「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載 |
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞 |
都会っ子の居場所づくり&子縁コミュニティ育成―人・自然・文化・地域のご縁を育む― |
東京都千代田区 NPO法人コドモ・ワカモノまちing |
【背景・目的】 子どもたちが道で遊び、秘密基地をつくり、まち全体が子どもの居場所になる。そして、近所のおじちゃん・おばちゃんがそれを見守る。近年、そんな当たり前の光景とご縁が、各地で失われてきました。とくに都市部では、社会的・物理的環境が激変し、子どもたちは4間(時間・空間・仲間・隙間)を失い、様々な人・自然・文化・地域とのつながり(縁)が育まれにくい環境になりました。また、地域で顔の見える関係や子どもを見守る関係が希薄になり、騒音問題(公園の騒音・道路族)や無縁社会、持続可能なコミュニティづくりが社会的問題となっています。 それに伴い、子どもたちは知識はあっても体験から物事を解決できず、「感じる力・つながる力・創造する力」が弱くなっていると日々感じています。元々、子どもはそれらの力を持っています。その力が育まれる環境やつながりを、大人の社会が奪ってしまっているのです。大人の都合による合理性のみを優先するのではなく、遊び心や余白、見守る勇気、多様なつながりがあれば、子どもたちの感性はもっと豊かになり、たくさんの感動を仲間と共有し、すべてのヒト・コト・モノに感謝する気持ちが自然に育まれ、子どももまちももっと豊かになると信じています。 しかし、子どもを取り巻く課題が複雑に絡み合っている現在、1団体・1地域・1分野の取り組みでは限界があります。そこで、私たちは、地域のパパ・ママや学生、町会や商店街の皆さん、市民活動団体や企業と有機的なネットワークをつくり、複雑に絡み合った課題を若者の力で解きほぐし、より豊かな子ども環境を創造します。 【コンセプト・特徴】 あらゆる感覚をつかって、感動・感性・感謝の心が育まれる環境をつくり(=感育)、子どもと若者と人・自然・文化・地域のご縁を有機的に紡ぎ、個々の本来の力が育まれる環境を地域とつくる=まちing ①子ども・若者の参画 子ども・若者一人一人の感動する心を大切にし、ゆるやかな居場所づくりを行うと共に、社会参画できる環境をつくっています。特に10代後半~20代のワカモノたちが地域活動に参画し、子どものご縁を紡いでいます。 ②有機的なコラボ~共感・共楽・共働・共有~ 学生やNPO、町会や商店街、企業や大学、パパ・ママや高齢者などと積極的に連携し、様々な世代・分野・地域が共感・共楽・共働・共有することで、持続可能な多様な活動を目指しています。 ③新たな価値の創造~今だけ×ここだけ×私たちだけ~ 子ども・若者を取り巻くヒト・モノ・コトをマッチングし、今の時代や季節、地域資源(人・自然・文化・歴史・産業等)、関わる人の感性や特技、ネットワークを掛け算し、世界でたった一つの新たな価値を創造していきます。 【対象者・場所】 対象:主に乳幼児~小学生とその家族 *学生や主婦、高齢者など地域住民と多世代交流・共働 場所:東京都千代田区(神田)・文京区(根津・千駄木)・台東区(上野・谷中)・荒川区(日暮里)界隈 道路(歩行者天国、道路使用許可)・広場・公開空地・空地・駐車場・私有地(庭)など 【活動内容・経緯】 2001年に学生15人で任意団体を設立し、神田にある空き家を改装した子ども基地(子どもサロン)や子どもの参画によるまちづくり、地域の子どもイベントや遊び場づくり、絵本や遊具の制作、幼・小・中・高・大学のまちづくり学習、若者の人財育成などを実施。2008年に法人化し、0~20代の子ども・若者を対象に、遊び・教育・環境・防災・建築・福祉・食・まちづくりなど様々なまちや暮らしの体験交流活動を通じた総合的なまち育てを行っている。(首都圏を中心に新潟・長野の里山、そして3・11以降は東北(石巻など)を舞台に活動も展開している) ①移動式子ども基地(週2~3回) 1.5トン積載のトラックを改造し、様々なモノ(木や竹、藁などの自然素材、リユース玩具、世界の楽器、絵本や紙芝居、昔遊びやオリジナル遊具、実験道具や文具など約100種類)を載せ、道や広場に遊びを出前しています。 現代版の紙芝居屋のように、放課後や休日などにまちに現れ、地域住民や企業、市民活動団体とコラボし、世代を超えた遊びや学び、交流のきっかけをつくっています。また、最近はプレイリヤカーやプレイカート、おかもち型の移動式子ども基地も開発し、路地や空き地にも手軽に遊びが出前できるようになりました。まちの中に子どもの居場所をつくり、点から線、線から面にゆっくりと広がる。そして、子どもを中心とした「子縁コミュニティ」がゆるやかに育まれる。そんな有機的な子どもの居場所と子縁コミュニティを育む活動を実施しています。 ②子ども・若者イベント(月2~4回) 数十人の小規模なものから数万人の大規模なものまで、子どもや若者、親子、3世代を対象としたイベントの企画・運営・コーディネートをしています。町会や商店街、企業や行政、市民活動団体などと一緒に体験交流イベントを開催しています。地域の資源を活かし、地域の人と一緒に職人体験や3世代交流、ストリートパーティなど「今だけ・ここだけ・私たちだけ」の地域イベントを開催しています。世代を越え、分野を越え、様々な視点からまちの魅力を再発見していき、地域の新たなご縁を紡いでいます。また、身近な地球の資源をテーマに、その背景にある人や地域・自然を感じるエコワークショップや自分と家族、近隣のみなさんを守る防災イベント・ワークショップなど、頗の見えるネットワークづくりも行っています。 ③まちデザイン(随時) あらゆる感覚をつかったまち探検や、その地域の職人・文化体験、コミュニケーションワークショップを開催しています。また、子どもと一緒にまちをHAPPYに改善する環境デザイン活動として、壁画デザインや道の緑化、遊び場づくり・公園づくりなども行っています。そこにある資源(土・廃材など)を活用し、人と自然にやさしい遊び場をつくったり、空き地を活用した子ども基地・コミュニティガーデンをつくり管理したり、手づくりの居場所を育んできました。子どもたちは、そのプロセスで人・自然・文化・地域とつながり、継続的なまちとの関わりの中で、愛着のある居場所へとまちが変化することでしょう。他にも、幼・小・中・高のまち学習・まち遊びや環境活動、若者による地域情報誌やMAPづくり、地域や行政への政策提案など、子ども・若者の声を社会に発信する活動も行っています。 ④絵本・キットづくり(随時) 暮らしやまちづくり、自然のつながりをテーマにした絵本・紙芝居などを制作し、演劇ワークショップと共にまちやイベントで実践しています。また、年齢や地域特性に合わせて、絵が苦手な人でも作れる「世界に一つだけの手作り絵本」ワークショップを実施中。さらに、まち遊びをテーマにしたオリジナルの感育まちキットや間伐材を活用した感育木キットなど、自分とまちとのつながりを感じる様々なものづくりを行っています。 ⑤四季の感育学校(年2~4回) 都市部の幼児~大学生、親子まで約50~60人が一緒に過ごす宿泊型の自然&暮らし&文化体験学校(主に長期休みの時期に実施)。各地の里山などを訪れ、自然体験や文化交流、暮らし体験を通じて、感動・感性・感謝の心を育みます。春は、山菜を摘んで料理をしたり、田植えをしたり、夏は、源流を探検したり清流で生き物を探したり、林業・農業体験や森遊び、野外炊飯やキャンプファイヤーなども行います。秋は、木々の実りを感じるネイチャークラフトや収穫体験、森の音楽会や秘密基地づくり、冬は、巨大かまくらや雪像づくり、雪合戦など、雪原で身体いっぱいに雪を感じると共に、わらじづくりなど雪国の暮らしや文化を学びます。都市部では感じることができなくなった人と自然、文化や暮らしのつながりを、体験や地域間交流を通じて感じます。 ⑥講演・セミナー・研修・相談会(随時、年間50回) NPOや市民活動団体、教育機関や児童館、学生や地域のパパ・ママを対象に、遊びやまちづくり、防災やエコなどの講演会やセミナー、研修・相談会を開催しています。若者ボランティアを対象に「子どもとの関わり方」「リスクマネジメント」、パパ・ママや市民活動団体向けに「子どもとまちづくり」や「参加型の遊び場づくり」、「子縁コミュニティ育成」や「コミュニティビジネス」などの研修を行っています。また、これまでのノウハウを都内や全国各地にハンズオン支援し、北海道から沖縄などに広域のネットワークづくりも行っています。 【成果】 ①無縁社会の大都市部で年間延べ約5万人の多世代交流の場の創出 ②各地域課題に合わせた人・物・情報・ノウハウをシェアする子縁コミュニティづくり ③学生や社会人、主婦や高齢者を中心にした子育て人財の発掘と延べ5000人以上のボランティア育成 ④子ども×若者×まちづくり、商店街振興、防災、まち担い手育成などの相乗効果により地域課題を解決 ⑤全国各地にノウハウを提供(主に移動式あそび場や手作り公園、子どもとまちづくりなど)。100団体以上にハンズオン支援を実施。 【最後に】 子どもにとって「遊び=生きること」。そして、その遊びを通じて、様々な人や文化、自然や知恵との「縁」を再び一つ一つ有機的に紡いでいくことが私たちの使命だと感じています。子どもの感動・感性・感謝の心を大切に、内なる環境(心技体知)と外なる環境(自然・社会・地球など)のご縁を有機的に紡いでいくことで、共生しあえるハートのつぶつぶいっぱいの子どもの居場所を育んでいきます。 小さな一滴かもしれませんが、継続することで一人でも多くの子どもの原体験が豊かになり、過去と今と未来をつなげるきっかけになれば幸いです。 |