「ふるさとづくり'01」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
リサイクル・民俗誌づくりでまちおこし |
愛媛県弓削町 ゆげ女性塾 |
愛媛県弓削町は、瀬戸内海の中央に位置する離島で過疎化・高齢化が著しく進んでいた。この地で、県の男女共同参画型社会を目指す施策に呼応して、平成8年「ゆげ女性塾」が発足。女性の視点で身近な環境問題を考え、民俗誌作成などに意欲を燃やすなど、停滞している地域に活気と新風を吹き込んでいる。 まず、ごみの減量化とリサイクルを主題に 発足した女性塾は、最初の1年間は勉強に終始し、2年目から自主活動に入って、女性の視点で身近な環境問題を考えていこうと、ごみの減量化とリサイクルを主題にした。 (1)生ごみの堆肥化の普及促進(ボカシづくり) (2)合成洗剤ではなく石鹸の利用促進 (3)廃油の有効活用(固形・粉石鹸にする運動) (4)ダンボール、牛乳パックの再利用(ダンボールアート、パックアート) (5)不用品リサイクル(ペットポトル、ハンガー、破れたストッキング、包装紙、新聞紙、リボンなど) ――などを決め、地域の人たちと公民館に集い、楽しみながら作ったり、有効利用を図る活動を展開してきた。こうしてごみの減量・リサイクル活動は、小・中・高校の総合学習にも取り入れられ、塾のメンバーが指導にあたるなど、地域の子供から老人まで浸透し、大きな輪になって取り組まれている。 また、メンバーは、弓削町環境維持改善事業のモニターとなって推進に努めた結果、(1)では、弓削町のボカシ容器でコンポスト化の推進と、(2)では、漁業共同組合の石鹸販売を推奨する補助事業がそれぞれ始まっている。 ごみ減量化の講演会や啓発イベントを実施したり、また、文化の届き難い離島でコンサートを多くの人に聞いてもらいたいと、5か所でミニコンサートを開催した。お年寄りのために開いた大衆演劇も、大変喜ばれた。 毎年2月に開催されている弓削島1週駅伝大会では、地元や近隣の島々を含め1,000人程の参加がある。メンバーは、この参加者に地元で取れたレモンに砂糖を入れたホットレモンを振るまい好評だ。また、県道沿いの花壇に花を植えたり、町内の各種イベントにも参加し、協力している。自分たちで作ったパソコンのホームページには、『何でもやっちゃう ゆげ女性塾』がタイトルだ。 「出来る人が 出来る時に 出来ることをしよう」をモットーに、ゆげ塾は活動を進めてきた。こうして、「何でもしたい、見たい」と活動していた平成8年1月、弓削町から、全国離島振興協議会の助成で民俗誌を作る話が舞い込んだ。 お年寄りの知恵・経験を引き出す民俗誌作り 民俗誌では、弓削弁を本にしてはどうか、という話だった。メンバーは楽しそうだし、なんでも出来ると軽い気持ちで引き受けた。初会合で、文化庁発行の「日本民俗資料辞典」を参考に指導されたが、これから経験する苦労をまだメンバーは気付いていなかった。 こうしてメンバーは、担当する項目をそれぞれに決めて、質問表を作り、調査に取りかかった。まず、島の端にある集会所で、快く集まってくれた70歳以上のお年寄りに、聞き取り調査を始めた。どのお年寄りも、みんな活き活きした顔で、昔のことをまるで昨日のことのように語ってくれた。 お年寄りの話は、メンバーには知恵の塊のように思えた。そして、実に賢い生き方をしてきたことがよく分り、予定した3時間はまたたくまに終わった。このような場を、毎月1回、各地区15か所で開き、お年寄りたちは終わった後も立ち話で補足してくれたり、メンバーが聞き足りないところを自宅訪問して再度聞いたり、電話などで話す場合も、お年寄りたちは親切に教えてくれた。 調査を通して、メンバーが新しく発見したことは、お年寄りたちがよく話すことや、知的な生き方をしてきたこと、意外な技術や趣味などを持っていることだった。そして、「もう少し早ければ、あの人がいたのに」という言葉もよく耳にした。 そしてメンバーは、お年寄りがみんな元気がいいことを実感した。お年寄りは、いろいろな話しを聞いてもらっていることに、存在感を見出したのだと思った。お年寄りの昔話も二度三度となると敬遠される時代に、調査とはいえ、よくぞ聞いてくれた、というのがお年寄りの思いでもあったことを知った。 聞き取り調査を終えてからの原稿執筆は、普段無縁だった主婦たちにはかなりの重圧だった。書き出しては訂正が入り、追加調査でまた町内を走り回ること2年、平成10年3月、やっと『弓削民俗誌』が完成を見た。 弓削民俗誌の発刊を記念して、「ふるさと民具展」も開催した。調査に協力してくれた300人からのお年寄りとの触れ合いはその後も続いている。そのお年寄りを先生に、しめ縄や味噌づくり、野菜作り、料理作りなどの教えを受けている。そうしたお年よりは大変元気で、いつも明るく振舞っていた。 |