「ふるさとづくり2001」掲載 |
<市町村の部>ふるさとづくり大賞 内閣総理大臣賞 |
魅力あるふるさとづくりを目指して |
和歌山県 南部川村 |
南部川村の教育は、この地を舞台として生きてきた人々の長い歴史を元に、「思いやりやさしさあふれる南部川村」「梅と備長炭の里南部川村」「ふるさとを愛する子どもたちを育てる南部川村」を目指して「ふるさとを愛する教育」を念頭においた教育活動を行ってきた。 南部川村の教育方針と努力目標を昭和61年4月1目に制定した。以後14年になるが1字も変更していない。 制定当時は偏差値教育の真只中で、「この競争社会に、こんな教育方針でよいのか」と批判されたが、「教育の真髄はこれだ」とつき通した。「心の教育」が叫ばれる現在、大変よかったと思っている。 この教育方針を基に村づくり教育活動を行ってきた。 平成5年度には各学校で「ふるさと教育推進事業」をカリキュラムに加え日々ふるさとづくり教育を行っている。 以前は、万引、窃盗、校内器物損壊と荒れた子どもたちや、不登校生徒数が生徒数の割に多く出た時期もあったが、今は子どもたちの非行もほとんどなく、不登校生徒も少人数で、すこぶる安定している。 また地域の文化活動も以前は公民館講座などの講師はほとんど隣接他町村から来ていただいて講座を開設していたが、今では公民館講座の指導者はほとんど村内の講師でまかなえるようになったし、そればかりか、他町村へも講師を派遣できるようになった。 平成10年度には文化活動グループが集まって村民あげてのミュージカル『宮子と光明子(心のいやし)』を行い、大成功を収めた。それだけ村内の文化性は向上したといえる。 以下、取り組んできた主な事業などを述べる。 学校の快適環境の創造 学校は地域社会のシンボルであり南部川村の教育方針を具現化する場所であると位置付け、これを基本的考えとしてふるさとづくりのための学校施設づくりを行ってきた。地域の人々にも学校開放を図っている。 平成3年には高城中学校校舎・体育館で文教施設協会賞(豊かな教育環境部門賞)を受賞。平成7年には清川小学校校舎・体育館で文教施設協会賞(うるおいのある木の教育環境部門賞)と和歌山県ふるさと建築景観賞を受賞。平成11年には上南部小学校校舎で和歌山県ふるさと建築景観賞を受賞した。 地域文化の振興 村民のみなさんの幸せは、物的福祉だけでは得られない。精神的福祉(教育)が加わらなければ真の幸せを味わうことができない。 平成元年度に文部省から生涯学習モデル事業(3年間)の指定を受け、「梅と健康の村づくり」のテーマのもとに、生涯学習による「生きがいづくり」を進めてきた。 梅と健康の村づくりのために、村民1人ひとりに何ができるか、何をするかを問い掛けながら、毎年11月の1か月間を生涯学習月間として、フレッシュ梅の里フェスティバルを実施してきた。 生涯学習推進基本方針 「南部川村社会教育計画に基づき、今求められている『文化のかおりの連帯』の場づくりを推進し、1人ひとりの住民がお互いの学習によって合理的な考え方を自然な形で身につけ、地域の課題を解決できる『力』を養い、生き生きとした豊かな村づくりを目指すとともに地場産業の将来についても広い視野で考えられる情報を提供し、自発的に参加し行動できる地域づくりを進めることによって村おこしの一助になることを目指します。」 この基本方針のもとに具体的な取り組みとして以下のようなことに取り組んできた。 ・「集い、語らい」を通じて文化とふれあいの村づくり ふれあい文化教室、文化協会など自主的クラブの養成 ・情報提供と教養を深める講座の開設 梅の里大学(成人大学)・婦人学級・高齢者学級・青年学級・生涯学習推進講演会の実施 ・幼児から小学生対象の読書指導と中学生の社会教育への参加の推進 親子読書会の開設、宅配方式による図書普及、中学生対象事業開設 ・社会教育関連団体の育成とイベントの推進 婦人会・青年団・老人会・体育協会 ・公民館、文化協会などによる「文化展」の開催 ・むらおこしイベントへの諸団体の参加と協力 ・生きがい活動を推進する小グループの育成 ・人権尊重と同和教育の推進 ・生涯教育を進める関連団体を中心として総合イベントの開催 ・村の行政機関や学校との連携を深める活動 主なものを取り上げて報告する。 (1)フレッシュ「梅の里」フェスティバル 11月を生涯学習月間と定め、毎年「生きがいへのご招待・共に生きる社会を求めて」などのテーマのもとに、生きがいクラブ発表会など中央公民館を主会場に平成2年から開催してきた。今年で11年目を迎える。 (2)梅の里大学(成人大学講座) 毎年9月頃から翌年3月まで6〜7講座を実施。毎年違ったテーマで地元講師他著名講師を招へい。今年で16回目。村内だけでなく遠くは那賀町など村外からも聴講される。 (3)中学生に学ぶ梅の里大学特別講座(合同ふるさと学習発表会) 上南部、高城、清川の3中学校の生徒さんを講師に迎えて一般成人の大人が学ぶ講座を毎年開催。内容は梅、備長炭などのグループ調べ学習の発表、中学生の主張発表、梅林太鼓、炭琴演奏(地元特産の備長炭でつくった楽器。3中学校とも音楽イベント、校内・村外でも演奏。昨年は京都神山音楽フェスティバルでも演奏し、京都市民の関心を集めた)12月1日の南部川村の誕生日に午前中は3中学校合同ふるさと学習発表会を行い、午後は日本ふるさと塾主催の萩原茂裕先生の3時間の講座を聞き、ふるさとの大切さ、むらづくりの方法を学んだ。 (4)ピッコロ合唱団の育成 小学生児童を中心に学校週5日制が始まった年に結成、第2・第4土曜日の午前中に合同練習。結成して4年目となるが、昨年は和歌山県合唱大会に参加。また、和歌山県児童合唱団約80名を招待し、村内児童生徒宅へホームステイしてもらい2日間にわたって上南部小学校、高城小学校、清川小学校の3か所で「町と村の音楽文化交流会」を実施し、ふるさと文化の創造に寄与している。 (5)花火と盆おどりの夕べ(梅の感謝祭)の開催 商工会青年部・婦人部、青年団、婦人会、消防団、交通安全協会、区長会、梅の里源蔵塾、社会福祉協議会、青少年育成村民会議、教育文化振興会で実行委員会をつくり、毎年8月25日の夜行っている。南部川村の風物詩となって今年で9回目を迎える。 趣旨は「このイベントは、“日本一の梅の村・炭の村”の伝統を生かしながらフレッシュな“梅の里”を築いていくため開催するものです。すばらしい梅の里づくりに命をかけてこられた先人、先祖のみなさんに感謝し、村をうるおす梅の恩恵に感謝する祭りです。 21世紀に生きる子どもたちに夢を持たせ、生きる喜びと明るく豊かな村に住む喜びの満喫できる“梅の里”づくりを目指そうとするもの」である。村内外から老若男女5000人が以上集まる。 (6)歴史と福祉ミュージカル 愛と苦悩と感動の物語 「宮子と光明子」―道成寺から熊野へ―の発表 平成10年に今までの文化活動の集大成として村内のあらゆる文化団体を結集して、また、村内外からも劇団員を募集して約半年に及ぶ練習を重ねて11月29日に「保健福祉センター」竣工記念として昼夜2回公演した。 内容は平成11年の熊野体験博に向かって、和歌山県の歴史上の女性としてよく知られ、道成寺の縁起とされる宮子姫と天平時代に施薬院や悲田院を建立しライ患者の膿を吸って治療したという慈悲深い光明子などにスポットを当て、10月オープンの南部川村保健福祉センターに心の癒しと心の故郷を求めて、さらに小栗街道を通った古人(いにしえびと)の熊野への思いを重ね合わせた歴史ミュージカルを発信した。 梅づくりに生きがいと夢を持つ女性たちやコーラスのチビッコたち、今まで個々に活動していた文化活動のグループがミュージカルという共通の目標に向かってみなが団結し、ひとつの事業を成し遂げることに力を発揮すれば、ともに生きるむらづくり、活力ある人づくり、さらに一層の文化の育成に大きく貢献できると考えた。 21世紀を前にして「心のいやし、心のゆとり」と「慈しみの心」の満ち充ちた社会、熊野のもつ「いやし」を再発見できたらと思った。 総勢250人の素人集団が協力して創り上げたミュージカル。公演後感想文をいただいたが、村外の方の評に「村全体がひとつになってミュージカルを創ったことに大きな意義があり、南部川村という村の力強さを感じた」とあった。 スポーツの振興 (1)梅の里社会人野球大会 清川球場の完成を記念して「僻地振興とスポーツ文化の交流」を目的に日高地方、西牟婁地方、田辺市の野球チームが集まり、大会を毎年開いている。今年で12回目を迎える。 優勝戦は、和歌山放送で実況放送されることが魅力となっている。 (2)梅の里中学校女子バレーボール大会 毎年2月の観梅シーズンに第2土曜日と日曜日の2日間、県内外から代表チーム24チームの参加を得て開催、今年度10回目を迎える。 (3)梅の里小学生バレーボール大会 平成8年に上南部小学校ジュニアバレーボールクラブがライオンカップ第16回全日本バレーボール小学生全国大会に県代表で出場し、東京体育館で行われた1回戦、2回戦を勝ち進み、3回戦で優勝した東京ひまわりチームと互角に戦ったことは、南部川村歴史始まって以来の快挙だった。 これを記念して平成10年から2月の観梅シーズン中の第4土曜日と日曜日を利用して開催している。参加48チームのうち、県外から25チーム、近畿はもちろん遠くは広島県、岡山県、岐阜県からも参加し、西日本規模のレベルの高い大会になっている。この両日は親も観戦に訪れるので村の人口も一気に膨れ上がる。 地域産業の振興、特産品の開発等による地域活性化の活動 (1)発明発見創意くふう展・未来の科学の夢絵画展 わたしたちの村は、今「日本一の梅の村」「日本一の炭の村」として花開いている。大きな恩恵を受けている南高梅や備長炭は先覚者の並々ならぬ発見や発明創意工夫により生み出されたものである。 わたしたちは、先覚者の功績に感謝するとともに、発明発見や創意工夫に関心と興味を寄せ、伝統ある特産物をより一層すばらしい品物に磨き上げていく努力をすることが大事だし、また次なる新しいものをつくりだしていくことが21世紀を豊かに生きるうえで必要である。 そこで皆様から自分のアイデアを活かした「くふう作品」を応募し、優れた作品の表彰と応募作品の公開展示を行い、もって日常生活の改善と豊かな暮らしを目指す産業の発展に寄与されることを願い開催している。 また、「アイデアをいつも考えていただくために毎年開催する」として、今年で7回目を迎える。 外国人との共生を進める活動 (1)チャレンジ国際交流 中学生・教員海外(オーストラリア)研修を夏休み中に1週間1人ずつのホームステイ経験(1人ひとりが外交官)と現地校での交流学習を実施し、今年は3回目で10日間に増やした。 国際化時代に対応できる人材を育成する目的に行っているが、生徒たちは何物にも代えがたい財産を得ている。 (2)中学校 外国人講師による英会話学習。平成元年度から。 (3)小学校 外国人ふれあい教室。平成8年度から。 その他の地域づくり活動 (1)ふるさとづくり郷土学習教材の作成 書籍、報告書、教材ビデオ等。 (2)子どもの世界を広げるマルチメディア 村内6小中学校にパソコン教室完備。一般村民にも開放講座を清川中学校、高城小学校、上南部小学校の3地区で実施している。中央公民館に子ども放送局を開設。 (3)梅の里っ子ウルトラ元気計画 平成10年度に梅の里っ子ウルトラ元気委員会を設置し、ウルトラ元気計画のもとに健康教育を実施、健康の村づくりに寄与。 (4)思春期保健福祉体験学習 中学校3年生を対象に実施、講話と乳幼児検診とタイアップした赤ちゃんを抱く事業で真に生命の尊さを学ぶ。 (5)こうのとり学級(妊産婦母親教室) 年3回妊産婦と夫に集まってもらい、生命の誕生と子育てについて学んでもらう子育て支援事業を実施。今年で8年目。 (6)ふるさとを学ぶ丘平須賀城 弥生文化銅鐸の村(村内で銅鐸が6口出土)、夢とロマンの古城の村(平須賀城発掘調査完了遺構)を語り伝えることのできる宝物を持った村であることを認識する活動。 |