「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

生ごみを宝に
佐賀県伊万里市  特定非営利活動法人伊万里はちがめプラン
活動の目的

 伊万里地域におけるごみ問題解決を目的に、各種社会奉仕団体、行政、事業(農者)、大学及び教育関係、市民が協力して「ごみ減量」による「環境保全」という課題に取り組むとともに、資源循環型社会の構築を目指した生ごみや廃食油、その他有機性廃棄物の資源化・リサイクル活動を行なう。生ごみ堆肥を活用した農業者による有機農業の推進を図るとともに、休耕地を利用し市民と農業者とが協働して菜の花栽培を行ない、安全な「農産物」と「菜種油」を生産する。このような活動を通じて、地域活性化と新たなネットワークの確立を目指し、素晴らしい現在のこの環境を未来の子どもたちへ手渡すことを目的に活動を行なっている。


生ごみ堆肥化事業

 生ごみや廃食油を捨てる側であった、伊万里市や近隣町の飲食店・旅館の両組合会員が「生ごみを税金で焼却するのはもったいない、何か活用できないか…」と「生ごみ資源化研究会」を発足させ、調査や研究を始めたのが、平成4年である。
 平成11年10月、国、県、市、佐賀県商工会連合会及び伊万里商工会議所の支援のもとに伊万里市大坪町今岳に待望の堆肥化実験プラント(レーン方式、生ごみ3トン受け入れ可能)が完成した。最初、生ごみ分別協力者、3軒から始まった堆肥化事業も、微生物の培養実験、市民の皆さんへの環境啓発運動を経て、現在生ごみ分別回収協力事業所60軒、一般家庭グループの生ごみステーションは25か所、200世帯の参加を得ている。1日約1・7トンの生ごみを回収し、700キロの良質な有機堆肥を生産している。その方法は生ごみの処理、処分ではなく、食物連鎖のサイクルの中での次の生命体のエネルギー源として捉え、先代の英知に学び、微生物によって自然と息を合わせ、100日以上かけてゆっくりと醗酵熟成させた有機質豊富な堆肥を生産している。はちがめ堆肥は、小、中学校、農業高校、篤農家約20軒に配布し、作物の栽培実験や土壌分析調査等を佐賀大学農学部の協力によって行なっている。農家の皆さんからは「土壌が良くなった」「作物の生育が良くなった」「味が良くなった」と高い評価を受け、「はちがめ堆肥」で生産された野菜や米は市内の農産物直売所などでよく売れると好評を得ている。


菜の花エコプロジェクト活動〜美しい菜の花畑は21世紀の油田化構想〜

 平成12年、「菜の花エコプロジェクト」は「はちがめプラン」に協力していただいている地元の農家を中心に一般市民も参加して結成した、古賀地区休耕田畑(国営開発農地の一部)を活用し、菜の花による食資源循環リサイクルの体験学習と農村と都市、子どもたちと老人の交流の場を提供するのを目的に活動している。
 「はちがめ堆肥」を施した田畑で菜の花を栽培し、美しい景観を楽しみ、安全な菜の花油を生産、活用後の廃食油は回収し、B.D.F(廃食油ディーゼル燃料)に精製して、堆肥化プラント車両、はちがめプランの広報車、農耕車など、クリーンなバイオ燃料として広く活用している。この活動には、プロジェクトの皆さんをはじめ、地元農家の人たちに積極的に参加していただき、約2ヘクタールの田畑の提供と草刈り、耕運、播種、刈り取り、収穫などの協力を得ている。なかでも、種蒔、苗の移植、収穫などの作業には、小中高校の子どもたちや佐大生、市民の皆さんがボランティアとして多数参加していただいている。また、菜の花まつり、はちがめ市など農業者と市民が協働で開催し、その中から両者の交流が生まれ地産地消の新たな局面が展開されている。
 平成14年3月「九州菜の花サミットin伊万里・第1回菜の花まつり」を開催、また、平成15年3月には「第2回伊万里菜の花まつり“持続可能な発展を目指して”」を開催、16年3月には「第3回菜の花まつりと環境フォーラム」を佐賀大学の全面的な協力で実施、マスコミにも取り上げられ、広く情報を発信することができた。菜の花の栽培やB.D.Fについて全国から問い合わせや施設見学者が多くなり、環境新時代の潮流を感じている。


環境保全啓発活動〜市民による生ごみステーションの誕生〜

 地域の課題であるごみ減量と環境保全を目的に可燃ごみから生ごみを分別し、資源として活用するためには、市民の皆さんの理解と協力が不可欠である。1人でも多くの参加者を増やし、1日でも早い食資源循環による環境保全の実現を目標に活動している。
 福田(レポート執筆者)は、佐賀県環境サポーターとして県より委嘱を受け、年間10校ほどの小・中・高校へ出向き、ボランティア・環境学習・総合学習等で指導を行なっている。資源循環の大切さや、生ごみを焼却することによる自然環境の悪化、それに伴い子どもたちが将来背負うことになる負荷等をまず充分に説明し、その後で「はちがめプラン」の施設を見学させている。臭い・汚いと思っていた生ごみが、時間とともに微生物の力で堆肥に変わっていく姿を子どもたち自身がその目でみて、その手で触れる体験学習での指導を行なっている。また、希望校には、学校での生ごみ堆肥づくり体験学習も行なっている。
 また、公民館活動での生涯学習・消費者団体、及びその他各種団体の環境体験学習会などにも積極的に出向いている。さらに、地元及び県内外各地(北海道や鹿児島)からの視察見学者を受け入れ、生ごみや廃食油の資源化及び菜の花エコプロジェクトによる環境保全活動と資源循環型社会の大切さを訴えている。これらの活動により、市民の皆さんに生ごみを焼却することへの疑問が徐々に浸透し、地球温暖化防止の意識が高まり、はちがめプラン施設見学者の中から平成13年1月市民による生ごみステーション設置の第1号が誕生した。平成16年6月には25番目が設置され、200世帯の家庭が生ごみ分別回収に協力参加していただいている。また、生ごみステーションメンバーを中心に、はちがめプランサポーターネットワーク「クリーンの環」が誕生し、大きく市民運動へ広がりつつある。
 現在、県のNPO支援を受け、モデル地区を指定し、一般家庭の生ごみステーションを増設、500世帯の生ごみ分別協力者を目標に活動を行なっている。モデル地区での説明会・勉強会、子どもたちの総合学習などに、佐賀大学の教授にも参加を依頼し学術的説明を、理解しやすく話していただき、市民や子どもたちの信頼を得ることができている。あわせて、シィティーテレビによる活動放映等によって伊万里の環境啓発運動が飛躍的に広がっている。


伊万里『環の里』計画〜クリーン伊万里市民協議会との連携〜

 平成13年7月10日政府の「21世紀『環の国』づくり会議」(小泉首相主宰)が発表された。これを受け、私たちがこれまで計画し調査研究を行ってきた、総合的な環境保全事業を「伊万里『環の里』計画」と決定し「大量生産、大量消費、大量廃棄」の社会から「持続可能な簡素で質を重視する」社会への転換を図り、万物、自然と共生する『環の里』伊万里を実施すべく各方面に14年度事業として提案した。クリーン伊万里市民協議会(田中興人会長、14団体会員4300名)を中心に市民、企業、学校関係及び佐賀大学、行政等と広く連携し幅広いパートナーシップによって伊万里から環境保全の“環(わ)”を広げ、よりよい環境を供創するために、伊万里『環の里』計画実行委員会を組織することができた。
 省エネ、省資源、新エネ推進活動、ごみゼロまちづくり活動等八つの活動を大きな柱として実施している。地域の課題であるごみ減量と総合的環境保全活動に、各地で「まちづくり」のコンセプトの基に広がりつつある「地域通貨」を導入するなどのコミュニティ活動に積極的に係わりを持ち、その実現に全力を尽くしている。この活動が各方面に認められ15、16年度事業として継続となったことは、最高の成果である。


あとがき

 現在私たちが取り組んでいる、生ごみ堆肥化、廃食油燃料化などの事業活動は、2001年5月1日「食品リサイクル法」が施行されているにもかかわらず、多くの市町村で必要性は認めても実施されていないのが現状である。しかしながら、食資源の循環は、限られた資原国であるわが国では絶対必要で、資源循環による持続可能な社会の基礎となる重要なものであると自負している。
 2002年12月27日政府は「バイオマス日本総合戦略会議」を発表し、バイオマス資源の利活用を推進しているが、地域に「広く薄く」存在するバイオマス(生ごみを含む有機性生活廃棄物)資源を集約化して利活用するためには、コミュニティの復活によって、住民、企業、行政の各種団体が地域内での環境意識と連携能力を向上させ、パートナーシップによる、実践活動を通して、回収効果を高めることが必要となってくる。来る時期に私たちの取り組みが全国の事例としてモデルとなれるように、伊万里はちがめプランの活動を成功させ、地域の資源を利活用する「バイオマスエコタウン」構想へ繋げたいと思っている。