「ふるさとづくり2002」掲載 |
<企業の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
地域産物を生かし顔の見える産地をめざして |
長崎県有家町 有家町技おこしグループ |
有家町は、雲仙山麓に位置し、恵まれた温暖な気候と肥沃な土地を活かし、葉たばこ、有家梨、ハウスみかん等の果樹、施設園芸をはじめとする農業も盛んで、さらには有明海よりの恵みも受けています。日本で最初に銅版画印刷が有家セミナリヨで行われ、400年前の銅版画セビリアの聖母が復刻されました。中世時代にはキリシタン文化が栄えた歴史を有しており、銅版画を復刻献上するなど、文化遺産によるふるさとおこしも進めています。幾多の迫害や重税に耐え忍び、農業の副業として携わってきた手延そうめんも、地球上最大の産地を形成するようになりました。だが、他の産地と違い製造業と委託加工業の両面機能を持っているため生産高では全国一と思われるが、品質の均一やブランド化が遅れ他産地の6割にも価格が満たないのが現状です。現在、町内195の作業所で、年間50億の生産高がありますが、平成3年の雲仙普賢岳噴火災害も大きく影響を受け、さらには近年特に価格の低迷により存続の危機にさえあります。 このような状況下、50億の原めんに付加価値(産地の思いやり)を付け、地元に還元するためには、どのような取り組みをしなければならないか、平成11年11月11日より手延素麺組合及びグループの若手を集めフィージビリティー・スタディ(F/S)調査等を実施研究してきた。幸い国、県、町や民間企業の協力を得て、即席性、機能性、特殊性を重点に、地元産物を最大限に利用した製品を開発し、食味食感テストを繰り返しながら改良を加えつつ、調理時間短縮、おいしさや健康志向が重視される現在、次代が求める「めん」ヘと近づけてNEW麺を7種開発しました。 次代の求めに応えた「厳選素材」と「こだわり」製品の開発 ○「即席性」に重点をおいた商品開発 手延素麺は、湯を沸かし、茄で、水洗い、薬味やだしを作って、ようやく食べられます。手間がかかるので若い世帯では食卓に並ばないので子どもたちが食べないようになってきており、当然大人になっても食べてくれなく、自分の子どもにも食べさせません。 そこで、本来自然食品でもありカロリーも低くダイエットにも最適といえる手延素麺をカップで提供したら、カップに慣れた若い世代が目を向けてくれはしないか。そして素材にこだわり手延べ本来の味と強いコシを残したのどごしを生かし、お湯を注ぐだけで1年中気軽に味わえる製品なら高齢者の方も目を向けてくれはしないか。さらには、本来素麺は自然食品でダイエットにはもってこいの食品なので若い女性が目を向けてくれないか。と考え、「即席カップ有家そうめん」を開発した。ひとつの容器で、冷やしとあったかの2種を味合うことかできるもので、全国1000名の方に食味いただき、意見を聞き、そのデータに基づき本グループが改良に改良を加え開発した。製品の特徴は、いったん茄でた手延そうめんをマイナス90度で凍結乾燥させたノンフライ麺を使用していることにある。沸騰したお湯を注いで3分で完成する。お湯を捨て、内封のスープを付けだれで食べれば「冷やしそうめん」、お湯を捨てずスープを注げば「あったかそうめん」になる。 厳選された素材を使用しており、ふりそそぐ太陽と大地の恵みを包み込んだ「むぎこな」は、1粒の小麦でも場所によって異質なため、これらの組み合わせで数多くの種類の小麦粉ができます。女性と高齢者を思い描き、色の白さ、風味、コシやのどごしなどトータル的食感。いわゆる「ふくよかな食感」を追求したため、むぎこなでは頂点のものを使用した。塩は、五島灘の天然塩を使用。にがり分によって麺への浸透が均一となり、にがりのマグネシウムが酵素の作用を活発化するため腰の強さ、艶、丸みある味わいを引き出しています。さわやか雲仙高原の深地水。名水の里ならではの「みず」へのこだわり、海と山の雄大な自然が育んだ水である。太陽の恵み一杯受けたひまわり油は、向日葵の種子からの贈り物。トコフェノールのビタミンE活性はかなり高い。多価不飽和脂肪酸(二重結合を二つ以上持つ脂肪酸)100mgに対しビタミンE80IUの割合で摂取する必要があり、ひまわり油は非常にバランスのとれたもの。麺をやさしく包み込んだひまわり油は、風味だけを残し取り除きます。まぼろしの食材「Superキヌア」は何世紀もの間、インカ帝国の主食として食べ継がれてきた"母なる穀物"です。近年そのきわだった栄養価に注目したNASA(アメリカ航空宇宙局)により宇宙食として研究開発しています。本製品に栄養価面の向上と、茄でのび防止及び食感向上のため今回はキヌアを添加。最高の小麦粉との調和により茄でのびが最大限におさえられています。辛さの中にほのかな旨さを引き出す七味は、好みにより七味スパイスが加えられるようにした。食欲増進作用に加え食感食味を引き締める効果があるようにしました。麺との相性を追求した特製スープは、五島産あご(焼き飛び魚)、鰹節、昆布など贅沢な材料てダシをとり有機丸大豆醤油で調味した風味豊かに仕上げています。 ○「機能性」に重点をおいた商品開発 「健康保持長寿そうめん」は、枇杷の種子をパウダー状にしたものやキヌア、マカなどアンデス地帯で栽培された栄養素の高い穀物が含まれたそうめんである。タンパク質、ミネラル、食物繊維(玄米の10倍)、アミノ酸等を豊富に含んでいる。離乳食や病後食としても優れており、育ち盛りの子どもから高齢者まで幅広い層に提供でき、体と心にやさしく、食べる人を思い描き、心を込め開発した製品である。 ○「特殊性」に重点をおいた商品開発 「手あぶりグルメそうめん」は、そうめんの極上品といわれている「老成物(ひねもの)」をヒントに開発された商品である。手延そうめんは木箱に入れ蔵に3年保存し出荷するものが最高といわれているが、茄でる寸前に炎の洗礼を受けさせることで老成物(ひねもの)となり、極上の手延そうめんの味わいを発見しました。また、「ハイブリッド輪状二層麺」は、異質の麺帯を組み合せることにより、利点の引き出しに成功した麺である。外側を硬く製造し、麺芯に向うほど柔らかく、麺芯より外側に向けて限りなく「ふくよかな食感」を追求し伝統的な製法に新たな技術を加えて完成させている。現在は、原価圧縮、長期販売するための添加物、保存料、化学調味料を混入した食材が溢れ、現代人の体を少しずつ蝕んできています。発酵菌という微生物が介在するだけで、かくも旨味が増すのか。発酵食品が人類の歴史の中で必然的に生まれ、同時にそれを育んできた先人の知恵の結晶で未来に残すべき最高の食品といえます。そこで先人たちが残した知恵と滋味あふれる日本独特の食文化を見直した製品である「発泡老麺(はっぽうろうみゅん)」は、りんご、ぶどう、じゃがいも等をスライスあるいは乾燥した物に水を加え自然発酵させて得た発酵種を使用したそうめんである。中華饅頭などの生地に使用される「老麺法」を応用した製法を取り入れている。特に発酵力、芳香に優れている。当製品は老麺のもつ発泡力により、乾うどんの茄であがり時間の短縮を実現した。茄で延びを押さえた「茄でそうめん」は、日配品として家庭に持ち帰り、食事をする人数に合わせて、手軽に各種料理に利用できるよう配慮したものである。 今後の活動 平成13年11月23日池袋サンシャインコンベンションホールにて試験発売を開始して第15回ニッポン全国むらおこし物産展(主催…全国2808の商工会)においては、全国47都道府県より5000品目が出展された中、食品部門で全国連会長賞の受賞や第33回長崎県特産品新作展では優秀賞(長崎県知事表彰)を受賞した。また、むらおこし白書の中で特産品開発及び販路開拓で成功した事例として全国に紹介されるなど、各種マスコミに取りあげていただいたので、全国より注文が舞い込んできている。 このように、産地内が様変わりしてきており、これまでは手延そうめんの製造だけに従事してきた業者が、単純に作ることだけではなく、麺の素材である小麦、塩水、植物油、自然添加食材等の基礎知識を学ぶことで、日頃何となく作業していたことが理論づけされ、毎日の作業に興味がわくので個々の研究が盛んになってきている。それらの意見を取り入れた改良型製品及び新製品の研究開発中であり、製品のバリエーションを増やし付加価値を高め、所得向上を目指している。今後も製品製造業者組織を核として、起業化を進め、あわせて組織の融合を図っていけば必ず産地振興につながるはずである。平成16年度には、現在の「有家町技おこしグループ」を母体とする法人格を持つ組織の設立を予定しており、「手延そうめんの里」などの構想は実現に向け、着実に前進している。「顔の見えない産地」である有家町は、そうめんの里づくりをはじめ農業・漁業をはじめ地域全体の振興に向け第一歩を踏み出したといえる。 |