「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
姪浜の宝を福岡市民の宝に!―歴史的な環境を活かした地域協働の町並み形成と地域づくり推進活動― |
福岡県福岡市西区 唐津街道姪浜まちづくり協議会 |
1.宝のまち・姪浜 姪浜のまちを眺めながらじっくりと歩いてみると、町並みのそこここにたくさんの「よかとこ」を発見することができます。その中には私たちの先人たちから受け継いできたものもあり、また、その上に新たに加えられたもの、生み出されたものもあります。 先人たちから受け継いできたものの代表は、日本誕生の神話や神功皇后伝説、奈良時代や鎌倉時代からの歴史を持つ神社やお寺の数々、元寇防塁、小戸から生の松原にかけての白砂青松、江戸時代に栄えた唐津街道の町並み、港の風景などたくさんあります。一方、姪浜駅周辺や海沿いの現代的な商業施設や高層マンションなどは姪浜の環境の良さや便利さが生みだした新たな風景です。このように、姪浜は新しいものと古いものとが共存するまちです。 2.協議会設立の経緯 姪浜地域は、様々な歴史、古い町家や寺社等により福岡市内でも有数の歴史的環境が形成されていますが、それが地域内でほとんど認知されていませんでした。また、都市化の進展や平成17年の福岡県西方沖地震による被害で、地域の特徴である町家が次第に減少しつつありました。 私たちは、歴史的な環境を活かしたまちづくりを進める上で、こうしたピンチを最後のチャンスと考え、震災の影響や都市化の進展とともに少なくなりつつある町家や、歴史ある寺社を中心とした多彩な歴史・文化資源を活用し、姪浜ならではの「景観まちづくりと賑わい・コミュニティの再生」「姪浜ブランドの構築」を目的として、平成19年3月に協議会を設立し、左記のような様々な活動を展開しています。 3.活動内容 (1)1stステージ(主に平成19~21年度。現在も継続中)では、「地域の魅力の再認識と地域内外への発信」を目標に次のような多彩な活動を行なっています。 ■地域の魅力資源調査 ■まち歩きマップの作成・配布 ■まちづくり講演会、シンポジウムの開催 ■景観歴史発掘ガイドツアー、着物で歩くイベントの開催 ■国の登録有形文化財であるマイヅル味噌での「みそ蔵コンサート」、伝統的町家建築での「町家コンサート」の開催 ■歴史ある寺社での「灯明コンサート」の開催 ■各種展示会の開催(町並みパネル展、唐津街道版画展、町家散歩展、ディスカバー姪浜展等) ■まちづくり活動拠点の開設・運営 ■まちづくり瓦版の発行 (2)2ndステージ(主に平成22~24年度。現在も継続中)では、「地域のまちづくり計画の策定」「景観まちづくりの実践と姪浜ブランドの構築」「他の地域や団体との交流・連携、ネットワークづくり」を目標に次のような活動を行なっています。 ■「元気!姪浜計画」(まちづくり計画)の策定 ※今後の地域のまちづくりの基本方針を示したまちづくり計画を住民参加によるワークショップ形式で策定。 【「元気!姪浜計画」の六つの基本方針】 ①広域回遊ネットワークづくり 回遊ネットワークによって歴史的資源や商店街、公園、海辺、さらには新旧のまちをつないで姪浜の魅力を増幅させる。 ②姪浜のまちの個性の再構築(住まいづくり・町並み景観づくり) 町家などの地域資源の保全・活用を進めるとともに、培われてきた地域の知恵を活かした住まいづくり、町並みづくりによって姪浜の魅力や活力を再構築する。 ③商店街の賑わいづくり 若者の姿のある通りづくりを目ざすとともに、「地産・新鮮・手づくり」を活かして地域の人にも訪れる人にも喜ばれる商店街にしていく。 ④姪浜ブランドづくり 姪浜ならではの「もの」や「ものがたり」を活かした姪浜ブランドを生み出す。 ⑤地域を知る場・機会づくり 姪浜の魅力を知る・学ぶ・楽しむ場や機会を設けて地域内外の交流を育てつつ、姪浜の魅力を発信する。 ⑥環境にやさしいまちづくり 「身近に海や川がある」「歩いて暮らせる」「地産地消ができる」……このような姪浜を持続し、向上させるために「環境」の視点を大切にする。 ■「景観まちづくり計画」策定中 ※当協議会会員の他、各種団体(自治協議会、商店会等)、町家所有者、九大生、専門家、行政職員等で構成する「景観づくり委員会」で策定中 【景観づくりの方向性……景観づくり委員会の意見の集約】 ◆景観づくりの基本的な考え方 〈まちの将来像・目標〉 ○誇りの持てるまち・心が豊かになるまちにしたい! ○人が住みやすいまち・きれいなまち・ごみのないまちにしたい! ○生活や文化と一体になった景観づくりを! ○商店街をコミュニティの核にしたい! ○姪浜の宝を地域と行政の協力で福岡市民の財産に! 〈まちづくり・景観づくりのアイデア〉 ○地域の宝(町家・町並み・寺社・樹木など)を残す・活かす・まちの魅力アップにつなげる。 ○町家や空き店舗をまちの魅力づくりに活かしながら商店街の活性化に役立てる。 ○街道沿いの集合住宅も町並みの魅力づくりに貢献できるような景観づくりの工夫をする。 ○商店街や神社をコミュニティ交流の核にする。(コミュニティの「ひだまり」づくり) ○海や魚に関する資源(港、水辺、魚市場、朝市など)を地域交流空間として活かす。 ◆景観づくりのテーマ “地域の宝を再発見し、町並みの魅力アップに活かす景観づくり” ■町家再生の実践 ※町家改修相談、アドバイス等 ■旧町名表示板の設置(地域への誇りや愛着を感じてもらうため、昭和30年代の町名表示板を作成し、散策コースの主要な場所に設置している。) ■「姪浜ブランド」の認定(姪浜の名産品といえる商品を販売しているお店や、地元で獲れた新鮮な魚を使った料理を提供している店舗を「姪浜ブランド」として当協議会が独自に認定し、手づくりの認定プレートを授与。地域内外に広くアピールしている。) ■「姪浜町家」の認定(地域の貴重な財産として、地域の町並み形成に寄与している町家を認定し、手づくりの認定プレートを授与。姪浜には、江戸時代から昭和初期にかけて建てられた約100軒の町家が残っているが、老朽化や後継者不足等の理由で取り壊される家が増えている中で、当協議会が独自に「姪浜町家」に認定することで、その価値を再認識していただくきっかけになればと考え、こうした取り組みを始めた。) ■唐津街道や歴史的町並みをテーマにした他地域との交流活動 ■福岡市、九州大学、NPOとの連携活動 4.活動の成果 (1)波及効果 平成19年3月の協議会設立当初の会員(15名)は、地元より地域外の人間(ヨソモン)が多かったですが、現在の会員数は46名(地元35名、地域外11名)となっています。「ヨソモンの刺激」→「地域住民の地域への誇りや愛着の創出」→「福岡市、九州大学、NPO、他地域との協働・連携」へと活動の幅が次第に広がってきています。また、多彩な町並みイベントに加え、「活動拠点の設置・運営」「まちづくり活動の広報」「まちづくり計画の策定」「町家再生活動」「唐津街道ネットワーク活動」等に取り組むなど、その活動は地域全体に波及するとともに、実践的なまちづくり活動へとシフトしています。 (2)住民参加 活動を続けるなかで、住民のまちづくりに対する認知度と意欲が向上し、地域の人の参加が次第に増えるとともに、地域から賛同と協力の声を多くいただいています。また、身近なワークショップから多くの人にPRしたい灯明コンサートまで、それぞれの目的に応じた多彩な事業を行なうことで、多くの住民に参加の機会を提供しており、着実に地域主体のまちづくりの推進につながっています。 (3)地域課題解決への寄与 当該地域の最大の課題は、地域住民自身が地域の魅力に気付いていないことでありましたが、協議会発足以来、一貫して「地域の魅力の再認識」をテーマに活動を行なってきた結果、「住民の地域への誇りや愛着の創出」「地域の魅力の地域内外への発信」という目標をほぼ達成しており、今後も引き続き、地域内外へのPR活動を推進していく予定です。 (4)継続性 町並みイベントを中心とした事業により、1stステージ(平成19年度~)の活動の目標(地域の魅力の再認識と地域内外への発信等)は、ほぼ達成できました。2ndステージ(平成22年度~)では、「景観まちづくりの実践と姪浜ブランドの構築」に向けた『元気!姪浜計画』を策定し、現在は「景観まちづくり計画」を策定中です。また、「姪浜ブランド」「姪浜町家」の認定事業をスタートさせました。今後は、景観形成地区の指定に向けたルールづくりや町家再生活動、空き家活用、商店街の活性化等に向け、さらに活動をステップアップさせていく予定です。 このように常に先を見据えながら、長期的展望に立って段階的かつ継続的にまちづくり活動を推進しています。 (5)先駆性・独創性 各事業の実施にあたりましては、当該地域ならではの場所(興徳寺、姪浜住吉神社、登録有形文化財のマイヅル味噌等)と内容にこだわり、多くの住民に地域の魅力を伝えることができています。また、まちづくり活動拠点の開設、旧町名表示板の設置、まちづくり瓦版の発行、「姪浜ブランド」や「姪浜町家」の認定事業は、多くの地域住民から賛同の声をいただき、活動の輪が一層広がってきました。 (6)協働性 各事業の実施にあたりましては、地域の団体、寺社、商店、住民等の協力を得ながら、お互いに連携しながら進めています。また、福岡市から都市景観条例に基づく「景観づくり地域団体」に認定され、「景観まちづくり計画」の策定に連携して取り組むなど、行政とも協働で進めています。今後も、地域に根ざした協議会として、地域(関係団体、寺社、住民、商店)、福岡市、九州大学と協働して、唐津街道姪浜ならではのまちづくりを実践していきたいと考えています。 継続的で多彩なまちづくり活動の成果 ■唐津街道姪浜の魅力の再認識と地域内外への発信 ■活動の広がり(ヨソモンの刺激→地域住民の地域への誇りや愛着の創出→行政、大学、NPO、他地域との協働・連携へ) ■まちづくり実践活動への展開(まちづくりの効果を具体的に目に見える形で地域に伝える。) ■『元気!姪浜計画~景観まちづくりの実践と姪浜ブランドの構築に向けて~』の策定→実践へ 5.今後の展開 唐津街道姪浜まちづくり協議会では、今後も『姪浜の宝を福岡市民の宝に!』を目標に、地元の人たちにとっては「住みやすさ・暮らしやすさ」のあるまち、訪れる人たちにとっては「楽しさ」のあるまちの実現を目標として、新旧の「よかとこ」を姪浜の個性として活かすことができるような「まちづくり・町並み景観づくり」を地域の皆さまとともに進めていきたいと考えています。 |