「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

世代間・地域間でつながる環境保全活動が町おこしへ
熊本県八代市 次世代のためにがんばろう会
 多くの人々に対する環境配慮意識の啓発を図るためには「人の意識改革・人づくり」が大切だと考える。このことを原点にして、私が代表を務めている団体を紹介したい。
 熊本県八代市、2001年設立・市民団体「次世代のためにがんばろ会」。この会のコンセプトは、“Think globally, Act Locally”である。そしてこの会のメインイベントは、汚染の激しい河川に牡蠣の殻を投与する河川浄化活動“かき殻祭り”である。参加者の半数は高校生であり、9回目を迎えた今年は、地域を繋ぎ、老若男女共の世代間交流の町おこしイベントになって来つつある。
 この会の他の活動としては、次世代の子どもたちへ「環境教育」「命の教育」=「もったいない教育」の場を設けるべきと考え、教育委員会の依頼で、環境出前授業(体験型自然学習教育)を行ない、近年は市内を始め、市外までエリアを広げて行なっている。
 またインターネット上では、様々な領域とネットワークを横断し、環境団体と行政を結ぶ相談なども受け、共同体制を作っている。
 環境啓発活動、とりわけこの活動は一般的には難しく捉える人が多く、話題からも引いてしまわれる人が多い傾向にあるようだ。その上、このような環境啓発活動をしている大抵の団体が同じように頭を悩ませていると思われる課題は、異業種・世代間の交流活動ができる動員(人集め)だ。と普通は考えられている。
 ところが、そうでもない。環境啓発活動に付き物の3K(きつい、汚い、危険)を伴う大変な活動が多い中、我が仕事を忘れてしまうほど3Kが楽しくて、たくさんの人が集まる活動がある。
 とりわけ私の携わっている団体の周りでは、たくさんの団体が繋がって、みんなが一緒に3K活動を進めている。それがどんな仕組みかをご説明する。
 まず一つ目に、各団体が「もやい」の活動を進めていることである。もやいとは、「共同で何かをやり遂げる。とか、互いに助け合う」という意味がある。
 誰かが活動をする時に、もちろんお金が発生せずに助け合う活動である。宇宙の中で惑星群は太陽を中心に動いているように、前記のもやいの団体の活動で、“中心”的場所に活動主役団体(太陽)がいて、その回りにたくさんの団体(惑星群)を始め、学者(大学・高専・高校)の先生方・行政(国・県・市等)・企業・市民が取り囲むように中心(太陽)の活動を支えている。
 私はこの繋がる活動体を「もやいの宇宙やつしろ」と名付けている。
 「もやいの宇宙やつしろ」の具体的な運営方法は、
(1)各団体がイベントを計画・進行する際に、回りの団体や参加希望の方にメールなどで周知し、各団体のメンバーも実行委員会のメンバーとなる。
(2)会議から進行・イベントの紹介・動因まで各団体が一緒に進める。
(3)もちろん、当日のイベントもその会のメンバーと間違えるほど、各団体のメンバーが一生懸命に手伝う。
(4)主役の会のイベントが終了したら、次は周りで支えているいずれかの団体が、何かのイベントをしたいとメールなどで呼びかける。
(5)今度は呼びかけをした団体や個人が中心的太陽の場所と入れ替わり主人公になる。
(6)今まで太陽の場所にいた団体は、周囲の惑星の位置に並び、そして中心活動を支える。
 という具合である。ここで大事なことは、直前までお世話になった感謝の気持ちを忘れず、もやいの心で中心の太陽の活動に恩返しをするのである。
 現在は、このように会の周りで支える団体が多くなり、「もやいの宇宙やつしろ」の共同体制が大車輪で動いている。もやいの仲間が手を繋ぎ、地域環境保全を作り上げていくことで、その繋がりが“故郷”を繋ぐ素晴らしい町おこしの発起点になることであろうと考える。それはまさに私の活動目的「地域間・世代間交流活動の町おこしイベントで地域の環境を守りたい」である。
 私は、これまで活動を進める中で知り合った方々に学んだことは、計画性、思考力、協調性、行動力であり、それらを貴重な宝物として現在の活動に活かしている。
 このことを踏まえ、地域での環境啓発を行なうことの私流ポイントをまとめ、多くの人々に対する環境配慮意識の啓発を図るためには、この八つのポイントが必要だと提言したい。
(1)地域の力の協調性を生かして、みんなが「主役」であること。人と人との繋がりを地域の繋がりにして広げて行く。
(2)会員はもちろん、他の団体との細やかな連絡と配慮、そして感謝の心を忘れないこと。
(3)メンバーの得意分野を任せ、責任を持たせること。このことは代表者にとって責任重大ではあるが、各個人を信頼して任せることで、それぞれの個性が発揮でき、場数を踏むことで、人として育つ。
(4)年々マンネリ化していく活動を、いつも発展させ、ワクワクする企画を行なうこと。
(5)情報発信を常に行ない、また情報収集かつ日々勉強する。その際に自分(会)のこともアピールすることも大事だが、他の協力団体もアピールしあうことが大事。=共栄できる。
(6)官・民・学・企業連携が大切である。行政と学識経験者の意見を聞き、世の中の動きを常に観察すること。
(7)世代間交流をしながら若い世代を育てていく。また、若者を巻き込んだ企画・実行を進めることは、地域の後継者育成にもなる。
(8)結果を重視するのではなく、それまでのプロセスと繋がりを大切にすること。反省点も次へ活かす。
 これらの条件は、成果を生むポイントとして、私の10年間の体験活動から見える全てである。「継続は力なり」とあるように、これらのことを地道に頑張っていくと、周りの人は必ず認めてくれ、楽しく参加してくれる活動になるであろう。要は人の意識改革、人づくりである。
 昨年、このような繋がる団体と共に今まで会の活動で会員となった若者たちが実行委員となり、「青少年環境フォーラム」を開催したが、企画運営から本番まで恙なく運営することができた。また参加者も日本全国から、また市内の高校生を巻き込んで1200人以上の集大成となるフォーラムになった。
 手前味噌ではあるが、この企画を考え、青少年を前面に実行委員会を発足させ、最後まで準備周到で実施することができたと思う。その陰には、今まで当会の活動に参加いただいた官・学・民・産の繋がる共同体制の輪があったからこそだと痛感した。当初計画時から企画内容も、動員数・ボランティアスタッフ・出演者や参加者・スタッフの様々な職種・年齢の幅も広がり、予算的には困難な状況にはなったが、ボランティアで参加された方々ももちろん、当会員にとっては、心の豊かさを相当得られたと思う。
 10年間の節目として大きな目標として進めた甲斐があり、青少年の実行委員会組織が運営し、彼らと共に進めてきた会員も、世代の交流と年齢的体験指導を元に、まさに青少年育成が成功した企画だった。10年間の様々な苦労を忘れ、ともに河川清掃や実験を進めてきた青少年らが、社会人としても活動を維持していくメンバーの存在もその結果であろう。
 これからも「大人」として今、次世代のためにやるべきことを実践して行く! それが私たちの会「次世代のためにがんばろ会」である。