「ふるさとづくり2000」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

中山薪能と街回遊展
千葉県 市川市
 市川市中山の国指定・重要文化財「法華経寺祖師堂」が10年の歳月をかけた解体保存修理を終え、320年前の姿に復元された。そこで、同寺で落慶行事が開かれる本年4月中旬、全国から訪れる大勢の参詣者のために、地区を気軽に楽しんでもらおうと、市民参加で「中山薪能」と「街回遊展」を企画し開催した。期間中は天候にも恵まれ、来訪者は中山薪能1,800人、街回遊展は8会場で延べ1万人を数えた。


復元・法華経寺で幽玄な「中山薪能」催す

 東京に隣接する市川市は、急速な都市化の進展をみてきた一方、自然環境や歴史・文化遺産などにも恵まれ、「住みよい文化都市」を狙いに、まちづくりを進めてきた。しかし、昔ながらの町並みを持つ中山地区のように、今日の車社会には適応しにくい街もあって、市はまちの活性化のために地元住民や商店会、寺院などと話し合い「中山参道周辺活性化部会」を組織。法華経寺復元を機会に、市行政と住民が協力して、一大文化的イベント「中山薪能」と「街回遊展」を企画・開催した。
 法華経寺の落慶行事は、4月中旬6日間にわたって開かれ、「中山薪能」と「街回遊展」はこの期間に催された。中山薪能は、参道活性化部会を中心に、文化団体や商店会、自治会、寺院など13団体で実行委員会を組織して、祖師堂を舞台に行われた。能の中でも1,500年の歴史を持つ古典芸能・薪能が、ライトアップした五重塔や祖師堂を背景に京葉地区で初めて開かれ、静寂な中山法華経寺境内で薪の火を照明替わりに、夜間屋外で行う能を1,800人の観客が堪能した。


8会場で文化アピール「街回遊展」開く

 街回遊展には、8会場に1万人が訪れた。(1)「小さな美術館」は精華園を会場に、12人の美術工芸作家による彫刻・絵画・陶器・漆等の作品の展示や茶道会による庭園での茶席体験。(2)「全国絵地図展」は旧片桐邸で、日本全国約200か所の絵地図を展示公開し、市川の地名のある自治体も紹介。(3)「中山ギャラリー」は中山会館で、地元町会文化部による生け花やちぎり絵、地元作家による絵画展や茶席体験等を催した。
 (4)「お寺の美術館」は牡丹の花が満開の寺院で、市俳句協会の俳句色紙の展示や、地元華道家による生け花、市民愛好家グループのちりめん細工を展示。(5)「お寺のミニコンサート」は寺の境内で催され、琴の連弾と尺八の演奏が観客を魅了し、見事なハーモニーが屋外を行く人の足まで止めた。(6)「銭湯で聞く講談」は参道の銭湯で、浴槽を舞台に変え、女性講談師による独演会が会場を沸かせた。
 (7)「駅前コンサート」は、JR下総中山駅前の私有地を借りて、学生や市民グループによるジャズ演奏などを賑やかに繰り広げた。(8)「ザ・いけばな」は、これも寺の境内を会場に、地元の生け花作家による大作を創作的に配置し、夜間はライトアップで演出し、光の中に浮き上がる創作生け花と境内の調和が何とも美しい光景を醸し出した。
 住民参加で活動を担った地元の住民にとっては、「わがまち」に大勢の人びとが訪れて交流した喜びや、行政に頼るだけでなく、自分たちが参加してまちづくりを進めていくプロセスや、また楽しさを学ぶ機会となったのである。