「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

“農村環境保全活動から協働のまちづくり”へ
栃木県那須塩原市 三区町環境保全隊
 活動をはじめたきっかけとしては、三区町でも、約40年程前から新興住宅の急激な増加により混住化が進み、それまでの純農村地帯(農家数110戸)から、現在は約750戸の85%が非農家で、ゴミの不法投棄や人と人とのつながりが希薄になり、伝統的行事もなくなる等の問題もあります。このようなことから、これからの農村社会の大きな課題の一つである、「人と人とのつながりをどう構築していくか」を大きなテーマとして、農業者と非農業者が一体となった地域づくりを目指して活動をスタートしました。
 平成20年度に、「未来永劫」地域の合言葉となるようにとの思いで、地域住民150名の投票により、「好きです!那須疏水と緑豊かな郷・三区町」「守ります!那須の大地と清らかな疏水」の二つを決め、地域内の様々な広報誌等にも常に掲載し周知を図っています。
 活動に取り組むにあたっては、老若男女できるだけ多くの地域住民が参加できるバランスの取れた企画を立て、日本三大疏水の一つである那須疏水の歴史や農業用水路の役割の理解促進と都市住民との交流を図る田園ウォーク、子供会との連携による農業体験や生きもの調査と那須疏水の施設見学、遊休農地や水路・農道周辺への植栽、そして命の大切さを学ぶためのビオトープの整備や出前授業の実施による学校との連携、さらには、大切な「命の水」である那須疏水の流れる農業用水路内外の草刈や清掃活動には、農業者と非農業者が一緒になって活動を行なう等、平成24年度の延べ参加人数は約2300人、延べ活動時間は約3700時間で、平成19年度の活動開始時の約1.5倍、特に子どもの参加者は293人で約2.5倍となっています。
 また、平成20年度からの県内外からの視察研修受け入れ組織は37団体(746人)で、様々な意見交換を行なうことにより、活動のレベルアップを図っています。
 こうした取り組みの成果として、各種コンクールでも受賞することができ、地域住民の“やる気”と“自信”につながると同時に、これまでの活動により、「人と人とのつながりが強くなった」「ゴミが少なくなった」「花が咲いてキレイになった」「那須疏水の多面的な用途について理解ができた」「農業の大切さがわかった」、そして、都市住民との交流を図ることを目的の一つとして開催している田園ウォークは、地域外からの参加者が年々増加し、平成25年度は76名の参加があり、地域住民との交流を図ることができました。
 さらに、この素晴らしい活動を継続し、「大切な生産資源と農村環境」を次世代に継承することを検討する運営委員会を、平成21年4月に立ち上げ、様々な課題について協議を重ねると同時に、地域住民321名を対象に実施したアンケート(平成22年3月実施)の結果等を総合的に判断し、平成24年1月25日に「NPO法人三区町地域資源・環境保全会」を設立、三区町環境保全隊ではできない、歴史的施設の保全活動や自治会との連携による高齢者への鉢植えの花のプレゼント、地区内公園への水仙等の球根(4000球)の植付け、地区内秋祭りでのイベント等の取り組みを行なっています。
 また、活動を広くアピールするために、平成21年10月に「三区町環境保全隊のホームぺージ」を開設、平成23年に2月には「NPO法人三区町地域資源・環境保全会のホームぺージ」も開設し広く発信しています。
 今後の目指す活動としては、農村における最大の課題は、「地域の農業、農村環境を誰が担い、守っていくのか」「農業者と非農業者の“人と人とのつながり”をどう構築するか」であると考えています。
 この大きな課題を少しでも解決するため、「将来展望を実現するために取り組む具体的方策」として以下の取り組みを行なっているところです。
①増えつつある生き物の保護と生息できる環境づくりのため、地域の子供会育成会や小学校などと連携した生きもの調査や農業体験を通して、農業と農村環境のかかわりによる「命の大切さ」を学ぶ活動を実施していきます。
②農村における最大の課題である「地域の農業、農村環境を誰が担い、守っていくのか」について協議するため立ち上げた「30代~40代の若者の会」を中心に、「将来に向けての仲間づくり」「地域活動への積極的参加」「若者の発想による新しい企画と行動の展開」を活動の三本柱として、地域農業と地域づくりのリーダーとなる人材を育成します。
③女性の感性は、地域活動の活性化において重要な役割を果たしており、この力をさらに発揮するために20名のメンバーで立ち上げた「三区女性の集い」により、重点課題である「女性の後継者育成」と様々な活動に取り組んでいきます。
④農村の自然景観を維持しながら、「“地域の和”で、美しい花咲く地域づくり」を引き続き推進するために、農道・水路沿いにマリーゴールドを植栽すると同時に、将来の景観も考慮した「スイセン」等の多年生植物の植栽を積極的に実施しています。
 特に農業用水路沿い(約2キロメートル)には、昨年11月に約9000個の水仙ロードが完成したので、新たな目標を設定します。
⑤恒例となった“那須疏水&田園ウォークin三区”の継続実施により、都市住民との交流をさらに推進し、そのための具体的取り組みとして自らのホームページと公共機関も含めた可能な限りの広報媒体を積極的に活用し、参加者の増加を考えていきます。
⑥地域からの“ゴミゼロ”を目的に、三区町自治会、三区町環境保全隊、特定非営利活動法人三区町地域資源・環境保全会、地域内企業各社との連携により、平成25年度から活動を開始した「YHS運動」を定着させ、きれいな地域づくりを推進します。

 共同活動を将来にわたって行なうための確固たる体制として設立した「特定非営利活動法人三区町地域資源・環境保全会」の活動方針“豊かな自然と共に笑顔で歩む 一人一人が主役の明るい地域づくり”の実現に向けて、一歩一歩着実に、そして幅広い活動を展開します。