「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
地域における孤立化しようとする高齢者への支援活動 |
福井県福井市 清明げんきの郷運営委員会 |
「清明げんきの郷」は、地域のボランティアによる自主的運営を基本に旧福井市清明公民館を利用し平成21年4月開設された。 開設のもととなったのは、地域の課題解決によるところが大きい。この地区は福井市南部に位置し、32年前、地区発足当時は、所帯数1400戸、人口4940人であったが、現在は、所帯数2570戸、人口7500人と成長し、東は、国道8号線が通り、西には、大島山、引目山、城山と自然環境が豊かな地域である。 一方でこの地域に移り住んだ住人の多くは子ども時代この地域で過ごした体験がなく、同級生等幼なじみの友がいなく、古くからの隣近所付き合いが薄い地域である。 「清明げんきの郷」は、地域の課題である住民増加により地域内にある福井市社会福祉協議会が運営する「児童館」が定数を超え入館できない小学児童対策と増え続ける孤独になりがちなお年寄りの交流の場とし「ふるさと福井」の自然、環境、文化の継承を考え、福井市に理解いただき開設した。 運営面は、全面的に地域が責任を持ち、自治会をはじめ地区全体で関係する仕組みを作り、運営委員には、地区内より15名をお願いし、毎年総会において選出するようにした。運営委員会は年間4回開催し、当面する議題について話し合っている。 また、毎日お世話するボランティア団体を組織した。現在約45名の方が登録している。ボランティアは当番制でお願いし、午前の当番の方は、鍵あけ、掃除、お茶沸かし等があり、午後の当番は、来館者への話し相手、お茶出し等おもてなしなどで、夕方には戸締りを行いその日の役目を終える。 子どもたちについては、福井市がNPO団体に運営を委託し「のびっ子クラブ清明」として、高齢者組織を「いきいき長寿 よろず茶屋清明」と名付け、年間を通し、子どもたちとのふれあいを考えながら事業を行っている。 具体的事業としては、季節に合わせ内容を考え、また、高齢者の健康づくりや趣味の交流など親しく誰でもが利用できる施設であるよう心掛けている。 年間行事として、子どもたちと共同で4月の開館周年行事に始まり「のびっ子ファーム」での野菜苗の植え付け、手作り野菜を利用した「ランチ作り」、読み聞かせ会、民踊、ソーメン流し大会、芋掘り、餅つき、正月行事等を行う。 「よろず茶屋清明」事業は、毎日、午前・午後の内容を変え、仲間同士が集まり楽しく元気に過ごしている。内容については、民踊、スティックリング、健康麻雀、卓球、手打ちそば作り、カラオケ等利用者同士で話し合って行っている。 開設当時は、年間800名程度の利用者であったが、年々利用者が増え、平成25年度は延べ約4500名の高齢者が来館した。 子どもたちの健全育成と高齢化社会におけるお年寄りの仲間づくり、生き甲斐づくりを進めるため、ふるさとの文化、自然、伝統の継承に努め、地域力の向上を目指している。 休耕農地をお借りし、高齢者同士の農園「シルバー元気ファーム」を作り、高齢者の共同作業により野菜を育て、収穫し、子どもたちとのイベントに利用している。収穫した瓜を使い、この地方で昔から保存食として各家庭で作られ、今では、作る家庭も、作り方を知る人も少なくなった「万寿漬け」作りを、知っているお年寄りに聞きながら、作ることに挑戦した。今年も瓜を育てているので、収穫後、塩漬けから始める計画である。 ※万寿漬け=瓜の中に赤チソや唐辛子、ミョウガ等を詰め込み、1年ほど味噌漬けする。 また、平成25年度は、自宅にこもりがちな高齢者に対し声掛けを行い、子どもたちとのイベントに招待し、楽しい時間を作ることができた。高齢者宅には、顔見知りで近所のボランティアが送迎し、気軽に参加できるよう配慮した。その後も時々参加されるようになり、この事業は継続する予定である。 今後は、いま以上のボランティア参加を呼びかけ、多くの皆さんと協力し、運営する強固な体制を作りたいと考えている。 現在、高齢者が元気で「今日」と同じ生活が一日でも楽しく長く続けられるよう取り組む「要支援者早期発見推進事業」を計画している。 毎日の生活の中で、本人が気づかない行動を仲間と過ごす時間の中でお互いがアドバイスし、注意し合い、出来るだけ多くの高齢者が元気で楽しく生活が続けられるよう取り組みたい。 「清明げんきの郷」は、子どももお年寄りも元気で過ごす場として名づけられた。お蔭さまで、大変多くの地域の皆さまが毎日利用しているので、今後も「げんきの郷」として、皆さんの協力をいただきながら運営し「住みよい街、住んでよかった街、住みたくなる街」を合言葉に取り組んでいきたい。 |