「ふるさとづくり'01」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
教師が地域で子どもたちのためにボランティア |
静岡県焼津市 高草会 |
静岡県焼津市東益津地区に在住する小・中学校教職員全員に呼びかけて、地域の懇親会組織を教育ボランティア組織に立ち上げた。平成5年に発足した「高草会」がそれで、学校5日制を期に、教師も勤務する学校から地域に帰り、教育者として地域で子どもたちと関わりを持とう、という趣旨から活動を始めた。 教師が在住地で子どもや保護者とコミュニケーション築く 焼津市東益津地区は、高草山や川、駿河湾に囲まれた地域で、自然豊かな田園地帯と見られがちだが、JRの鉄道や国道、バイパスなどの開通で地域は分断され、田舎の情景は失われつつあった。かつて地区には沢山いたクロメダカや高草山の頂上に咲き乱れていたキスミレも絶滅。故郷の身近で豊かな自然や歴史文化を子どもたちに伝えておきたい思いは、大人たちの心の中に去来していた。 そんな10年前、落合さんたち教師の間で、学校5日制の導入で議論を重ねていた。その中で、「子どもを家庭に帰す。地域に帰す」というキャッチフレーズがあった。それなら、教師も学校から家庭や地域に帰るべきであろう、という考えに達したとき、在住している地域で子どもたちと教育者としての関わりを持てないか模索を始めた。 そうした中で、以下の結論を導き出した。(1)生涯学習社会の中で、地域に生きる教育ボランティアを行う(2)地域に学び、地域を学び、地域で学ぶフィールドワークを基本に、活動プログラムを組む(3)東益津地区に在住する小・中学校教職員全員に呼びかけ、地域の懇親会組織「高草会」を教育ボランティア組織に立ち上げる(4)毎年地域から活動テーマを探し、協議して活動プログラムを組む(5)会長、事務局を置き、通信を発行する。 平成5年から始めた活動は、ほぼ2か月に1回、第1及び第4土曜日に行われて8年が経ち、現在9年目に入った。公民館からは、「子どものためのふるさと講座」の名目で運営費用の補助があり、志太教育振興協議会からも活動資金の一部を援助してもらっている。以下に、これまでの活動の足跡を追ってみた。 平成5年、1年目の活動テーマは「ふるさとサイエンス教室」。(1)ほたるウオッチング(2)水生昆虫探し(3)海にはどんなプランクトンがいるか(4)砂浜に生きる植物の知恵(5)大崩海岸が海底火山の証拠探し(6)木の実、野草の種子の工夫探し(7)熱気球上げ(8)朝比奈川で冬の野鳥ウオッチング(9)星空ウオッチング(10)高草山のキスミレ保護。 歴史探訪・古代米づくり・自然を食べる… 2年目のテーマは「やきつべの歴史探訪」。(1)高草山の笛吹段古墳群を歩く(2)草笛を習う(3)林そう院で座禅体験(4)北条早雲の出世城「石脇城」の探検(5)昔からの伝統遊び(6)餅つき(7)方の上城の狼煙台見学。 3年目のテーマは「めだかの学校作り」。(1)めだかの学校(池)作り(2)めだかの入学式(3)めだかの観察(4)地域の環境調査(5)やきつべの里の環境マップ作り(6)環境マップの発表会。 4年目のテーマは「つくる・創る・作る」。(1)土器を作る(2)新しいクロメダカの学校作り(3)野焼き(4)ペットポトルケット作り(5)竹や木のおもちゃ作り(6)公民館で作品展(6)餅つき(7)藁人形作りと山の神祭り参加。 5年目のテーマは「古代米作り」。(1)古代米の種子を蒔き、苗作り(2)古代米の田植え(3)星空の動きと稲作文化を考える(4)古代米の稲刈(5)古代米の餅つき(6)古代の山の神祭りに参加。 6年目のテーマは「やきつべの里の歴史探訪」。(1)方の上城の探検(2)石脇城の小道を歩く(3)林そう院の石燈篭調べ(4)やきつべの古道を歩く(5)古代米の餅つき(6)虚空蔵山の仁王さま見学。 7年目のテーマは「ストーンミステリーハンターになる」。(1)山の石造物探し(2)中里・岡当目の里を探索(3)浜当目の歴史を探る(4)花沢の里の石造物探し(5)古代米の餅つき(6)兎沢古墳の線石画見学。 8年目のテーマは「自然を食べる、野草クッキング」。(1)高草山で食べられる野草探し(2)朝比奈川の土手で探す食べられる「夏」(3)花沢の里で秋を見つけ「秋を食べる」(4)餅つきだ、草餅をつく(5)春を見つけ「春を食べる」(6)野草レストランパーティ。 9年目のテーマは「やきつべの豊かな海・再発見」。(1)断崖絶壁の大崩海岸を歩く(2)海辺の植物のなぞ探し(3)狼煙を上げ、豊かな海づくり大会を祝う(4)藁で海の守り神作り(5)海岸でのアート(6)海岸漂着物調査隊と海岸美化ボランティア活動――は、現在進行中だ。 活動を始めて、昨年までの8年間、その成果を要約すると、以下のことが言える。 (1)地域の子どもたちの参加は延べ2,500人を数え、家族も含めると3,000人を超えた。年々参加者が増えている (2)地域の子どもや親たちと挨拶を交わし合い、コミュニケーションも進んだ (3)小・中学校の地域学習への貢献 (4)参加教員の意識も高まり、居住地で貢献することに生きがいを見出している などだ。 |