「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

青少年の福祉活動
福岡県瀬高町  瀬高町青少年ボランティア“みるく”
ボランティアスクール修了の小中学生を中心に

 平成8年から始まった瀬高町社会福祉協議会のボランティアスクールを修了した小学生、中学生を中心に平成10年4月に青少年ボランティア“みるく”を結成しました。1年目には、講座で学んだ体験を生かし最初は町内の高齢者福祉施設での交流を深めました。
 また、牛乳パックを持ち寄り紙すきした葉書に夏は暑中見舞い、冬は年賀状として町内568名のひとり暮らし高齢者へ便りを書きました。秋には、手作りの栗おこわを568名全員に訪問し手渡しして対面交流をしました。子どもたちによる季節感あふれる活動をしてきました。もちろん自分たち自身の学習会も開き、福祉用具とくに車椅子の扱いや町外での研修会に参加し積極的に町外との交流も実践し他市町の活動も学びました。
 メンバー相互の絆を深めるために毎年、年度初めには宿泊研修をおこないました。会長を中心に夜遅くまで前年度の反省と今年度の計画について熱い話し合いが続きました。
 家庭の廃油を回収し、廃油石鹸を作り町の行事のなかで販売してその収益金で海外へ家庭の休眠衣料を送る輪送料や高齢者へ送る便りの切手代にする活動もしてきました。天ぷら油からディーゼル自動車の代替え燃料を作る会社を見学し、集めた天ぷら油を引き取ってもらったりして河川の汚染防止やリサイクル活動を通し自然環境を守る学習と実践を重ねてきました。
 町内のみかん山を所有する人からみかんの木を借りて、家庭の生ゴミを使って有機栽培にも挑戦しました。木の根元に穴を掘って生ゴミを埋め、草を刈り7か月かかりお世話をし収穫したみかんに「長寿みかん」と名づけて毎年恒例になった栗おこわと同時に手渡しました。
 お正月には、高齢者に戦時中に作った秘伝の「すいとん」を教えてもらい、子どもたちの手で昔なつかしい味を再現し福祉センターの温泉を利用される高齢者へ「すいとん」のサービスをして大変喜ばれ、それが5年続いています。
 手話を覚えて手話コーラスを学び、ゲームを習って町内の高齢者福祉施設を全部回り交流を深めています。他市町より“みるく”の活動発表の依頼が4回ありましたが、その度、みんなで会議を開き当日のタイムスケジュールを作り何度も打ち合わせて練習をして自信にあふれた表情で発表していたのが心に残っています。
 知的障害児(者)や身体障害者のみなさんとの交流会でも自然に受け入れることができました。子育て真っ最中のお母さんたちの学習会の間、2時間その乳幼児と一緒に遊び見守りボランティアも体験し、お母さん方から大変喜ばれ、その活動は今も続いています。
 また平成14年度には、養護学校に通う知的障害児を持つ親で結成された団体「つくしんぼ」の主催によるサマースクール(11日間)のボランティアをして、知的障害児を見守る体験もしました。障害児を持つお母さんたちの子育て支援と心のケアーにも役立ち今後もその活動を“みるく”の子どもたちは楽しみにしています。
 浦島太郎(80歳の身体を想定した装具)による高齢者疑似体験をして体の不自由さを知り、どうしたらうまく支えになれるか等、一つ一つ真剣に取り組んでいくうちに、段差の危険性、町内での点字標示の少なさも分かり、自動販売機へ点字シールを貼る活動もしてきました。牛乳パックから葉書を作り、その中に自分たちで摘んだ花を押し花にして紙すきのなかに入れ高齢者への便りも年々、工夫をこらしたものになり、心のあたたかさを感じるできあがりとなりました。子どもたちの成長の姿が手に取るように分かり、子どもたちも自分自身の変化を感じているようです。
 平成15年もすでに宿泊研修も終わり、今年の目標も決定し、毎週第2・第4土曜日の活動も大変奥の深い活動となっていきました。


活動の成果

 瀬高町は、子ども会活動の大変盛んな町で小学生から始まり、中学生高校生のジュニアリーダー研修も盛んにおこなわれています。
 地域のリーダーを目指し積極的に参加する子どもに比ベ、内気で人前に出るのが苦手な子ども、そして大変思いやりのある芯のしっかりした子どもたちの集団が瀬高町青少年ボランティア“みるく”の特徴のひとつです。
 また小学5年で入会した子どもたちが7年間継続し活動した子は今年4月には社会人となりみるくOBとなりました。その将来の職業選択にも、この活動は大きな影響を与えたと思います。
 手話コーラスを高齢者の前で披露する時も、最初は下を向いた子どもたちが体験を重ねる毎に、だんだん前を向けるようになり、正面を向いて高齢者の方々の目を見てゲームができるようになり笑顔で接することができるのも、活動の継続による自信と、ふれあった高齢者から笑顔で「ありがとう、楽しかったよ」という喜びの声からくる感動が、このメンバーの長続きする理由のひとつです。
 核家族時代、また今日では家族の空洞化から起きるいろいろな事件を目にする時、昔あった大家族での生活から学ぶことが大変貴重な体験でした。社会の基本である家族が、夫婦と子ども1人2人の3〜4人家族で構成される家庭が増えた今日、高齢者と接する機会が極端に少なくなりました。“みるく”に入会し高齢者との交流を中心に、いろいろな障害を持つ人、また自分たちより年下の乳幼児との交流、また、活動を支援してくれる中高年のボランティアのみなさんとの交流を通し、この世で暮らしている全ての世代と何らかの交流を持ち、中学生が高校受験をする時に、しっかりした目的意識を持った子どもに成長するのも特徴のひとつです。
 小学6年生で入会した子どもが、中学3年間活動を続け、将来看護士になると決心し、看護科に進学したり、高校3年間活動を続け、看護士になった子どももいます。
 男の子で小学5年生から入会した第1回の“みるく”の卒業生も、自衛官となり、国際ボランティア活動を目指し、日々訓練に励んでいます。
 学校では体験できない地域との交流が子どもたちの人生を大きく変える実証の現れだと思います。また、これからの人生、幸せな結婚生活にも大きな影響を与えることだと思います。
 少子高齢化社会のなか、5〜7人の大家族復活の重要性をしっかり身につけた子どもに成長したことは指導者として「教育20年」をモットーとしてボランティア活動を続けてきた私の宝物です。人の一生を左右する職業の選択に、手助けをする活動がこれからますます重要だと思います。
 小学5年生から高校3年生の年齢差8歳の異年齢集団の“みるく”には、どこの団体にも見られない一種大家族を思わせる時間があります。とくに宿泊研修をする時、自然に役割分担ができます。小学5年の女の子が高校2、3年の女の子と一緒にお風呂に入ったり、布団の中でおしゃべりしたりして朝を迎える時、その子の家庭環境が手にとるように分かります。中学生の子が高校生のお姉ちゃんの言うことを素直に聞き、夕食の準備や後片付けをしたり掃除したりと小さな社会のルールが自然と身に付いています。異年齢集団の活動が青少年の成長に及ぼす影響がいかに大きいかを思い知らされる一時です。
 また、社会的ハンデを持つ人との交流を体験して得られるものは「やさしさと思いやりの心」です。障害者や高齢者のみなさんから、誰でもが持って生まれてきた「やさしさ」を引き出してもらうのです。そしてどうしたら相手の気持ちに答えられるかを常に考えて行動をするようになり、その思いやりがメンバーヘの思いやりとなり、また家族への思いやりへと成長していき、やがて社会への思いやりへと成長していくことになります。自信を持って言えます。
 この子どもたちの目の輝きにふれるたびに成長の後がうかがわれ、この子どもの活動を支えることを目標のひとつとした、瀬高町ボランティア連絡協議会の15団体の交流にも一役かっています。
 “みるく”と高齢者との交流事業を通して、その行事のなかで各15団体が特徴を生かした活動をおりまぜながら、楽しい一時を過ごす事業には、“みるく”の存在は欠かせないものです。自分たちの子どもや孫にあたるような子どもたちが一生懸命、高齢者の手を取り笑顔を振りまいている姿を見て他の団体も励みになり、時にはハンカチで目頭を押さえる一幕も見受けられます。
 568名のひとり暮らし高齢者をかかえる瀬高町には、なくてはならない存在になった“みるく”の活動を私を始め15団体やそれに関わるたくさんの人の温かいおもいやりで力の限り支援したいと思っています。
 5年間の活動の中でその内容が評価され数々の活動助成を戴きました。それが励みとなりさらに活動が活発となり年々充実した年を送れるようになりました。自分たちの活動を自信を持って友だちに話せるようになり、それに心をひかれた子どもが活動に参加する。ボランティアの輪が波紋のように広がります。30人弱の子どもだけの集団ですが、それを支える大人、活動を受け入れてくれる人々に見守られながら今後、益々活躍することと思います。