「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

世界の人々とともに語り考え交流
茨城県水戸市  メサフレンドシップ
メサフレンドシップの20年

 「世界の人々と語ろう」、「世界に目と心を開き自分で考え、自分の意見を持とう」、「国際交流の活動に積極的に参加して楽しもう」をモットーに掲げ、1984年に設立されたメサフレンドシップは、地域に密着した国際交流のボランティアとしてこの20年間活動してきた。この20年間にメサを訪れた外国の人々は40数か国、600人以上に及び、離日後も交流を続けている友人たちも数多い。
 「アメリカは世界NO.1」といつも言っていたアメリカ人男性と本音で激しい意見のやり取りをしたディスカッション。彼は2年間の茨城県での生活の後、「メサと出会えてよかった。水戸は僕の第二のふるさとだ」と言って帰国していった。
 社会主義政権崩壊直前のルーマニアから日本にやってきた女性が語った生々しい苦難の生活も衝撃的だった。その後の祖国崩壊のニュースをともに聞き歴史の変革を共有した。
 また、控えめながらもパレスチナ人の苦しい立場を切々と話してくれたヨルダンからの男性。自分の子どもたちには「憎しみの連鎖を断ち切るために」平和教育をするしかないと力強く私たちに訴えていた声がいまも胸に響いている。現在の中国の躍進を予感させるように誇り高く「お国」を話してくれた中国人女性。アフリカの悲惨な現状を作ったのは西洋文明ではないかと涙を流して訴えたガーナの男性の話には聞く者一同反論のしようもなく声を失った。
 彼らの話を聞き、お互いに本音で意見を交わし個人として触れ合いながら、世界の歴史が大きく変化しているのを肌身で感じてきた20年であった。国籍、年齢、肌の色、性別を超えて対等の立場で話し合い理解を深めること、これこそがメサの目指す国際交流であると実感しながらさまざまな活動を進めてきた。このメサの姿勢に共感し賛同してともに活動に参加してきた外国の友人たちの多くがメサを「心のふるさと」だと言ってくれる。また、帰国後も機会があればメサを訪れて再会を喜びあった人もいて今も交流が続いている。
 このように長年継続して地域に「国際交流」の意義を発信し続けてきたメサが国内外の人々にとって心の拠り所になっているのは国際交流ボランティアグループのいわば草分け的存在としての証しではないかと自負している。


メサフレンドシップの現在の活動状況

■定例活動
(1)ディスカッション:毎週火曜日に実施。毎月平均3回、年間約30回、20年間で600回さまざまなテーマでディスカッションをしてきた。毎週20名前後の会員と数人の外国人が参加して共通語の英語で意見の交換をし、相互理解を深めている。

(2)交流:火曜日の定例会に随時、ゲストを招き自国の実情、自然、文化などを紹介してもらっている。このゲストアワーを通してゲストの住む地域、国を身近に感じ強い関心を寄せるきっかけになっている。会員の自宅を開放してひな祭りパーティーやバーベキューなどを開催。また料理教室は本場の味を楽しむいい機会になっている。

(3)日本語支援:メサフレンドシップのボランティア日本語教室は1987年にひたちなか市で開始、1995年には水戸市でも日本語教室を開く。現在までにメサの日本語教室で日本語を学んだ学習者は40数か国、述べ人数600人以上に及ぶ。日本語教室のほかに「日本語サロン」を1992年より毎週水曜日に開催し日本語による会話力の向上を望む学習者に場を提供し、日本語を使っていろいろな問題などを話し合い会話力向上の手助けをしている。

■特別活動
(1)メサ国際理解のつどい:定例会のゲストアワーを拡大して会員以外の一般市民と外国人との相互理解を深める場を提供するために1995年から「メサ国際理解のつどい」を開催している。「教育」「家族」「環境」「結婚」などのテーマでグループディスカッション、各国のお国紹介など内容を工夫している。毎回50人から80人の参加者があり、外国人も数多く出席している。ディスカッションの後はパーティーを開いてお互いの親睦を深める機会になっている。今年で9回目になるが年々、地域にも周知されるようになり若者の出席者も増えてきた。

(2)NGO活動:メサの国際協力活動として1996年より、ケニアのSCC(Save the Children Center、日本人女性主宰)―「マトマイニチルドレンホーム」経営、ストリートチルドレン更生事業などを実施―を支援している。現在、ストリートチルドレンだったシングルマザーたちが作っているビーズアクセサリーの販売をおこないその収益金を送るという形で彼女たちの経済的自立を援助している。またNGO茨城の会のメンバーとして楽器収集や海外支援街頭募金活動に協力している。最近高校生や小学生がNGOに興味を持って一緒に活動に参加することが多くなり頼もしい限りである。

(3)「国際理解教育推進」への参加:茨城県国際理解教育推進協議会主催の「ワールドキャラバン」事業のコーディネーターとしてメサ会員の数名が登録し、外国人講師とともに学校を訪問し子どもたちに「世界」を紹介するプロジェクトを展開している。

(4)通訳ボランティアなど:毎年水戸市世界陸上競技会のボランティア通訳として地域に貢献している。また国際観光振興会(JNTO)の善意通訳組織(SGG)の会員として水戸市周辺の観光案内のボランティア通訳としての活動もしている。2002年のワールドカップ開催時にはインターネット上の情報提供掲示板(JNTO主催)にも協力した。

(5)広報事業:メサフレンドシップ会報発行(年3回)以外に、英文情報レター「クルーイン」を毎月発行している。また独自に発行した観光ガイドブック「弘道館・偕楽園」(日英文)は地元の観光案内に役立っている。

(6)行政との協力事業:メサの数名の会員が県・市の国際交流協会の評議員になっている。地方自治体の要請で日本語教師養成講座の講師を担当している。また県が招聘する海外技術研修員の日本語講座の講師にもなっている。会員が住む市町村の行政側の国際交流事業にはできるだけ参加協力し地域の国際化に貢献するよう努力している。


メサフレンドシップのボランテイア活動の成果

 この20年間ボランティアグループとして会員が協力できる範囲で楽しみながら国際交流のさまざまな活動に取り組んできた。その成果として次のことがあげられる。

(1)個人の意識の改革:英語への興味から入会した会員がディスカッションを通じて「日本の常識が世界の常識ではない!」ということを実感し徐々に意識が変わっていった。得意の英語を使ってボランティアをすることが地域への貢献につながっているという喜びを経験して充実感を味わった。また、英語という「道具」を使って外国人と本音で語り合うことによって影響しあいそれが個人の人間的成長につながり、ひいては周囲の人々、地域の変化も起きるという相乗効果もある。

(2)外国人・日本人へ情報発信の場を提供:「ゲストアワー」や「国際理解のつどい」で外国の人たちに自分の国の紹介や自分のことを話す場を提供している。長年地域に住んでいながら彼らが情報を発信する機会は少ない。アイデンティティを持ち続けるためにも彼らが自国の文化を日本人に積極的に発信するのは大切だと考えるので、これからも彼らにできるだけ機会を提供していきたい。また日本人には直接外国人と接することにより世界を身近に感じ個人と個人のコミュニケーションこそが真の国際人になるためのキーワードであることに気づく場を提供してきている。
 発信の手段として外国人が「日本語」を習得する支援も日本語教室でおこなっている。日本語教室は、日本語の勉強はもちろんだが、地域に住む外国人にとって情報交換の場にもなっている。また同国人同士母語を存分に話せる場であり、ストレス解消の場にもなっているようだ。元気を回復して地域への生活へ帰っていくと信じている。


結び

 メサフレンドシップの活動を通して「外国の人と話すのは楽しいものだ」ということを実感してきた20年間である。国際交流を通じて自己の意識変革が起こり、ボランティアとして地域とのつながりも深まってきた。また、ともに活動を実践してきた若い人たちや子どもたちの生き生きした笑顔に接すると励まされ、彼らの「ふるさと」である茨城の地に「国際交流の種まき」を続けていきたいと決意を新たにしている。