「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

ものづくりの魅力・技術・文化を伝える
京都府京都市 京都ものづくり塾
 「京都ものづくり塾」は、西陣織や京友禅、清水焼など京都の伝統産業の「ものづくり」に焦点を当てて、地域や産業の活性化を狙いに活動するNPO(民間非営利組織)である。平成10年、京都市のまちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾募集に応募し採用され、立ち上げた。


ものづくりで作り手・使い手の橋渡し役に

 「京都ものづくり塾」は、“ものづくり”をキーワードに、作り手と使い手という、双方に通じる情報の橋渡し役を担うことによって、京都のものづくりが時代に即した形での継承・活性化という命題に挑んできた。
 当初の活動は、西陣織や清水焼、酒の伏見など「ものづくりの町」のタウンウォッチングや職人へのインタビュー、イベントなどを紹介するホームページや情報誌『もの蔵』を発行して情報を発信してきた。また、行政をはじめ、企業や京都のまちづくり関係の諸団体との連携関係などを構築してきた。
 しかし、問題としてテーマを絞りきれず、思うように成果が残せなかったという反省があった。そこで、提携できる機関や団体とは手を組みながらも、自らの活動ドメインを確立しようという考えに基づいて、12年4月より京都市の支援を離れ、独立した団体として活動するに至っている。
 現在、京都ものづくり塾では、「ものづくり」をテーマに、4つのワーキンググループを作り、それぞれの違ったアプローチから活動を展開している。
 一つは、『ものづくり歴史考』で、現在の「和文化」の原型である江戸時代以降の生活スタイルと伝統的生活用品について、定期的にテーマを決めて勉強会を行い、歴史の中から現代に生きるものづくりや新しいライフスタイルについて考えていこうというもの。
 二つ目の『四春屋』(しはるや)は、「使い手との接点」という機能を持っていて、和の持つ素材の魅力を活かした手作り作品を通して、使い手方との交流を促進する活動だ。帯地などの和の素材に触れて、バッグやはぎれを使ったポストカードなど「ユーザー側からの視点」を取り入れたものを企画し、提携販売することで「和のマーケット」発掘を目指した活動である。


ユーザーと職人間のコーディネート目指す

 三つ目は「ものづくり職人列伝」で、伝統産業に携わっている職人を訪ねて、仕事ぶりや考えていることなどをホームページや冊子で紹介している。ものづくり職人列伝の特徴としては、「人そのもの」という視点を大切にしていることだ。取材先の人のこだわりや歩んできた道程などに焦点を当てることによって、職人の今昔を伝え、深く京都の「職人文化」や「ものづくり文化」について考える機会を提供している。
 四つ目は「ものづくり円卓会議」で、原則として2か月に1回のペースで開催している。円卓会議とは言葉通り「丸いテーブル」で話し合うこと。様々な立場の人が垣根を払って平等に話し合える場を「円卓」に喩えたもの。使い手と作り手が出会う場であり、異業種の作り手同士が出会う場でもある。ここに集う人々が共同で新しいものづくりの実験に取り組むことのできる場所だ。
 作り手だけ、あるいは使い手だけでは実現できないことを、両者がともに取り組むことによって可能になることをサポートする場でもある。「ものづくり」に携わる職人同士、また、職人と消費者、流通関係者ら「ものづくり」に関わる全ての人が対等に語り合える場を提供し、新しい「ものづくり」の仕組みをつくっていくのである。
 13年度からは、前述のワーキンググループの活動を横断すると同時に、関連した活動をしている団体や企業と連携して、三つのプロジェクト活動を開始した。
 (1)地域資源としての西陣織と、携わる各工程の職人たちの仕事ぶりを紹介したり、西陣織に関わりの深い人や西陣に暮らす人たちとの交流の場を設け、今後の西陣や西陣織について考え行動しするホームページや出版物を通して発信する「ニシジンプロジェクト」。
 (2)「和の生活・もの」という観点から現代に合ったものや、ものと人との関わり方、生活スタイルなどの提案を行う「和楽プロジェクト」。
 (3)ユーザーから直接注文を受けて、伝統産業の工房を紹介し、ユーザーと職人の間をコーディネートし、作り手と使い手が一緒にものを作っていく仲立ちとしての「悉皆プロジェクト」
 ――などである。
 塾は、以上のように、京都のものづくりの作り手と使い手、京都に生活する人や京都を愛する人、全国の伝統工芸や和文化に関心のある人たちに、京都の持つ「ものづくり」の魅力、技術、文化を伝え、さらに全国にある個性豊かな地場産業、伝統工芸品などの和文化の情報を伝える橋渡し役を任じている。