「ふるさとづくり2004」掲載
<企業の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

商店街活性化策と学校教育との連携
富山県高岡市 坂下町商店街振興組合
商店街活性化策の趣旨

 高岡市中心市街地に位置する坂下町商店街。まちの空洞化が加速する商環境の中、商店街内部の「結束」、地域社会との「連携」、地域の人たちへの「感謝」をキーワードに商店街の「元気」を発信する。


商店街2大事業の推進

(1)20年の歴史がある「たかおか朝市」拡大発展を図り、街の活性化策を推進する。
(2)朝の賑わいを昼間にも、と「高岡大仏やわやわ参道市」の新規開催。
 当商店街の一角に鎮座する歴史的文化遺産「高岡大仏」を再発見し、押し寄せる街の空洞化や空き店舗の対策を視点に、「市」による活力ある街づくりを目指す。


学校教育との連携、そのアプローチと背景

 2000年に朝市20周年事業として、地元小中学校に地域との交流を提案する。
(1)平米小学校5年生全員によって、過去30年余り引き継がれた「伝統の獅子舞」の上演が学校、父兄、地域住民の協力によって実現する。
(2)地域ふれあい活動、「高陵中学校たかおか朝市体験」の開催。生徒が地域との交流を通して地域全体で楽しく学び、活動できる商業実習体験。
 両事業とも朝市の名物イベントとして定着。今年も5年目のスタートを切っている。中学生朝市体験は地元市立平米公民館との共催で、年毎にスタッフ、協賛企業が増えている。


小中学生朝市体験の波及効果

(1)マスメディアの取材が活発になり、体験生の励みと朝市の知名度が大幅にアップ。
(2)朝市来場者(前年比2倍)と出店者(前年比1・5倍)が激増し、会場も拡大。
(3)学校教育との連携が加速。他校の自主的参加が増える。(博労小、国吉中他)
(4)商店街各店が朝市での早期営業開始。その経済効果に十分な手手ごたえを感じ取る。
 2000年、学校教育との連携を主体に「高岡大仏やわやわ参道市」を開設。日中の賑わいを目的に開催したこの昼市、初年度の主役地元3校の高校生が大活躍。高岡商業生は、インターネットで全国より特産品、名産品を調達。「マイショップ高商」を出店する。高岡工芸生は、手作りポストカードの製作・販売、たかおか朝市オリジナルパンフレットの製作。「市」で通行人に配布し朝市と学校のPRに積極的に取り組む。二上工業生は、自ら製作したロボットを展示。子どもたちの注目を浴びる。
 2001年、昼市では、新たな連携が実現する。学校間の連携による実践活動と学習発表会の誕生である。
(1)「体験高校生1日店長・PR部長」の開催
 商店街各店に高岡商業生と高岡工芸生を迎え、販売・接客マナーとDM作りの講習会を経て、両校の連携と商店主の交流を図り、経済効果の創出を目的に企画した事業。両校生徒の得意分野での活躍ぶりが大きく報道され、予想を上回る反響に関係者は自信と喜びを感じる。
(2)フルネットワークの学習発表会「大仏シアター」の創設
 小中高専門学校合同で構成するこの発表会。高校生がプログラムをデザインし、看板づくり・司会進行でサポート。フルネットワークの「シアター」が確立する。
 歴史と文化の香りのある得意なステージを提供された生徒たちは、校内では到底味わえない雰囲気の中で喜びと感謝の気持ちを表現している。3年目には市教育委員会の後援が決定。


商店街活性化と学校教育の成果

(1)商店街活動を体験した生徒の活動で、「たかおか朝市」が県内屈指の朝市として大きな成果を遂げる。(集客力、出店者数ともに富山県No.1の「市」であると自負している。)
(2)「高岡大仏やわやわ参道市」も朝市同様、着実に定着して2年目には行政支援が決定。当初の目標通り「活力ある街づくり」に少なからず貢献できたと確信している。
(3)子どもたちの元気な活躍が、商店街の元気となって県内外に発信された。高岡商業生が自主的に製作・開設した県内初の商店街ホームページによっても、それが実証されている。
(4)学社連携により、学校で学んだことを実践する「体験の場」を提供することで、生徒は多くの人々とふれあいを通して、「心の交流」といった温かさや充実感を肌で感じることができた。
(5)地元商店街の活性化事業に生徒が自主的に参加することにより、日頃自分たちが生活する場である地域社会に注目し地域文化の継承・育成を担ってきた商店街としての特性を見つめなおす良い機会となる。


商店街活性策の進展と今後の課題

 小中2校の朝市体験が源流となり、この4年間に体験校は30校に拡大した。この要因は、学校教育と取り組む姿勢が一貫して体験生の立場に立ったものであり、彼らの元気が多方面にわたって発揮できる事業プロセスとその目的が評価され、商店街との交流によって発生する学習効果が共感を呼んだものと考える。
 つぎにマスメディアの働きも忘れてはならない。地元の新聞は「商店街はみんなの学校」高陵中「ジュニア商人デビュー」平米小「朝市舞台に獅子舞披露」、坂下町「地域の先生が活躍」などの見出しで、生徒が商店街をはじめとする地域社会へ、そして商店街からも学校の中へ、地域ぐるみの教育の場が形成されつつある「たかおか朝市」をシリーズで力強く紹介。地元ケーブルテレビ局では、情報歳時記番組で「高校生1日店長」「高陵中朝市体験」「大仏シアター」を特集し彼らに熱い視線を送った。
 このように、マスメディアが生徒の活躍ぶりをリアルタイムで多種多様な切り口で報道。その意図を的確にとらえた特集記事・番組は、報道支援として、学校・商店街関係者の大きな励みとなった。
 しかしながら、この取り組みを組織していく上で商店街に二つの問題が生じた。一つは体験生増加によるスタッフ不足。もう一つは学校教育に対する各店の温度差である。このような課題に対処するには、各店個々の認識と理解の向上を図り、商店街組織の強化、ネットワークの拡充が必要である。その対策の一つとして、多方面からの協力により事業ごとに独立委員会(高陵中学生朝市体験運営委員会、大仏シアター実行委員会など)を設置して事業の継続に対応している。
 おかげでこれまでの取り組みを通して商店街に対する注目度は大きく変化した。これを機に、さらに商店街の個性を大切にして「市」のグレードアップを図り「まちの再生」に地道な努力を続けていきたい。