「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
地域の文化といわれる方言を語り残す |
宮城県名取市 方言を語り残そう会 |
情報化時代の中で子どもたちが話すのはほとんどが標準語です。各家庭においても「おじいちゃん、おばあちゃんの言葉は分からない」とよく耳にします。さらに核家族化が進み、方言が忘れ去られようとしています。私たちが当たり前に使ってきた生まれた土地の言葉が、このままでは消えてしまうような気がしてなりません。今のうちに方言を記録にとどめ、家族や地域の中でも子どもや孫に語りかけ、方言の持つ魅力を伝えることが大切だと思います。 「方言は無形の祖先からの遺産である」との想いから、方言を語り残そう会を設立いたしました。 『方言は無形の財産』 方言は、その地方に古くから自然な形で語り継がれた温かいぬくもりです。どんなに時代が変わっても、長くふるさとを離れていても、耳にしたら誰しもが懐かしく心が温かくなる魔法の言葉なのです。目には見えなくても必ず心に残っていて人を優しく癒してくれる。それが生まれた土地の方言です。同時に昔の風習や遊びも伝えてくれるのです。古きが蘇えり新しい時代に生かされていく大事な役割を持っています。 私たちは自分の生まれた土地や地域のすばらしさを、いつまでも大切に後世に伝え残していきたいと強く願っています。 そして、先人たちの無形の財産を『形』として残すには、方言という言葉を『文字』として記録することが肝心です。 方言を語り残そう会では、ばあちゃんのひざで聞いた懐かしい声と温かい響きを形として残していくことを務めとし、これからも笑顔で仲間と共に一歩ずつ歩んでいきたいと思います。 千年に一度と言われる未曾有の災害から2年が過ぎました。避難所や仮設住宅でのボランティアを通して、被災された皆さまの声をそのまま文字として残したいとの思いから、震災当時のありのままの気持ちや心の声を綴った、震災五七五の句集『負げねっちゃ』と、これからを前向きに力強く生きていくために、日々の暮らしや今の気持ちを思いのままに詠んだ、詩集『生ぎるっちゃ』、この二つを作成いたしました。思いを吐き出すことでふるさとの復興はもちろんのこと、自分の心の復興にもなっていただければ幸いです。 また、震災の3日前に小学校で完成披露した『名取方言かるた』も、避難所で過ごす皆さまになつかしい響きを届けることができました。このかるたは、名取市内の高齢者の方から寄せられたもので、多くの方の心を温めました。 私たち方言を語り残そう会は、震災直後から仮設住宅で月1回のボランティアをさせていただいておりますが、歌や民話の語り、紙芝居やゲーム、茶話会などで皆さんと楽しい時間を過ごしています。元気を与えるつもりが、皆さんからパワーをいただいています。参加してくださる皆さんは、いつもいい笑顔で笑ってくれるので本当に嬉しい限りです。 名取市は閑上地区と下増田地区が津波で甚大な被害を受け、愛すべきふるさとの姿は一変してしまいました。住み慣れた我がふるさとが一瞬で消えてしまったこの現実を、どう信じればよかったのでしょうか。その傷ついた心を徐々に癒したのは、ふだん何気なくしゃべっていた地域の言葉でした。それは人に安心を与え、自分たちに仲間がいることを感じさせてくれました。一人ではないことを気づかせてくれたのです。方言には、その土地の温かい人情が流れており、失ったふるさとを方言の中に感じているからなのだと思います。生まれた土地の大事な方言は、そこに生きる人たちがいる限り語り継がれていきます。 そして私たちが続けていく活動の中に、名取に語り継がれた昔話を方言化した『名取ざっと昔』があります。標準語の語りにふるさとの匂いを吹き込み、深みのある民話となりました。 今後も、地域の文化を守りながら大切な方言を語り残していくつもりです。 そして、この大震災を風化させないように、機会あるごとに後世に語り伝えて参ります。 平均年齢71歳、まだまだ現役!一人ひとりの役割があり、自分自身イキイキと生きていくためにも会員一同力を合わせて活動していく所存です。
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