「ふるさとづくり2002」掲載
<企業の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

特産品の拡販とふれあいづくり、そして町おこし
千葉県光町 光町特産品販売企業組合
 われわれの住む町千葉県光町は、県立九十九里自然公園のほぼ中央に位置し、緑豊かな自然環境の中にあります。しかしながら、県外の方に尋ねると、九十九里浜は知っているが、光町は聞いたことがないとの答えがほとんどです。このままでは当町は特色のない町となってしまう。なんとか町おこしを考えなければ、と常に考えていました。
 そう考えているところ、町商工会で、まだ有効利用されていない町の資源を見直し、町活性化に役立てるとの企画があり、その委員として参画したのがきっかけと言えるでしょうか。


町の特産「長ネギ」で新製品を開発
 この町資源調査事業が平成7年のことであり、翌平成8年から、新しい特産品の開発が始まりました。町の特産が、「長ネギ」であるため、「ネギのど飴」や「ねぎ入りソーセージ」等を開発することができ、大変満足しました。新製品を開発したことがメディア等で広まり、町外からの問い合わせも多くなり、特産品で町のPRができると確信しました。しかしながら、問題があったのです。肝心の販売する場所がなく、お客様の問いかけに応えることができず、開発に携わった委員のわれわれは頭を悩ませていました。
 それでは、いっそのこと、販売する場所をつくってしまおうかとの意見があがり、商工業者の有志数名で直売所づくりの構想を立ち上げ、町商工会にバックアップしていただきました。同じ気持ちを持つ仲間を誘い合い、そして、町の一番の特産品である新鮮野菜も販売したいとの意見から、農業者にも賛同していただき、総勢20名で議論をはじめました。平成11年5月のことです。構想はどんどん膨らみ、町の大動脈である国道126号線沿いに販売施設を建設するだけににとどまらず、そこを町おこしの拠点にしたいと考えるようになったのです。行政には頼らず、自分たちで出資金500万円を集める目処をつけました。また、責任のある団体となるため、法人化の勉強もしました。


手づくり直売所をオープン
 そして、平成12年1月、組合法人となる第一歩の創立総会を開き、翌2月には、県からの認可もいただき、光町特産品販売企業組合を誕生させました。待望の販売施設(直売所)は皆の手づくりで約3か月を掛け作り上げました。プレハブづくりの粗末な施設ですが、とても愛着のわく施設です。
 いよいよ、オープン日。扱う町特産品は、「ネギのど飴」や「ねぎ入りソーセージ」だけでなく、町中に声を掛け、おいしく新鮮な野菜をはじめ、手づくり味噌、地酒、果物、花、植木など多くの町産品やアイガモの卵といった珍品もとり揃えました。いよいよ、町おこしのスタートです。
 オープン当初は、新聞等のメディアに取り上げられ、町外のお客様に多く来店していただきました。わざわざ、50kmの道のりをかけ来店していただいたお客様等に接して、本当にありがたく思い、本当に開店して良かったと感じました。光町が町外に向け情報発信ができた瞬間でした。また、町民からも大変支持され、「町特産品の多さにびっくりした。」、「お土産には、ここの商品を贈ろう。」などのご感想をいただきました。
 開店後は、こうしたお客様の期待に応えるべく、町の良さを理解していただくことから始めました。町をPRする特産品はもちろんのこと、生産者から直接仕入れる安心感や朝取り野菜等の鮮度感の提供、対話のできる雰囲気づくりに心掛けました。
 こうした努力の成果かどうかは解りませんが、「ここの野菜はすべておいしい。」とか「アイガモの卵を買うために1時間かけてきた」、「従業員さんたちと会話ができて楽しい」「生産者の顔が見えるから安心して買える」などのご意見をいただきます。
 特に、「従業員さんたちと会話ができて楽しい。」とのご意見は、最近はセルフサービス店が増え、商業者と消費者の会話がなくなったためだと思われます。買物する楽しみの創出、住民同士のふれあい等、われわれ中小企業者の力が発揮できる領分が見えてきたように思えます。昔の商店は、コミュニティの役割を果たしていたのだなとつくづく感じました。我々中小企業者の役割は、「地域とのふれあいづくりにあるのだ」と皆で話し合いました。これをテーマに今後事業展開して行こうと決めました。そうすれば、この直売所も繁盛するに違いないと。


生産者の顔が見える・お客さんの顔も見える
 「生産者の顔が見えるから安心して野菜が買える」とのご意見は、店内に生産者の写真やコメント、そして、プライスカードには、生産者や販売者の名前が入っているからです。もちろん、生産者等も名前や顔が出るからには、良い商品を提供するよう努力をしています。生産者がお客様からいろいろな質問を受けている光景をよく見かけます。お客様は生産者の顔が見えないとよく言いますが、生産者もお客様の顔が見えないのです。どんな人に食べてもらっているのか、それを食べての意見などは、非常に参考になり、「おいしかったよ」と直接言われると、とても励みになると言っております。このようなことの積み重ねから、「地域とのふれあいづくり」の重要性を認識したのでしょう。
 しかしながら、直売所を開店してからの1年間は、商品の強化と直売所の円滑運営だけしかできなかった感じがします。愛される店づくりをするためには、まずは、採算に乗せることが不可欠だったからです。お陰を持ちまして、直売所は年間来店者数5万人強ものお客様がいらっしゃり、賑わいを創出することができました。


地域とのふれ合いづくり
 売上も順調に推移してきた2年目は、当初目指した町おこし事業に取り組めるようになりました。もちろん、コンセプトは「地域とのふれ合いづくり」です。
 まずは、顧客・町民参加型のイベントを手掛けました。当直売所は、植木や花も取り扱っていますので、これを事業として営む組合員が、ガーデニング教室を開催することにしたのです。1回目は、花の種の蒔き方や寄せ植えの方法に関する講習会を実施しました。これが、好評で、2回目は、家庭菜園の上手な仕方についてを野菜農家の方が指導しました。3回目は、家庭の植木の育て方を植木職人が行いました。指導する皆さんは、その道のプロですので、参加者は熱心に耳を傾け、見学者も多くなってきております。
 また、料理教室も好評を博しています。これを指導する先生も、直売所で惣菜を販売しているプロです。若い奥さんたちも見学にきてくださいました。こうしたやり取りが、昔あったコミュニティだと感じます。
 さらには、子ども向けのイベントを実施したいと考え、ポニーの試乗を行いました。実は、このポニーは組合員が飼育していたのです。ポニーを提供した組合員は、子どもの喜ぶ顔が本当に嬉しかったそうです。
 こうして、「俺のところは、こんなものがあるよ」、「俺は、こんなことができるよ」など、組合員たちは町おこしに積極的になり、地域との良い繋がりが芽生えてきました。


ホームページも開設
 時代に即応するため、情報化にも取り組んでいます。千葉県中小企業団体中央会や町商工会の指導をいただきながら、パソコンに詳しい若手組合員がリーダーとなり、ホームページを開設しました。当直売所を全国に発信するのが一番の目的ですが、ゆくゆくはネット販売によって光町ブランドを拡販していくのが狙いです。まだまだ実現は難しいのですが、少しずつではありますが、組合員の情報化推進がはかられてきました。今後は、知識を磨き、買い物に行けなくて困っているお宅からパソコンやFAXで注文を受け、宅配するサービスができたらいいなと考え、勉強しているところです。


直売所の隣りに花壇つくる
 そして、開業3年目の本年、事業の拡大を検討した結果、当直売所の隣接地200坪を借用することにしました。ここには、花を植え、来店者や町民の憩いの場とすることに決めました。組合員だけの手で大地を削り、花植えと種蒔きをしました。去る6月4日のことです。今までは、ポツンと直売所だけがあったのですが、花を植えたところ、とても目立ち、粗末だった直売所も不思議と洗練されて見えてきました。国道を通過するドライバーは、一様に花壇を見てくださり、改めてここに当直売所があったのだと気づかれた方もいらしたようです。只今、組合員一同は、蒔いた種がきれいに咲くのを首を長くして待っています。そして、満開の頃、イベントが開けたらいいなと話し合っています。この花壇が人気のスポットになる気がしてなりません。
 この組合は、商業者、工業者、サービス業者、そして農業者の様々な業種の有志が一緒になって作った組織です。その上、年齢層も様々。70代の大先輩から30代の若者で構成しているので、いろいろな話題がでます。そして、いろいろな議論をしています。このような輪をもっともっと広げ、みんなで町おこしができるようにしたいと考えております。
 『お客様や町民が集い、町を賑やかにし、いろいろな話をし、そして助け合う。』、そういう町にしたいと思い描きながら、商売に励んでいるところです。