「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

子育てしやすい環境をつくるために
兵庫県黒田庄町 黒田庄町子育て学習センターママ広報部
ママ広報部誕生

 現在、少子高齢化が進む中、国そして各地方自治体は子育て支援事業を次々と打ち出しています。兵庫県では1992年に県下すべての市町で子育て学習支接センターを設置し、全県統一の研修を受けた両親教育インストラクターを配置し、若い両親に子育て学習を推進する事業が始まりました。多可郡黒田庄町でも、中央公民館の一室を子育て学習支接センターとして開放し、若い両親の交流や友だちづくりの場、そして子育て学習の場としてその機能を果たしてきました。
 子育て学習センターの開設から6年目の1997年、両親教育インストラクターの森脇登志子さんは、それまで町内で6歳以下の児童のいる全家庭に毎月配布されていた子育て学習センターのおたより「くろっこランド」が、子育て学習センターの行事に参加できる人を対象にした内容であったことから、仕事を持つ人、学習センターに来ていない人にも楽しんでもらえるような通信紙の発行を検討され、学習センターの利用者であった私(東野由美子)に依頼。それがママ広報部の誕生のきっかけでした。
 1997年11月「くろっ子ママ通信」第1号を発行。内容は「子どもから教わった大切おはなし」と題する子育てエッセイ、町内の有意義な子育て情報を紹介する「スポット」そして、子育て中のお父さんの紹介「うちのパパ」でした。通信紙はたいへん好評で、「おもしろかった」「よかった」という感想が学習センターにたくさん届きました。そして、「私も協力しようか」と言ってくれる人が出てきたり、友だち同士誘い合ったりするうちに、ママ広報部メンバーはひとり増え、ふたり増え、次の年の4月には、四つのミニグループができて総勢20名の団体となりました。4月からは隔月で中央公民館ロビーに「ジャンボくろっ子ママ通信」という壁新聞(模造紙1枚程度)を作成し、各グループで得意分野を取材した記事を貼り出しました。主な内容は、お料理レシピと栄養士さんのアドバイス、近隣の遊びのスポット情報、子どもの病気・怪我についてのアドバイス、保育園や幼稚園の紹介、子育て悩み相談などでした。
 発行1周年には、町内在宅児童の保護者対象に意識調査や町への要望などのアンケートを実施し、その中の「子育ての悩み」については壁新聞において専門の先生のアドバイスを掲載し、町行政に対する意見は町に届けました。


くろっ子ママ通信年間特集号「ママ広報部学習会」開催

 1998年4月、毎月発行している「くろっ子ママ通信」だけではなく、一つのテーマに沿って年間を通じて取材したものを特集号として発行しようという提案で、協議を重ねた結果、ママ広報部主催の子育て学習会を開催することになり、その内容を特集号としてまとめることになりました。子育て講演会などに参加できない人たちにも、その内容を分かりやすく伝えたいという発想からの出発でした。
 1年目の学習会は1998年にテーマ「しつけと放任」について、地元の保育園・幼稚園・小学校の先生等に聞いていただいて7回の学習会を開催し、内容を特集号にまとめました。しかしそんな活動のなかで経費の問題が出てきました。通信紙の用紙代・コピー代等は学習センターのものを利用していたので、ほかに資金は必要なく、とくに会費等も集めていませんでしたから、講師謝礼金をどうするかについて何度も話し合いを重ねました。結局、次の年度からは、ママ広報部の学習会として、町から予算をとっていただいて、講師料を支払うことが可能になりました。
 2年目は地域の方に講師をお願いして「私の子育て論―最近の子育てについて思うこと」というテーマで学習会を開き、1999年特集号を発行しました。3年目は、これまでの講座風の形を変えて視察・見学という形をとりました。「子どもにとってもっともよい保育を考える」をテーマに保育園・幼保一元化の近隣町立施設・児童館へ見学に行き、それぞれの担当グループが報告をまとめたものを特集号として発行し、配布しました。2001年には「子どもと食について」というテーマで、学習や調理実習をおこないました。


「くろっ子ママ通信」と「くろっこランド」の合体

 1999年、ママ広報部のメンバーの意欲的な活動を受けて、毎月B4両面刷り1枚の「くろっ子ママ通信」に加え、それまで子育て学習センターの行事を案内していた「くろっこランド」についてもママ広報部が担当することになりました。
 「くろっ子ママ通信」の製作はママ広報部なのですが、発行元は子育て学習センターであり、子育て学習センターは教育委員会の管轄なので、文章や内容について、時には注意されるということもありましたが、メンバーの工夫や協力で徐々に認めていただけるようになりました。こうして、ママ広報部はこれ以降3年間、現在も、子育て通信紙B4両面刷り3枚を毎月製作・発行して町内の6歳児以下の児童のいる家庭全戸に配布しています。
 メンバーの数は毎年15〜30名で、3〜7人ずつの3グループが毎月それぞれ順番に製作して、印刷と配布は全員でおこなうという形をとっていますが、毎年子どもが大きくなって卒業していくメンバーがある一方で、新しいメンバーが入ってきて、人材が育っています。
 内容は1年ごとに見直し、学習センターの行事紹介のほかに、保健センターからの保健指導、読み聞かせサークルからの絵本の紹介、そして、子育て講演会に参加した感想や内容の紹介、卒業していったOBメンバーから子どもたちの保育園生活の紹介、働くお母さんの育児日記、また今年になってからは環境問題や市町村合併問題など一住民として啓発するレベルの高い内容も一部とりまぜて、構成されています。
 第1号から現在までたいへん多くの子育てに関わるみなさんに読んでいただき、若いお母さん、お父さんからは「たいへん共感できる」「勉強になる」と多くの嬉しい感想をいただき、おじいちゃん、おばあちゃん、保育園・幼稚園の先生方や民生児童委員、教育委員の方々からも励ましの声をたくさんいただきました。


地域交流・地域の中でのママ広報部の位置付け

 子育てに関わる記事の取材は、保育園・幼稚園の先生、産婦人科・小児科・歯科の先生、社会福祉協議会・保健センターのほか地域で活動されている方々のところにも行きました。普通に生活していれば知らなかったことを先生に教えていただいたり、先生の本音の部分を知り、理解し合う関係をもてるようにもなりました。また、地域の方々と知り合うきっかけになり、「今の若い人は・・・」と言われる年配の方々に、ママ広報部の活動を知っていただくなかで、「若い人だって、がんばっているよ」というメッセージが伝わり、意図的にではなく、地域のなかで若い女性の地位が向上されていきました。
 昨年は環境問題にも取り組み、近隣の町でEM菌の使用促進をされている方に取材し、内容をまとめた冊子を発行するとともに、子ども用品のリサイクル活動もおこないました。2002年には農業体験活動をおこない、地域の有機農業グループと交流を続け、現在も親子で野菜づくりに取り組んでいます。
 さらに、ママ広報部を卒業して、小学校の児童をもつようになった元メンバーで、日々の経験から、学校と家庭との信頼関係をつなぐ取り組みを始めたいという思いをもって、新サークルを立ち上げました。町の生涯学習課の支援を受けて、今年4月に家庭と学校・地域をつなぐ通信紙を製作・発行し、町内に全戸配付しました。子どもが大きくなって、勤めに出たり、忙しくなっていくなかでも、地域を愛し、自分たちが住んでいる町のよりよいまちづくりに貢献していきたいと活動を続けています。
 平成の大合併でゆれる小さな町で、現在、町の長期総合計画見直し委員会と住民まちづくり会議がおこなわれていますが、町からの依頼により、ママ広報部のメンバーもそれぞれ2名ずつ参加しています。その内容もまた、通信紙を通じて、普段町政などの情報に疎くなる子育て中の方々に分かりやすく伝えられています。


おわりに

 黒田庄町は兵庫県のほぼ中央に位置し、東経135度の子午線がとおり、町の真ん中を流れる加古川に沿った自然豊かな農村地域です。人口は約8000人で少子高齢化が進み、現在年間の出生数は50人で、子どもたちはたいへん貴重な存在となっています。
 ママ広報部メンバーはそのほとんどが数年前に町外から嫁いできた人(20〜30代の女性)で、黒田庄町にきて日は浅いですが、自分たち自身の第二のふるさとづくり、そして私たちにとって、また地域にとって宝である子どもたちが愛するふるさと黒田庄をつくりたいと活動しています。