「ふるさとづくり2002」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
『はさま木ノ葉の森』創り |
千葉県船橋市 飯山満中学校区青少年の環境を良くする市民の会 |
欲張りなことを考えました。人手の入っていない荒れ果てた森林をきれいにして自然環境を保護していく。その中を野鳥の声を聞きながら地域の人たちが自由に散策できる。その作業をするにあたって、近隣の中学生に森の命名と完成図を考えてもらったり、一緒に作業をして汗をかくことにより心の交流を深める。 そんな願望がこのほど実りました。 私たちの世代の多くは地方から出て来て、現在の所に居住しています。ここで生まれ育った子どもたちはここが『ふるさと』なわけです。都市化が進んだ近隣は、小魚が生息する小川はなく、ホタルやトンボが乱舞する光景は瞼の中にしかありません。子どもたちは学校と家と塾等への往復の日々を過ごしています。 川や池の中で泥んこになって遊んだり、山で小動物に遭遇することもチャンバラごっこをして遊んだりすることもありません。自然の中で少しぐらいの擦り傷やタンコブを作って遊ぶくらいの元気さが欲しいものです。 平成14年4月からは完全週5日制となり、すべての土曜日も休校日となりました。文部科学省や教育委員会は「土日は子どもを家庭や地域に帰す」といっていますが、子どもたちを取り巻く環境は、その制度以前とほとんど変わっていません。学校と子どもたちと家庭と地域の接点を受け持つ私たち「市民の会」はこの制度を見込んでどのような対応をしていくか、みんなで考えました。 「この森創りを総合学習の時間として活用しよう」 平成13年1月に、本会が中心となり、前述の目的を持って計画を練り始めました。幸いにも、船橋市立飯山満中学校の北東部で、中学校と隣接した場所に鬱蒼とした森林があることに気がつきました。さっそく現地に入りましたが、バイクやテレビ等の家庭用粗大ゴミ、空き缶や空き瓶、ビニール袋に入ったゴミ等が散らばっていました。北側はやや傾斜地になっていて、杉の木や雑然と生えた雑木にフジ等の太いツルが絡み付いて、多くの樹木が枯れていました。そんな状況でしたが、手を入れればなんとかなると直感しました。 早速、飯山満中学校の校長・教頭先生に目的と計画を話しました。学校側は大変興味を示して「この森創りを総合学習の時間として活用しよう」「できたら最初から一緒に作業をして生徒たちにいろいろな体験をさせたい」との返事をいただきました。 問題は、この土地の所有者が土地を貸してくれるかどうかです。 法務局で公図をとり、所有者を調べました。3名の所有者がおられましたが、全員が近くに住んでおられ、勇んでお願いに行きました。全員の方が「民間でなく船橋市が借りてくれるならいい」との前向きな返事でした。 今度は、公園等の窓口である船橋市みどり推進課への交渉となりました。最初は緊縮財政のことでもあり、なかなか期待する回答がもらえません。「船橋市が借りてくれれば私たちがボランティアを募り作業をします。船橋市には過分の負担をお掛けしないで市民の森を作ります」等と依頼し続けました。そして、ついにOKの回答を得ました。 船橋市が測量図を作成してくれている間に、ボランティア募集を地域に回覧したり、ミニコミ紙に掲載しました。その結果、なんとおよそ50名の方が応募してくださいました。地域の方よりも地域外の方が多かったのには驚かされました。作業はできないが記録を写真やビデオに撮ってくれるというボランティアもおられました。 作業経過 1.船橋市と土地所有者の契約前でしたが、土地所有者の了解をもらい、平成13年9月29日(土)に飯山満中学校の体育館で1年生と2年生の170名の生徒に初めて「森創り」の話をしました。あまり興味がなさそうで、ちょっとガッカリしましたが、説明後に全員で森に入りました。生徒たちの第一声が「うわぁ きったねぇ」でした。全員でゴミ拾いをしました。時間が経過すると慣れてきたせいか、元気になって一生懸命作業をしていました。この日の目的は、ゴミ拾いと、現地確認がありました。どんな名前がいいか、どんな森にしたいかの実地調査です。 ゴミを1か所に集めると大きな山になりました。(このゴミは船橋市により回収してもらいました) 2.10月に船橋市と土地所有者の土地賃貸契約書が取り交わされました。 3.11月21日には生徒たちの希望する森の名前が集められ、中学校と市民の会の役員が集まり検討しました。50種類程の名前があり、その中でこの森に一番ふさわしいと思われた2年生の女子が書いた「木ノ葉の森」を選択し、地域を示す「はさま」を加えて「はさま木ノ葉の森」と命名することにしました。 4.作業は12月から本格化し、水曜日、土曜日、日曜日のうち不定期でしたが、毎月3回から4回行いました。ボランティアの方々の都合のいい日の都合のいい時間に来てもらいましたが、ほとんどの方々が午前9時から午後3時までのフルタイム作業をしてくれました。全くの無報酬です。本会で昼食とみそ汁を用意しました。枯れ枝等を燃やしながらみんなで和気あいあいと食べる昼食はなんともいえません。たまには焼き芋もしたりしました。延べで24日、350名におよびました。 5.生徒たちは総合学習の時間に、森でボランティアの方々と一緒に作業をしたり、教室に戻ってからは班別に分かれて、森の計画図をつくったり、手作りの看板を製作しました。 6.作業の順番は、 (1)下草を刈ったり下枝を切ったり間伐をした。 (2)遊歩道を作る場所の切り株を抜いたり整地をした。 (3)間伐した材木を1mの長さに切って、遊歩道の両側に約2m間隔で打ち込んでロープを廻した。 (4)広場の整地は人力では大変でしたので、ブルドーザーを導入して2日間でほぼ平らにした。 (5)船橋市から頂戴した丸太を、森の外周に2m間隔で約200本打ち込み、太い針金を3段廻した。 (6)広場に花壇を作った。 切った枝と葉は集めて腐葉土にして森に返します。太い枯木は虫の穴が開いているので外周に土止めがわりに使い、春に虫が出てくるのを待っていました。(5月にクワガタ等が発生した) 卒業が間近となった3年生には、本会で購入した200本のクヌギやコナラの原木に船橋市の農業センター所長の指導により、ドリルで穴を開けてシイタケの菌を植え込んでもらい、森に運んでもらい並べました。この原木から採れるシイタケは皆で食べたりバザー等で販売する予定です。また、原木が朽ちるとカブト虫が自然発生するということで楽しみに待っています。 はさま木ノ葉の森開園 平成14年4月26日に、船橋市長はじめ担当部課職員、土地所有者、地域の方々、PTA、ボランティアの方々をお招きし、飯山満中学校生徒全員と隣接する船橋市立飯山満南小学校の6年生児童と本会役員等約500名により「開園式」を行いました。 飯山満南小学校も飯山満中学校同様に総合学習の一環でこの森を活用することになり、6月11日に、4年生に空ペットボトルを持参してもらい花壇作りをしました。広場に作った花壇に花を植えたり種を蒔いて管理してもらいます。 完成した「はさま木ノ葉の森」は、地域の散歩コースに定着し、毎日のように多くの方々が訪れています。また、子どもたちの格好の遊び場になっていて、土日はもちろんのこと、平日でも学校を終えた子どもたちの歓声が毎日のように聞こえてきます。 しかし、何よりも嬉しかったのは、飯山満中学校の生徒の感想文で次のようなものが大半だったことです。 ◇『こんなに汚いところが公園(市民の森)になるわけがない』と思っていたが、森で作業をしていくごとに『なるかもしれない』『必ずできる』と変化していき、ついには『やればできるんだ』と実感した。 ◇『ボランティアの人は何でただ働きをするのか。お金をもらえる仕事がいっぱいあるのに』と思っていた子が『そうか、ボランティアの人は自然が好きなんだ』『私もボランティアをしよう』と思ってくれた。 はさま木ノ葉の森を渡る風が心地よく感じられるこの頃です。 |