「ふるさとづくり2005」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 内閣官房長官賞 |
感動体験夢舞台で人材育成と居場所づくり |
沖縄県うるま市 あまわり浪漫の会 |
活動内容 平成11年度 勝連町教育委員会が、地元の伝説をテーマにした舞台演劇に取り組むことで、子どもたちの感動体験の場をつくり、ふるさと再発見と、子どもと大人の共同参画による町づくりを目的として与勝地域(与那城町と勝連町からなる)の中学生・高校生100人余りによる現代版踊(沖縄版ミュージカル)「肝高の阿麻和利」を勝連城跡で上演しました。 平成12年度 出演した子どもたちの熱烈なアンコールにより、第2回が決定しました。この事業を推進するには、多くの人々の支えが必要であり、父母の会を立ち上げ、この阿麻和利公演を支援してきました。 平成13年度 町立の公共文化施設きむたかホールの完成に伴い、ホール運営のボランティアサポートも事業の目的に組み入れ、名称も「あまわり浪漫の会」に改めました。小学生を対象の現代版踊「肝高の阿麻和利」スペシャルバージョンや小中学生でのミュージカル「かっちんカナー」を行なったりするなど、幅広く活動を始めました。他地域での公演も行ない、それをきっかけに浦添市、読谷村などの文化交流も積極的に行なってきました。 平成14年度 夏休みを利用して、8月にきむたかホールで毎週土・日に自主公演を行ないました。舞台作品をモチーフにした関連商品を製作し公演会場で販売を始めるなど、自立にむけた活動をはじめました。 平成15年度 埼玉、東京など関東5地域での招聘公演も実現し「志高い」という意味での「肝高(きむたか)」のメッセージを全国にアピールしました。 平成16年度 季節公演の10回に加え、4年ぶりの勝連城跡での野外公演また、念願の地元小・中学校との連携による「芸術鑑賞プログラム」での全校生徒観劇会を行ないました。地元の特産品である「もずく」を「きむたかのまち勝連のもずく」として商品化して、舞台作品をモチーフにした関連商品同様に公演会場で販売しています。 平成17年度 5月に歴史上のライバルとも言われている那覇で公演を行ない、圧倒的感動の拍手で受け入れられました。7月に夏休み公演・そして、夢の国立劇場「おきなわ」での公演が実現するように日々活動しています。 この7年間に68回の公演、5万8170人余りを動員。現在もきむたかホールをその活動拠点としています。 地元の文化・伝統芸能で地域おこし この活動をはじめる前の子どもたちは、地元に誇りがなく、生まれ育ったわがふるさとに目を向けることができずにいました。そのような状況の中で地元の歴史を紐解いた現代版踊「肝高阿麻和利」を子どもたち自らが演じることで、ふるさとを再認識するとともに、自分の地域に目を向け、誇りを持つことができました。生まれたマチを知ることの大切さ、豊かに根付いた文化・伝統芸能が足元にあることを知り、その伝統芸能の数々を「守りたい」「伝えたい」という想いがうまれ、そのために、「将来は、地域に根ざして人に尽くせる仕事がしたい」というように心境の変化を見せた子どもたちの姿が大人に影響を与え、マチが変わってきました。平成16年3月20日、勝連は豊かな心を持った子どもづくりの支援を目指す、全国でも3番目の「きむたかっ子の町宣言」を制定。子どもと大人、地域住民と行政が協働し、主体となって取り組む文化を基調としたマチづくりに繋がってきています。 居場所づくり 子どもの居場所づくりが叫ばれている今、舞台稽古の空間は学校や塾や部活動とも異なる新たな学びあいの場として受け入れられています。日頃の舞台稽古では、技術面ではなく、「心づくり」を重視し、行なっています。 そのことから、子どもたちが楽しく・素直になれる場ができあがっていき、さらには、不登校や心に重荷を抱えた児童生徒の「自己を見つめる」機会にもなり、子どもたちの「居場所」へとつながってきていると思います。また、舞台を支える大人サポーターズとしての「あまわり浪漫の会」の取り組みは、父母を中心とした呼びかけ賛同人による地域のボランティア団体で「子どもと大人の居場所づくり」への新たなモデルケースとして県内でも注目を集めております。 「きむたかキッズリーダーズ」の存在 青少年のリーダー育成を兼ねながら、参加者の高校生を中心に毎年15人程度で構成される子どもたちの集まりを「きむたかキッズリーダーズ」と呼んでいます。練習は演出家や指導者と一緒になって、みんなの指導にあたります。演出家・指導者とは、違った近い存在のリーダーをつくることで、参加する子どもたちとのジョイント役を担う大事な役割を果たしております。その目標に向かう、力が舞台を良くし、仲間意識を高めリーダーズの継続にもつながっていると思われます。 他地域や県外の修学旅行生と交流を3年前から行なっています。今では県外の修学旅行にリーダーズとの「ワークショップ型交流会」が企画されるなどまでになりました。 リーダーズとして、このように活動することで責任感やコミュニケーション力を自然と身につけることができます。大人と子どものジョイント役としてのキッズリーダーズ育成を行なうことで、組織としての基盤が形成されそれが、舞台づくりや人材育成を進めるうえでの今では重要な役割を果たすようになりました。 青少年育成 舞台活動を通して、子どもたちは自分たちの住んでいる地元に誇りを持ち、この誇りを原動力に、日常生活においても生活態度が安定し、学校生活においては勉強・生徒会・部活動と積極的に取り組む子どもたちが増えてきました。その結果、弁論大会では全国大会に出場する者や、この地域で活動の経験が認められ慶応義塾大学への現役入学する者や、学校からは「特別活動賞」、地元からは「感謝状」を受賞するなど、多大な評価を得ています。 自分たちの活動を誇りに思うからこそ、一人一人が高い意識を持ち、子どもたち自身がそれぞれの場所において力を発揮しているのだと思います。 まとめ これらの活動を通して、一つの機会を作ってあげることで子どもたちの持つ無限大の可能性をより強く考えるようになりました。「地元の歴史を識り」「表現することの楽しさ」を体験した子どもたちは、そのことから「文化・芸能の持つすばらしさ」「仲間がいることのありがたさ」「自分の心を素直に表現できる楽しさ」「感動させる・また自らが感動できる嬉しさ」を糧に、自分自身のみならず学校・地域をも活性化していったのです。参加した子どもたちは、感動をもらったこの地元・支えてくれる大人・家族のために何ができるか、必死に考えて、行動していくことで、そのことが「居場所」となり、青少年育成の場として存在しているのです。 感動体験夢舞台は子どもと大人の居場所づくりだけではなく、勝連という地域そのものの居場所も示してくれました。 今後の展開 今後の展開として、地元にある県立与勝高校が県内で初めての県立高校附属中学校を平成19年度より設立し、その授業に「伝統芸能」が組み込まれます。それに伴い、私たちも率先的に協力していき文化・伝統芸能を通して、学校と地域の人々が一体となって地域おこしを行なっていきたいと思っています。そして、子どもと大人のジョイント役、地域と学校のジョイント役になれるようにしたいと思っています。さらに、修学旅行生を中心に舞台稽古体験型の交流をすることによって、この活動を発信していきたいと思っています。交流を行なった人たちに「地元に誇りを持つ熱き想い」を直接的に伝えることで、それぞれの地元を見直す機会をつくり、最終的には日本全体を活性化していきたいと思っています。 |