「ふるさとづくり'01」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
廃線跡に夢をのせてトロッコ列車が走る |
北海道美深町 トロッコ王国美深の会 |
旧国鉄の美幸線は、美深町市街地から仁宇布地区まで25キロメートルの区間で運行していた。しかし、日本一の赤字ローカル線の汚名を挽回できず、町民が願う存続の声もとどかず、昭和60年9月廃線になった。 仁宇布の住民は、この廃線跡を将来地域の活性化に活用したいことを要望し、解体工事が進む中、プラットホームや一部区間の路線を既存の形で残してもらったのである。 仁宇布地区は、美幸線廃止の影響もあり、年々過疎化が進んだ。低迷する地域を何とか活性化させたいとする住民の強い意志が、平成8年6月、住民有志11人で「旧美幸線を活用する会」を結成、調査・検討を始めた。 翌9年12月には、「トロッコ王国美深の会」に発展した。 同会は、軌道延長5キロメートルの工事を完成し、平成10年7月、トロッコ王国を開国、トロッコの運行を開始したのである。 このトロッコ運行は、町外・道外からの観光客が増え続け、町内の観光地も賑うようになり、地域特産品の振興策にも相乗効果を生み、地域の活性化と町のPRになっている。 トロッコの運行を企画・実現 同会は、旧美幸線の活用について、検討・調査を重ねた結果、仁宇布(ニウプ:アイヌ語で、森林の意味)地区のみでなく、大自然に恵まれた地域を生かし、美深町全体の活性化を図る方向で、トロッコを走らせることを企画・立案したのである。 しかし、旧美幸線の線路は、途中数か所に切断部分があり、軌道の復旧工事が必要であった。これには、莫大な経費と作業時間、そして人力が必要となった。 同会のメンバーは、全員、有職にあり、休日や夜間を利用しての復旧工事作業である。特に、トロッコ列車については、安全性が第一であり、試験運転を何日も続けその確保に努めた。こうした努力が実り、すべての準備が整った、平成10年7月4日、ついにトロッコ王国は開国した。仁宇布地区に、懐かしいゴトン、ゴトンの音が蘇ったのである。 入国審査・パスポートの発行 トロッコ王国は、美深町字仁宇布に位置し軌道延長約5キロメートル、片道約15分の運行である。出発準備から運行説明、到着まで合わせると所用時間は約1時間である。 この、トロッコ開国期間中のみ、同町から軌道沿線敷地を、王国用地として借り受け活用、運行する仕組みである。 トロッコは、JRから旧国鉄時代のものを町に払い下げてもらい、王国がリサイクルし活用、通常4人乗り3台と、6人乗り客車2両(牽引用王国オリジナル車)を配置、エンジン付きで時速20キロで運行している。 そして、トロッコ王国駅舎「コタンコロ・カムイ」を建設、ここでは、入国審査・パスポートの発行などを行う。運行時間は、9時から16時で、第1月曜日のみ運休。 ゴールデンウィークや夏休みには、家族連れで賑いをみせている。 これまでの入国者は、開国初年が51日間で981人、2年目は、開国日数84日で1393人、昨年は、101日で3680人と年々増加していて、今後も期待されている。 また、トロッコ王国の開国活動によってもたらした成果は数多く見られる。その一つは仁宇布の雄大な自然環境(小川のせせらぎや滝の音を聞き樹木のトンネルをくぐるのは、まさに走る森林浴)を体験・観察し、親子で自然の大切さを実感し、再認識する機会の提供が出来ること。 過疎化が進んでいた地域に、多くの観光客が訪れることから、町内に新たな体験型観光事業が展開されたり、他の観光地も活気を保ち、特産品のPR等相乗効果を生み、地域活性化、町のPRにもなっている。 同会は、20歳代から65歳までの異業種のメンバーで構成、ボランティア活動で王国を建国、運営しているが、メンバー同志の交流はもちろん、入国する都市住民との交流も図り、地域農業振興の起爆剤にしている。 王国の運営に当たっては、メンバーのアイデアを積極的に取り入れ、日々入国する人々が楽しめるようチャレンジしている。 トロッコ王国駅舎「コタンコロ・カムイ」は、枕木の再利用でメンバーが手づくりで建設したものである。駅舎内には、旧美幸線の懐かしい写真を展示ている。駅名は、一般から募集し名付けたという。 トロッコの運転は、運転手が行わず、入国者(観光客)が、自ら運転手となって体験もできる。一度乗ったら、また乗りたいとの声も多く、毎年リターン者が増えている。 今後の課題は、年々増加する入国者への対応である。1回1時間の運行であり、1日の対応人数は制限されることや路線設備の修復作業が継続する事である。運行合間に枕木を交換する等の作業が残されている。今年4年目を迎え、課題の解決に奮闘している。 |