、この活動のボランティア的作業には喜びを感じています。立山おやきが地域の持産品になるまではとの、熱心な思いを持ち、年間40回以上のイベント参加をしています。
 主なイベント名としては、サンフォルテフェスティバル、食の王国、とやま環境フェア、ごんべい祭、佐々成正祭、開運祭、ひまわり音楽祭、JA農林漁業祭、ゴンドラ開き、山菜祭、冬のカーニバルなどです。

今後の課題と展望
 10年間の試行錯誤で立山おやきはある程度の認知もされ、販売経路もできました。しかし、企業の製品とまでは至っておりません。
 田舎のおやきが大都会へ飛び出すためには、さらなるアピールで販路を増やすことが大切であり、それに伴う生産能力の向上も必要になってきます。今後も、味へのこだわりとともに、上記の懸案も解決していきたいと思っております。

立山山麓生活学校として
 このように、地域おこしへの意欲を育ててくださったのは、あすの富山県を創る協議会、富山県生活学校連絡協議会のおかげと心より感謝いたしております。
 立山おやきが、立山山麓に限らず、富山県全域に伝わり、皆さんに愛されるよう、その伝承に努めてまいりたいと思います。