「ふるさとづくり'01」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
ホタルが乱舞し潤いと癒しのある小野の里づくり |
大分県大田村 地域おこしグループ比栄会 |
過疎と高齢化が進む小野地区、祭りをはじめ地域の伝統や文化的行事は衰退の一途を辿る状況にあった。自分たちが住む地域のこうした現状に危惧を感じた若年後継者やUターンした後継者が、地域を活性化しようと昭和62年「地域おこしグループ比栄会」を結成し、秋祭りや供養盆踊り、そして伝統ある文化や行事を継承する活動をはじめた。 さらに、河川等の環境保全活動に取り組み「ホタルの乱舞する小野の里づくり」に取り組んでいる。同会の名称は、地域の比枝神社にちなみ、地域が栄え、会が栄えることを念じて命名した。 地域の活性化に向けて伝統行事・文化の継承 同会は、発足当初からI・Uターン者を含め、20歳から40歳代の夫婦を中心に、男女36人で構成している。 会には、会則も会費の徴収もないが、夫婦相互が同じ目線で理解し合い、職業も様々な中で「参加できるときに、できることを」をモットーに活動を続けている。 活動の一つは、麦酒(麦が原料の甘酒)製法の伝承である。かつては、春祭りで振る舞われていた麦酒の製法を古老から学び、今は比枝神社の秋季大祭の当日、参拝者に無料で振る舞い伝承の成果を披露している。また、同時に会員が自分の畑で栽培した蕎麦を利用し「手打ち掛け蕎麦」を無料で提供、地域産物の普及と消費拡大に貢献している。 近年は、手打ち蕎麦や麦酒が名物になり、これを目当てに地区外からも多くの人々が集まるようになった。 会員は、秋祭りに向け公民館の「ふるさと学級」に参加、古老の指導で横笛等祭り囃子の練習に励み、祭りの当日は音楽隊の一メンバーとなって成果を披露している。 この比枝神社の秋季大祭では、御神幸の際御旅所まで御輿が練り歩くが、輿付き当番の氏子が病気や高齢で御輿を担げない場合等、会員は担ぎ手として応援しており、御神幸が途絶えることなく御輿の練りが継続されている。 つぎに、夏の供養盆踊りでは、口説きや太鼓囃子・踊りを「ふるさと学級」で、古老の師匠から技法を習得し、当日は積極的に参加し成果を披露している。 3年前から、地区の小・中・高校生も練習に参加させ、次世代への伝承に取り組んだ。その結果、踊り手は勿論、口説き・太鼓の囃子でもデビューを果たした。 河川等の環境保全で大分県ホタルの里58選の認定水域に 同地区は、周防灘に注ぐ桂川の源流域にあり、かっては川で魚が釣れ、夏は水泳など川遊びができ、夜にはホタルが乱舞いしていた。 しかし、この川も例外なく生活雑排水や農業排水によってヘドロが溜まり、子どもたちの遊び声も消えていった。 川は徐々に荒れ始め、ヨシ等の雑草が生い茂り、川魚も少なくなって、ホタルの幼虫の餌である川蜷も減り、ホタルの姿も減少。 こうした状況下で、会員や住民から「川を何とかせんといかん!」「昔のように沢山の螢を見たい」との声が挙がり、ホタルを乱舞させる活動が始まった。 平成11年、会員が住民と協力して、とりあえず行政区域の河川、約3キロメートルのヨシなど雑草刈りに取り組んだ。この雑草刈りは年3回(5・8・11月)実施、現在も継続している。 最初の年は、ヨシの太さが大人の親指ほどで背丈も高く3日間もかかった。2年目は、茎の太さも小さくなり、作業も容易になり1日で終わるようになった。この結果、太陽の日差しが川面に当たり、キラキラ光る川の流れが見られ、川蜷の餌にもなるクレソンやセリも繁茂し、明らかに川蜷が増殖してきた。 そこで、平成12年からゲンジホタルの幼 虫飼育を始めた。親ホタルを採取・産卵・孵化、川蜷を与え600匹を育て、500匹は11月下旬に比枝神社側の桂川に放流した。 残りの100匹は、田原小学校の協力で児童が引き続き飼育、蛹床を作り5月下旬の成虫まで育てる活動に取り組んだ。 この活動の成果は、自治区の役員会で小野地域の活動を地域活性化策の一つに取り入れた計画が策定された。そこで、会員は今年度住民との協力で、ゲンジホタル6000匹の幼虫を飼育し放流する取り組みを始めた。 さらに、ホタルウォッチングのポケットパーク造成計画が確定した。2年先には、住民手づくりのパークが実現する予定である。 そして、大分県ホタル連絡協議会が「ホタルの生息環境を整備して、ホタルの保護増殖を行うことによって、大分県民の生活環境を良くする」と評価し認定する『大分県ホタルの里58選』に、22番目の認定水域に選定された。 同会は、地域住民、行政と一体で水域環境を保全し、水辺に人が集う潤いと癒しのある里づくりに励んでいる。 |