「ふるさとづくり2004」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
自主運営と対話重視で地域シニアの元気生活と交流を支援 |
京都府宇治市 生涯学習ボランティアグループ「わいわいTRY塾」 |
宇治生涯学習ボランティアグループ「わいわいTRY塾」は、@心、頭、体の健康の維持・向上を目指し市民の元気生活を支援する、Aシニアの知恵と経験を地域社会に役立てる、B生涯学習ボランティア精神の向上を図る、C生涯学習活動を通して世代間の意志疎通を図る等を目的に、平成14年、地域住民によって自主的に活動をスタートした。ともに生涯学習ボランティア活動に積極的に取り組める仲間を広く求め、現在13名の会員で活動している。 事業としては、@宇治市民と周辺地域住民を対象に生涯学習の啓発を推進する事業、A会員相互の親睦を図る事業、B地域サークルのネットワーク化を図る事業、これら三つの事業を推進している。これらの柱となる活動として、それぞれ@「おしゃべりサロン」、A「おしゃべりラウンジ」、B「行政が主催する生涯学習事業への支援活動」を推進している。 ユニークな運営で地域シニアに元気レシピを贈る「おしゃベリサロン」 「おしゃべりサロン」は「わいわいTRY塾」が最も力を入れている活動である。毎月1回継続開催し、これまでに22回実施した。これは、会員が宇治市内や近郊で様々な方面で前向きな生活をしている人々を探し出し、発表者が披露する経験談から心豊かに元気生活を送るヒントを得ることを主として狙っている。例えば、「私とわくわく120歳人生計画」、「私と介護、子育て、仕事」など「私と――」の冠テーマで、その人が何故そのテーマを語ろうとするか、自分の生き方、ものの考え方などを交えてプレゼンテーションしてもらうのが大きな特徴で、肩書きにとらわれずに発表者にリラックスして語ってもらい、発表者と比較的少人数(約30〜50名)に絞った参加者とのアットホームな雰囲気での対話を重視して、発表90分、質疑応答30分を目安に実施している。会員による手づくり運営、地域の公共施設での開催、ボランティアの趣旨を理解いただいた上での発表者へのお礼(薄謝)など経費節約に努め、参加費300円を基本に地域の人が参加しやすいよう運営面での工夫も行なっている。この「おしゃべりサロン」は、これまで大変好評で毎回参加される人も着実に増えつつある。また、参加者を元気づけるネタの提供の場であるに留まらず、発表者にとっても地域シニアにプレゼンテーションする機会が自身への刺激の一つになるとともに、ヒューマンネットワークがさらに広がって発表者からも喜ばれている。 これまで取り上げたテーマは趣味・人生、地域文化活動、自然環境保護、介護問題、子どもとのふれあい、パソコン活用など多岐にわたっている。 まず、趣味・人生関連テーマでは、「私とのんびり世界スケッチの旅」で、自分の人生を見直してスケッチブックを手にのんびり世界旅行に出かけた中でしみじみと実感した「ゆっくりと家族とふれあう時間をもつことや、のんびりと芸術を楽しむ時間をもつこと」、実はこれが本当の自分の幸せにつながるのではないかと言うシニアの話が多くの参加者に共感を呼んだ。また、「私とわくわく120歳人生計画」で、「人生はいっぺんコッキリ」を念頭にいつも「なりたい自分」を意識してこれまでの人生をエネルギッシュに過してきた、豊富な経歴の元気シニアから「元気でわくわく人生」を送るヒントを聞いて非常に参考になり、参加者を元気づける機会につながった。そのほか「私と茶の湯」、「私と陶芸」など宇治の文化にゆかりのあるテーマも取り上げた。 次に、地域文化関連テーマでは、“地域に密着したテーマ”に因んだ話を“地域にこだわりをもつ人”から聞く機会を設けて地域文化の理解を深めてきた。特に、母親と夫に対する長年の介護生活のかたわら執筆活動を続け、波乱万丈の実母の人生を綴った小説「はるかなる山河」で宇治市の紫式部市民文学賞を受賞した“70歳のお元気女性シニア”からは、出身地の東北地方で“炉辺のぬくもり”の中で“民話”を語る風習は子どもの情操教育に非常によかったという体験談を含めて、「私と宇治民話―書く楽しみ・聞いてもらう楽しみ―」のテーマで介護生活を乗り越えた苦労話を交えながら宇治民話について語ってもらった。地域に眠っている民話を自らの足で発掘して創作し、それを子どもたちに語る活動(民話語り部)を通じて、地域の子どもの健全な育成、地域文化の活性化につながる活動をしている女性による「おしゃべりサロン」は、子どもの情操教育につながる民話の役割の認識とともに介護問題に対処する心構えなどを考える機会にもなり、参加者に大変好評を博した。その他、「私と宇治茶の文化史」や「私と筑前琵琶」、また紫式部市民文学賞受賞者による「私と作家活動」(宇治の歴史上の人物に焦点を当てて、仕事のかたわら執筆に勤しんだエピソード)などのテーマでのサロンを開催した。 また、自然環境保護関連テーマでは、「私とバードウォッチング」で、野鳥と共生できる地球環境保護、ひいてはわれわれの住みよい生活環境改善につながる活動の大切さを学んだ。また、「私と摘み草料理」でも、山野草を根こそぎ採るなどわが身しか考えない人たちによって自然が破壊される行為に警鐘を鳴らし、山野草を大切にする心と人間と自然の共生の大切さを再認識した。 さらに介護関連テーマでは、上記の宇治民話の女性による介護の話以外に、「私と介護、子育て、仕事」のテーマで地域の主婦からも語ってもらい、想像を絶する介護の日々の中にありながら前向きに生活している主婦の体験談からは、思わず勇気づけられるとともに自宅介護の大変さを互いに話し合い、全てを自分で抱え込むのでなく、地域の介護支援も仰いで長期介護を乗り越えることの大切さを参加者一同認識した。その他、世代間の意思疎通を図る目的で「私と人形劇」や「私と星の世界」など、子どもとのふれあいをもてるテーマも実施した。 「おしゃべりサロン」から派生した活動 「おしゃべりサロン」から派生して新たな活動に発展したものとして、現在まで三つの活動がある。@「私とパソコン」のテーマからは、参加者を含めてPC活用促進に向けたPCネットワークサークル「電脳互楽倶楽部」を1年前に誕生させ、次第に交流の輪が広がって現在14名の会員になり、地域のメロウソサエティ活性化の一助になっていると考えている。また、A「私と音声パソコン―視覚障害者の活用術―」のテーマからは、視覚障害者の発表者による音声での見事なパソコン操作に参加者から感嘆の声が囁かれ、パソコンの活用が人生を変え、自分の生活が広がったことや他の視覚障害者がパソコンを使うことの必要性の話を聞いて、「わいわいTYR塾」主催で「地域の視覚障害者のパソコン活用をサポートするためのサポーター養成講習会」まで開催し、視覚障害者のパソコンサポーターとしての基礎的な知識を得るとともに、視覚障害者との接し方などを学ぶことができた。さらに、B「私と趣味の工作」のテーマからは、発表者にインストラクターを依頼して「版画教室」を開催するなど続々と新しいボランティア活動へと広がりを見せている。 会員相互に自己啓発する「おしゃべりラウンジ」 「おしゃべりラウンジ」は、原則として会員を対象に開催している。例えば、「我が半生記(反省記)」、「私のボケ防止策」などいろいろなテーマで会員が順番に自分の生き方、ものの考え方、元気生活に参考になる話などを発表して相互に自己啓発している。テーマによって、スピーカーは外部から迎える場合もある。地域の専門家を招いて最近開催した「薬物乱用防止について」のテーマでは覚醒剤や麻薬など薬物乱用の恐ろしさを再認識して、青少年の健全な育成、健全な地域社会づくりに向けて互いに自分の周りの人々にもPRする機会をもつよう、会員一同気持ちを新たにした。 行政が主催する生涯学習事業への支接活動 行政が主催する生涯学習事業にも積極的に参画し、支援している。例えば、「夏休み子供フェア」や「うじ まなびんぐ」では、京都ゆかりの竹を使って子どもが自ら工作道具を手にして「竹馬、水鉄砲、竹とんぼ、壁飾り」などを作るイベントを継続的に実施し、出来上がった作品に子どもたちが大変喜び、ものづくりを通じて地域の子どもの健全な育成につながる活動を行う中、世代間の意思疎通も図った。また、宇治市が総務省「地域情報化モデル事業」(e‐まちづくり)で、IT技術を活用してコミュニティの輪を広げ、よりよいまちづくりに貢献することを目的に構築した、「e‐タウンうじ」というホームページの創設及びその運営団体「宇治大好きネット」に中核市民団体として積極的に参画している。 以上のように、会員の豊富な経験と創造力を発揮して、地域コミュニティ活性化の一環としてボランティア活動を活発に推進している「わいわいTRY塾」の「おしゃべりサロン」のようなユニークな地域活動が広くマスコミ媒体にも注目を浴びるようになり、例えば、FM宇治でのゲスト出演(平成15年11月)のほか、城南新報では「多彩なテーマで元気発信」の見出しで大々的に掲載(平成16年1月)されるとともに、最近ではNHK京都放送局のTV番組「ニュース610」の「京いちにち」の中で「宇治大好きネット」の中核団体として「わいわいTRY塾」の活動が紹介(平成16年5月)された。 |