「ふるさとづくり2001」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

幻の滝を地域のシンボルに! 環境に優しい遊歩道づくり
熊本県水俣市 16区地域振興協議会
 地元のアマチュアカメラマンが、荘厳な滝の景観を撮影したのが「幻の滝」と報道され、一躍脚光を浴びた。この通称「なべ滝」を、地域のシンボルとして、村おこしの核にしようと立ち上ったのが、地区住民の代表で構成する「16区地域振興協議会」(代表・坂本龍虹さん、メンバー数・19人)だった。
 地元でも、お年寄りの一部にしか知られていなかった「なべ滝」が、正式に確認されたのは、平成10年だった。市の中心部から6キロメートル、水俣の奥座敷と呼ばれる湯の鶴温泉に向かう途中の山間にある川の上流にあった。100メートルの間に大小6つの滝が連なり、全体の落差は約40メートル。両岸には巨大な岩が切り立ち、素晴らしい渓谷をつくり、“秘境”の雰囲気を醸し出していた。しかし、幻の滝といわれるだけあって、滝に通じる道はなく、急峻な山の斜面を進まなければ、滝の勇姿を目にすることはできなかった。


共同作業・手作り・環境との共生を掲げ

 なべ滝を地域のシンボルとして発掘、保全や整備、活用策をみんなで考え行動を起そうと、平成10年6月、地区住民の代表19人で、「16区地域振興協議会」を発足させた。
 協議会で現地調査と検討を重ねた結果、なべ滝を観光の目玉とするには「遊歩道」の整備が不可欠、という結論になった。そのためのコンセプトを1.地区住民の協同作業、2.手作り、3.周辺環境との共生、4.循環資源リサイクル、の4点に決めた。
 地権者と作業に入る覚書締結後、平成11年3月、測量に入り、6月から遊歩道づくりに取り掛かった。ボランティアたちは山中での危険な作業に悪戦苦闘の連続。しかも勤めや農作業を持つ身で、作業は日曜日しかできなかった。遊歩道は最大限“環境との共生”をテーマに、コンクリートなどは使わず、橋や階段、手すりなどにNTTの電柱の廃材や間伐材を再利用した。
 全体作業13回、延べ190人が参加して、全長200メートル余の「環境にいい手作り遊歩道」は、平成12年4月に完成。安全祈願などの開通式と歩き初めでは、急斜面に声を失う者、巨岩の間を流れ落ちる滝に感嘆の声をあげる者あり。「家族や友人と再訪したい」の感想に、一同苦労も忘れて喜び合った。