「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

魅せます 山あいの里づくり
長崎県諫早市 山あいの里育成会
 諫早市の山間地、柳谷・大野集落で地域活性化施設・やまびこ館を拠点に、平成7年10月、「山あいの里育成会」(代表・植松勝巳さん、メンバー数52人)を結成。都市の消費者とのふれあい体験農園での交流や特産品の加工販売、高齢者や障害者の生きがい活動の支援など、活発な活動を展開している。また若者も活動に順次参加してきた。多彩なイベントを企画したり、活動の先頭に立つなど、村に活気が戻ってきた。


消費者との交流深めるふれあい農園活動

 会には、ふれあい農園部に加工部、企画事業部の3部を設けて、それぞれ自主的に活動している。ふれあい農園は、諫早市や長崎市など都市部の消費者を対象に、野菜などの栽培や収穫の体験と交流を主目的に開園した。直接町を訪問したり、ラジオや印刷物などによる熱心なPRが実り、毎年利用区画も増えて、現在81区画が埋まっている。平成9年になると、菜園の利用者との一層の交流を深めるための「やまびこ便り」を発行したり、栽培講習会や餅つき大会なども企画して、利用者との親睦を深めている。また、殺風景だった農園の周辺には季節の花などを植えて、地域住民の憩いの場にもなった。
 加工部は、平成8年4月、味噌や菓子の加工販売の許可を取得。味噌は10年度1.8トンを生産し、いもかりんとうや田舎饅頭の販売も順調に売り上げを伸ばしている。紅あずまを使った芋ぺーストは、市内の菓子業者に販売するまでになった。


食堂も開店し、青壮年も参加してきて

 平成10年末には、食堂開店の許可を取得し、農村食堂メニューの開発に取り組んだ。「山の幸資源」を活かした手作りのおふくろの味をセールスポイントにおいている。今では、昼食を30食出し、法事などで折詰や煮物の盛り合わせを注文する家庭も増えてきた。会員が市内の料理学校で腕を磨き、消費者へのアンケート調査や研究を重ねた結果である。
 平成9年、会には新たに青壮年が加わった。以前から若い層の参加が少なく気にはしていたが、地域振興アドバイザーの助言で再度呼びかけを行い、「いま村を起こさないと手遅れになる。若者たちが事を起こそう」と立ち上がり、会で新しい事業や活動を中心的に担っていく企画部を結成した。
 企画部が中心になって、平成10年には消費者との交流・親睦を深めるために、多彩なイベント、田植えやさつまいもの定植を盛り込んだ農業体験イベントを始め、季節ごとの野菜栽培講習会、やまびこ祭り、棚田コンクール、稲刈り、いも掘り体験、消費者との交流餅つき大会──を行った。
 消費者との交流活動は、会員の行動範囲を拡大し、同時に見聞を広め情報量を増やした。そのことが高齢の女性たちに働く場の確保と農外収入をもたらし、高齢者の生き甲斐となって、地域の活性化に寄与している。
 会は、食を通して障害者教育にも一役買っている。やまびこ館に隣接する「雲仙コロニーポニークラブやまびこ」では、乗馬による治療教育を行っているが、そこの生徒や家族、指導員の昼食を毎日受け持っている。自給野菜を上手に使って、栄養のバランスを考えた愛情豊かな食事を提供し喜ばれている。