「ふるさとづくり2002」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
熊野に誇りを持っていきいきと語れる人材を育てる |
和歌山県中辺路町 漂探古道 |
応募に当たって 世界遺産に登録されようとしている「熊野」は日本人にとって大きな心のふるさとであると思います。ふるさとが栄えるには、その土地の良さ・楽しさ・美しさを人々により深く理解してもらうことが大切であり、そのためには土地の歴史・自然・人々の暮らし・産業についてよく知り、誇りを持って生き生きと語れる人が大勢必要であると思います。活動を始めてまだまだ日は浅いですが、ここに日頃の活動を報告いたします。 「標探古道」設立の目的 熊野の歴史、自然、産業、暮らしについて中辺路町内及び熊野古道、さらには周辺の観光地を語りながら案内することができる知識と技能をもった人材を養成するとともに、それができる人材がいるということを広く発信し、訪れる人を迎えることを目的としました。 わがふるさとを熱く語ろう。 語るためにはよく知ろう。 知るためには学べ。 そして驚けこの価値の高さに。 設立の経緯 平成11年、南紀熊野体験博が開催され、そこに熊野古道の語り部として参加した有志は、月2回の学習会と実施講習会を開き、古道を散策される人たちの要請に応えるべく準備をしました。 熊博期間中は200を超す団体を案内し、多くの人たちと出会い、語らい、ともに歩くことで、熊野の歴史の重み、自然環境のすばらしさをガイド自身が再認識しました。 平成12年度には、単なるボランティアとしてではなくプロ意識を持った語り部を目指そうと決意し、学習会を「漂探古道」(古道を巡りながら歴史を探る)と命名しました。わが故郷「熊野」をより多くの人たちに知ってもらい、このすばらしい文化遺産を後世に語り伝えていくべく研鑽を積んでいこうと考えたことがグループ結成のきっかけです。 取り組んできた活動「語り部養成セミナー」(主として平成13年度について報告) 【ねらい】熊博で熊野を再認識した語り部が、地元の人々に向かってあらためてその価値を伝えることを目指し、中辺路町および近隣市町村の人々を対象にセミナーを開講しました。 【方法】セミナーの目標と内容を大きく三つに分け以下に示します。 (1)必要な知識の修得 入門という意味で、最も基本的な知識を修得するために講義形式をとりました。「熊野古道とは」、「中辺路の歴史と風俗」、「紀伊半島の自然史」等の講義を実施。 (2)基本構想の確立 活動の関係者が、共通の夢(実現可能な)を描くことが重要と考えました。討論により、訪問者が求める語り部像、地元のくらしの理想像、自然とくらし全体としてのふるさと像をもとめ、一致点を探りました。 (3)技術・技能の修得 多くの旅行者を先導して歩く技術の修得(現地研修)を目指しました。 心に届く話し方(話し方教室)…座講と実習 語りの台本を作る…グループワーク 語り部デビュー…思い切って語りにチャレンジ ホームページを作る…指導と講習 【成果】セミナーおよび他の企画の記録と成果を列記します。 (1)12回のセミナーは各回のテーマにより出席人数に14〜40と差がありましたが、参加者延べ人数229人 (2)「漂探古道」定例勉強会 12回(月1回) (3)「漂探古道」定例現地研修 12回(月1回) (4)南紀21協議会主催の語り部養成講座およびイベントに10回の出席 (5)古道散策ツアー案内30〜40回(1回当たり客数10〜40名) 学習会開始当初(平成11年度)16名であった会員数は、12年度24名に、13年度の養成セミナーを通して9名増の33名となっています。 13年度から、中秋の名月に「観月会」を企画するなど古の行事の再現をして「温故知新」を目指しております。お孫さんを連れての参加、10代、20代の方々の参加を期待しています。 成果について(上記平成13年度活動記録の内容について) (1)セミナーには、総人口わずか4000名弱の中辺路町において、延ベ200名を超える人々の参加が得られました。 (2)セミナー参加者の中からIターン2名、Uターン2名、Noターン(地元)5名合計9名の入会者を迎えて、メンバーは設立時の2倍を超え33名となりました。 (3)上記(1)(2)は数字としては小さくても、草創期にあるグループの活動としては、大きい成果と自賛します。特に自らが住む土地の価値の高さを再認識することを目標とした点では、Iターン、Uターン者の加入により、はっきりとした成功を収めたと考えます。 (4)国土交通省外郭団体「ハウジングアンドコミュニティ財団」から活動助成対象に選ばれ、町内外への知名度が一気に上昇しました。そのため活動に弾みがつき、次の(5)(6)の成果もこの効果が大きく働いた結果だと感謝しています。 (5)自治省外郭団体自治体国際化協会の「2001年日韓地域づくりリーダー交流事業」に、原則1県1人のところを「漂探古道」会員から2名が和歌山県推選で参加を認めていただきました。 (6)会員1名が《語り部名人》として中辺路町から推選をうけ、県表彰「紀の人賞」を受賞しました。 (7)「漂探古道」主催の行事が、地元紙紀伊民報に多く取材・掲載されるようになりました。 (8)成果と効果が相まって、会員の活動に大きな自信がつきました。 今後の取り組みについて 【若返り】「語り部」という名称から、どうしてもメンバー構成が高齢者に偏りがちです。アイデアはいっぱいあるが時間がない。やる気満々だが体力がない。若い人の参加を得る工夫をしたい。 (1)講演をしていただいた大学の先生から、学生の地域活動参加の可能性について打診を受けています。都市の青年たちに、村づくりの知恵と元気を借りるための企画を考えたいと思います。 (2)「語り部」にこだわらず、熊野をくまなく知ろう。国道、県道、町道、林道、樵道、獣道、知り尽くしていざというときすぐどこへでもアクセス! 熊野レスキュー隊を編成しよう。これはスポーツ感覚! 【多様性】会員が増え、来訪者が増える、これはうれしい。でもただ一度古道を歩くだけではこの土地の本当の良さを解かっていただけないと思います。 (1)「古道」にこだわらず、熊野古道以外のルートの開発! シャクナゲ峠、つつじの尾根、笹ゆりの道、もみじ街道、まだまだ知られていないコースがいっぱいあるのです。 (2)「歴史」にこだわらず、お客さんの要望に応じ、かつ会員自身の興味と特技を生かせるような部会の設置と、メニューの開発を目指したい。例えば、 ●森林インストラクター部会による 自然観察コース、山菜泥棒ウォーク、きのこ盗りコース ●スポーツインストラクター部会による 健康ウォーク、リフレッシュコース、のろのろコース ●趣味部会による カメラマンコース、俳句ィング、迷和歌ウォーク などのさまざまな企画を考えています。 【原点を忘れない】今後の活動方向についてはさまざまなアイデアがうかびます。ですが歴史、古道にこだわらないとはいえ、基本的な知識はおろそかにできません。一方、熊野については多くの書物が出版されています。学習する場合、うっかりすると熊野研究文献の研究になってしまいかねません。 可能な限り元となる記録や古文書に戻って、読みと解釈にチャレンジする研究コースをも設定したいと考えています。 |