「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
自然の恵みを生かし、楽しむ、おちばの里づくり |
静岡県湖西市 湖西フロンティア倶楽部 |
1.はじめに 「自然の恵みを生かし、楽しむ、おちばの里づくり」をしたいという願いをもちながら、平成4年4月に発足した「湖西フロンティア倶楽部」は、会社員、自営業、公務員など、様々な立場の人が集まった会員30人の小さな団体である。発足から現在までの21年間、地域福祉の推進、地域の自然保護や文化の継承、青少年リーダーの育成等の活動に取り組みながら、各種団体と連携し、ふれあいを楽しむ地域づくりに取り組んできた。 2.活動内容と成果 (1)湖西親子体験教室(平成13年度~平成24年度・平成25年度実施中) 親子のふれあいや保護者が子どもと向き合うことが少なくなっているのではないかという会員からの提案で、自然のよさを知ったり自然の中での家族のふれあいの大切さを実感したりすることを目的として取り組んでいる「湖西親子体験教室」は、多くの家族に参加していただき、大変よい体験活動となっている。 地域の自然と親しみながら、家族のふれあいを深めるイベントして、年間4回の教室を実施しながら、講座を行ないながら、親子がふれあいながら心を通わせる場をつくるとともに、保護者にも積極的に運営に参加していただけるようにしている。こうすることによって、保護者が積極的に活動に参加するようになり、親のたくましさや大きさを子どもたちは実感するようになった。そのためか、連続して参加する親子が多くなってきている。平成24年度の参加家族数は、第1回33家族・102名、第2回23家族・68名、第3回24家族・71名、第4回25家族・79名となっており、この活動のよさを実感している。さらに、参加しやすいように参加費を低くするように努力したことも参加者の増加につながっている。 昨年度は、1回目に1泊2日で「親子エコキャンプ」を行なった。豊かな自然の残る今川を拠点に、水生生物の観察を行なったり、森遊びを体験したりして、親子が自然の中で互いに向き合いながら、親子の絆を深めていくことができた。また、ごみや飲料水をできる限り少なくするエコキャンプにも取り組んだ。他の家族と交流することによって、家族のよさを実感することもできた。2回目は、「親子で浜名湖の自然を知ろう」というテーマで、浜名湖の豊かな自然を知ることによって、そのよさを実感し、自然保護への意識を高めることができた。3回目は、「親子で自然観察をしよう」というテーマで、植物観察会や落ち葉・木の実を拾って作品作りをするなど、身近な自然のおもしろさや不思議さを親子で体験することができた。4回目は、森づくりで出たコナラやクヌギの間伐材を利用して、シイタケのホダ木づくりを行なった。里山での自然との共存を親子で体験することができた。 (2)おちばの里とうげ祭り(平成6年度~平成24年度・平成25年度実施予定) 本年度で、20回を迎えるイベントで、湖西市立知波田小学校から旧豊川道を通って、大知波廃寺跡までの往復約10キロメートルのハイキングである。このイベントは、湖西市の豊かな自然や文化財である「大知波峠廃寺跡」を広く市民に知っていただくことを目的に実施している。標高約400メートルの山頂から浜名湖が一望でき、さらに遠く太平洋を望む景色は雄大そのものである。毎回、市内外より300人前後の参加者がある。だれもが参加できることをめざして、安心安全なイベントとなるように準備をしている。 また、参加された方が楽しめるようにクイズラリーをしたり、山頂でアサリ汁を無料で配ったりと様々な工夫もしている。山頂では、廃寺跡の説明会、大声コンテスト、俳句コンテスト、写真コンテストなどを実施し、麓ではクラフトや手作りそばなどにも取り組んでいる。 (3)静岡県青少年指導者養成事業(平成5年度~平成24年度・平成25年度実施中) 次代を担う青少年に、豊かな自然と親しみながら、地域を活性化するリーダーとしての資質を高めてもらおうという願いをもって実施している事業である。県教育委員会の認定事業として毎年実施し、多くの指導者を養成している。平成24年度までの「湖西青少年指導者養成研修会修了者数及び級別認定・修了者数」は253人となっている。 (4)今川こども自然クラブ(平成19年度~平成24年度・平成25年度実施中) 次代を担う子どもたちに、豊かな自然と親しみながら、自然を守る意識を高めてもらおうという願いをもって実施している事業である。このクラブは、湖西市の北部を流れる今川を中心に活動をしている。その川に、ホタルがたくさん飛ぶように、平成19年度から活動を始め、6年が過ぎた。ホタルがたくさん見られるようになるためには、ホタルだけではなく、自然全体を守っていかなくてはいけないので、森林や川の環境を守る活動や水質調査、生物観察なども行なっている。 メンバーは、平成25年度は小学生18人、中学生2人、高校生2人の22人である。今川にたくさんのゲンジボタルが飛び交うように、月に1回の活動をしている。クラブ員の努力によって、5月下旬から7月の初めまでホタルが観賞でき、2回実施したホタル観賞会には250人を超える参加者があった。子どもからお年寄りまで安全に、しかもホタルを手に取ってみられるところが他では見られない特色となっているため、車いすに乗られた方や障がいを持った方までが観賞に訪れている。また、市外・県外から来られている方も多数いらっしゃる。 (5)自然保護保全活動(平成6年度~平成24年度・平成25年度実施中) 湖西市の北部を流れる今川には、準絶滅危惧種のナガレホトケドジョウ、要注目種のカワムツ、カワヨシノボリ、周辺には絶滅危惧IB類のトキワマンサク、ササユリ、エビネ、シュンラン、県の鳥サンコウチョウも飛来するなど、希少種が数多く見られる。また、季節によって移動するアサギマダラの通過点であり、一部は越冬する場所でもある。しかし、周辺の森林は、人の手が入らなくなっているため荒廃し始めている。湖西市内に残された豊かな自然環境であることから、その保護保全は重要である。今川周辺の動植物の保護保全活動を進めながら、現在取り組んでいる清流にホタルが飛び交う川を取り戻す活動や不動谷の森再生プロジェクトをさらに発展させ、企業や行政、地域の方々と協働しながら、動植物の調査活動や、川の清掃活動、自然観察会などを実施し、自然豊かな今川周辺の動植物の保護保全に取り組んでいる。さらに、市民に広く自然保護・保全の大切さも啓発している。特に、地元企業、森林管理所、湖西市との協働による森づくりは、市内初めての取り組みとして注目をされている。また、小さな親切静岡県本部や湖西市、他団体との協働による活動も行なっている。 (6)おちばの里親水公園(不動谷の森)周辺の整備(平成17年度~平成25年度実施中) 自然を生かす里山の取り組みを行なうエリアとして整備を行なってきた。湖西市の豊かな自然を保護保全していくことを目的とした取り組みが、おちばの里親水公園づくりに大きく貢献し、その周辺の整備にも広げていくことができている。さらに、公園整備と、広く市内外からお越しいただくためのイベント等に取り組むことで、公園を利用していただく方が増えている。自然の素材そのものや自然を生かした遊具やベンチ、いす等により、お子さんからお年寄りまでが憩える場所ともなっている。特に、森づくりで整備している「不動谷の森」は、森の中の遊び場として子どもたちには大人気となっている。さらに、昭和30年頃まで使われていた棚田を再生し、子どもたちと協力して米作りに取り組んでいる。 【親水公園での主なイベント】 春のおちばの里親水公園まつり(大空を泳ぐ100匹のこいのぼりを見ながら春の自然を楽しむ)・秋のおちばの里親水公園まつり(公園周辺の紅葉を楽しむ)・おちばの里親水公園梅まつり(公園奥の梅園を観賞)では、地域の自治会や湖西市、他団体、地主など多くの皆さんの協働によって実施をし、市内外から延べ2000人の来園者がある。 3.願いや思いを具現化する取り組み 本倶楽部の21年間の積み上げと全ての取り組みを通して、「自然の恵みを生かし、楽しむ、おちばの里づくり」を推進してきた。おちばの里親水公園周辺の里山を市民の憩いの場とすると共に、地域住民のコミュニケーションの場として活用することにより、自治会や老人会などを中心とした取り組みの輪が広がり、年3回の公園祭りは大盛況となっている。さらに、普段から草刈りや整備をすることによって市内外から訪れる方が多く、自然豊かで安心して遊べる公園としても知られるようになった。また、企業の社会貢献活動として森づくりに関わる会社が増え、おちばの里親水公園を中心とした自然豊かなエリアをフルに活用し、様々な取り組みをしている。森林に囲まれていたためか地区住民でさえ知らずにいた公園が、行政・企業・自治会・市民団体などが協働してこつこつと整備し活用してきた成果が大きく花開いたことによって、地域の活性化につながっている。訪れた人に声を掛けたりお裾分けをしたりして、人の温かさを感じる公園ともなっている。 今後は、さらに周辺の自然林を生かして、自然と親しめる活動や里地・里山づくりにも積極的に取り組んでいきたい。そして、周辺一帯を自然保護保全地区として市民の憩いの場所とするとともに地域住民のふれあいの場となるようにしていきたい。 |