「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

市民参加によるまちづくりと地域コミュニティ
青森県むつ市 ボランティアグループまちづくり倶楽部
 われわれは平成10年4月の結成以来、自分たちの足と「住民参加」でまちづくりを実践する倶楽部で、「継続は力なり」をスローガンに微力ながら熱い思いと活動を継続させ、いつの日にか自分たちの青写真のうちの一つでも実現できるように頑張っている団体です。活動の基本は「時速3mの街歩き」。歩くことで今まで見えなかった部分が見えてくる。子どもたちや一般の方々を巻き込んだワークショップはいつも楽しく賑やかです。「みんなで創る=住民参加で創る」まちづくりは、いろんな人のいろんな思いが具体的になり、責任感から行動へと目覚める人も少なくありません。倶楽部のメンバーは現在「参加のさせ上手」に向けて修行しています。
 活動内容は全部で六つのセクションに分かれており、その概略を紹介します。


中心市街地活性化

 平成10年9月に開催された「98住宅フェア」を機会に『わが街探検隊』を結成し、「自分たちの街が今後どのようになっていくのか」を考えるべくタウンウォッチを開催した。市民を参加させた活動が評価され、「むつ市中心市街地活性化基本計画」を策定する審議会のメンバーにも選出された。
 むつ市は、田名部町と大湊町が昭和34年に合併してできた市であり、40年経た現在においても、両地区の「わが街」の思いは強いと感じた。しかし、社会経済の景気低迷、商業流通形態の変化などに伴って、公害幹線道路沿いへの大型店舗の立地が進み、商店街に内在する歩行空間や駐車場の不足、魅力的な店の不足及び後継者の不足などの諸問題が複雑に絡み合って中心市街地を取り巻く環境は、非常に厳しさを増している状況にある。
 将来を担う高校生や一般・商店主をはじめとした市民参加型のワークショップを展開し、各地で2回ずつ計4回のワークショップに携わり、活性化のためにすべきことは何かを話し合った。
 倶楽部としては、田名部・大湊地区といった旧市街地の再生のほか、下北駅・中央地区・克雪ドーム・海という点から面として捉えるまちづくりを提案したい。


こうやまきの森「代官山公園」

 平成11年5月の「わが街探検隊(田名部地区)」で地域の宝物探しはここに端を発した。翌年5月には景観アドバイザーの田中一博先生の基調講演をおこない、「景観とは、総合的なものであって単に目に見えるものだけではなく、文化あるいは生活と一体となったものである。街のイメージは間・筋・角の三つの要素で印象づくもの」と紹介いただいた。公園の再生へのアイデアは300項目にも達し、“緑・アクセス・利用・施設・歴史・眺望”の六つがキーワードになった。
 平成13年2月の「代官山公園のアイデアコンテスト」では絵や作文で子どもたちのアイデアをたくさんいただき、同年8月の「代官山公園を創ってみよう」では「こうやまき」をシンボルに小学生を交えて夢のある模型を作成。
 今後は学校・町内会・商店街・行政との協働体制を整え、企画・整備・管理運営を住民主導で実践できればと考えており、むつ市では平成15年度予算に住民参加での公園整備計画が盛り込まれた。


わが街のゴミ問題を考える

 平成10年11月に高校生を含む一般市民参加のワークショップ「わが街探検隊(大湊地区)」が開催された。街を歩いていて、ゴミ置き場が街の景観を壊しているケースが報告された。翌年、小学校の夏休みの宿題めがけて“ゴミ置き場のコンペ”を開催した。「ゴミはそこの住人のモラルや文化のバロメーター」と呼びかけた。小学生は標語などで参加し、むつ工業高校生からはゴミステーションのアイデア、真剣な市民からはゴミ置き場のデザイン、川柳が寄せられた。10月にはより深く真剣に話し合おうと“ゴミ問題の特別ワークショップ”を開催。ゴミの減量化・リサイクル・転用・生ゴミの活用法・意識の問題やルールづくりなど、非常に次元の高い議論があり、翌年2月におこなわれた“NPOフォーラム(環境部会)”の成果とともに、むつ市長に報告するに至った。むつ市からは、ゴミ問題は「心の教育」のなかでも、とくに“道徳心・公徳心”について非常に重要で、地域活動との連携のなかで、できることから実践していきたいと回答をいただいた。
 ゴミ問題を考えることは、無駄をなくし、創意工夫して“楽しみながら”生活するのに役立つことが多い。今後の展開としては、市民参加のもと、市民版「環境行動計画」づくりや無駄なものをなるべく出さないように、ゼロエミッションのまちづくりの取り組みなどに発展させたいと思っている。


『まちづくり銀行』創設

 「街の中には、いろいろなことに秀でた名人・達人がいる。そんな人たちが銀行みたいな所の引き出しに登録されていて、何かで困った人がそこへ行って相談する。それでは、こんな方いかがでしょうか。という具合に…」これは平成11年10月のワークショップの中でわれわれの応援者である青森県職員清藤正司さんの発案である。これらボランタリー精神旺盛な人たちとの出会いがあり、その一人一人が力を合わせて街の問題に取り組めば、必ずや将来“心の通い合う社会ができるはず”と始まったボランティアのネットワークづくりプログラムである。
 平成12年11月には、むつ市立大平小学校(当時4年生)や青森県立むつ工業高校生の皆さんにも参加してもらい、57名で“自分にもできる、ボランティアのメニューづくり”のワークショップを開催し、6テーマ224項目にわたるメニューが登場した。子どもたちの純粋な考え、発言に痛く感動した。
 同時に助け合いを活発にしながら、その“お礼”の方法を分かりやすくするために、エコマネーの実験が試みられた。むつ・下北のエコマネーの名前は、まちづくり倶楽部の“結”(ゆい)である。結の命名は助け合いの“結講”の結である。第1回の流通実験は前述の大平小学校。子どもたちの“助け合いのエネルギー”が十二分に伝わってきた。第2回の流通実験は、共同住宅を含む町内会の2班でおこなわれている。テーマはゴミの減量化(再使用含む)とコミュニティの再構築で、今も続けられている。
 エコマネーについては北海道栗山町で開催された“国際会議”にも参加して、他地域・異種通貨などの調査・研究をも続けている。兵庫県宝塚市の“まちづくり協議会”での取り組みも取材して、将来につなげたいと思っている。
 今後の展開としては、むつ市ボランティア連絡協議会のボランティアのネットワークづくり(IT化)に合流して、この活動を充実させていきたいと考える。エコマネーについては、さらなるテーマ・地域・活動団体などへ紹介して、活用してもらえるように発展させていきたいと考えている。


市町村合併

 まちづくり倶楽部の活動を始めて3年目、平成12年に青森県市町村合併懇話会のメンバーに選ばれた。
 どこの地域でも歴史や伝統(個性なども)が失われるようなものであってはならない。自らの地域をどう創っていきたいか、住民が積極的に参加して意見を出し合うステージづくりに、活動の力を注いだ。行政と協働して進めていければ効率的だと考え働きかけたが、なかなか協働体制とまではいかなかった。
 いずれにしても、このテーマは合併する、しないにとらわれず、地域の将来をいろんな方面から話し合う絶好のチャンスであると、まちづくり倶楽部は考え、平成12年11月に勉強会を開催、149件もの意見・提言を見るに至っている。平成13年2月のフォーラムや12月の下北半島ミニ懇話会では、行財政の効率化はもちろん、スケールネットや地域の自立、数々のデメリットなどの把握に努めたが、一般住民の関心は今一つ盛り上がりを見せていなかった。そこで、平成14年2月、市町村合併をキーワードに「まちづくり公開討論会」を弁論コンテストとパネルディスカッションの手法で開催して、地域住民の意識の高揚を訴えた。
 平成14年5月、むつ・下北は1市8町村で合併研究会を立ち上げ、翌年1月にはその研究成果を発表した。非常に具体的な数値を基に報告されてはいる。しかし、報告書は一部の研究成果であって、本質的に地域住民がまちづくりに参加して、自己決定・自己責任、ひいては地域の経営(仏教用語も含む)に関心を持つ、責任を持つまでの力を持っていない。この部分をどうするべきかが、まちづくり倶楽部に課せられた現時点での問題であり、新たなるコミュニティ自治の仕組みづくりを研究するタイミングでもある。


下北半島の財産づくり・蔵シリーズ

 古い建物はそれなりに立派な過去を持っていて、ほとんどの当主は、その歴史について細かくひも解いてくれる人ばかり。その“いわれ”を聞いているうちに、地元の歴史を勉強することになってしまった。話を聞いて、当時をイメージするごとに先人の勇気と、生活へのバイタリティ、風土と作物・生産と建物を知り、さらに戦中あたりからの「他力本願主義」の悪い癖を感じるところとなった。
 このテーマはますます地域への愛着を深めるいい機会だととらえる。市内の写真集は24カットではあるが、まだまだ古い建物と歴史が存在する。平成14年は下北半島に範囲を広げて取材している。むつ市版とともに下北半島版の歴史的建造物写真集を完成させたい。
 平成14年11月、むつ市以外の人たちと“下北半島”をキーワードにワークショップを開催した。住んでいると気づかないこと、資源、食べ物、風景、精神的なもの、非常に刺激的なものだった。まちづくり倶楽部は“蔵シリーズ”をはじめとする、下北半島の財産をもっと発掘して仲間づくりを広げ、地域が自立して経営(仏教用語も含む)できるような、仕事づくりにつなげていければと考えている。

 以上の活動が評価され、平成15年4月に青森県主催による「第15回あおもり活性化大賞」を受賞。“継続は力なり”を象徴するものとなった。