「ふるさとづくり2005」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞 |
案山子vs新庄花物語 そしてまちづくりは始まった |
福井県坂井町 新庄区まちづくり委員会 |
案山子物語 坂井町は坂井平野のどまんなか田んぼばかりの田園地帯、人口約1万4000人の小さな町。町民気質は、自然・社会環境に目立った問題もないためか、人間がのんびりしているというのが専らの評判。目立った問題がないのは良いけれど、山もなければ海もない、まして観光には無縁の町です。 そこで町では以前より、たんぼに付き物の案山子をテーマに「かがしコンテスト」を開催してきた。 平成13年春、このコンテストに出品しようというシニア世代4夫婦8人の気まぐれが、この物語の発端。その時はまだ、3年後にこんなにも大きなうねりパワーになるとは想像だにしなかった。 案山子物語の産声 案山子といっても一本足の案山子とは違う大きな作品に、これを見た人は一様に驚きの声をあげる。それもそのはず、幅4メートル高さ4メートル奥行き2メートルの巨大な作り物。アイデアを詰め込んでいろんな材料を駆使し、子どもは勿論大人にも喜んでもらえ、鑑賞にも堪える作品に仕上げる。作るだけが目的じゃない。作業を横目にそばでは炭を持ち出して、バーベキューのはじまりはじまり。ビールを飲みだしたら近所の人がどんどん集まりだして大宴会。作りが悪い、色がこうだああだと、岡目八目。こんな楽しいふれあいの場になって、うれしい悲鳴です。4月から毎日のように携わり8月までの120日間の労作になった。この時点で仲間は20名余に膨れ上がった。初年度の作品は、千と千尋の神隠し。廃材を使った湯婆婆・カオナシ・千でファンタジー賞を受賞。ここで問題発生。コンテストは1日だけの展示で終了してしまう。えっ?120日という長い期間、夜ばかりでなく、時には仕事もせずに昼も頑張って作り上げた大作が、この1日だけで廃棄?全員顔を見合せて「もったいない!」 駅周辺活性化への展開 この町の中心にJR丸岡駅がある。ご多分に漏れずこの駅もリストラの風が吹き、数年前から駅員の無人化が始まり寂れる一方。 「そうだこの案山子で、駅と駅前商店街のために何かができないだろうか」 善は急げ! 町とJRに交渉するとトントン拍子。自販機の移動など模様替えも各メーカーが協力し、案山子の駅舎設置が実現した。毎日の乗降客はもちろん近所の人も案山子を見物にやって来、マスコミでも紹介されて、設置期間を延長することに。遠足でやってきた小学生が見つけて「きゃーきゃー」、若いカップルが携帯電話で写しっこ。みんなが喜んでいる。 調子にのると怖いものなし。またまた次の展開へ。 駅舎でコンサート 仲間に音楽家がいる。第九の指揮もこなす大先生だが、これまた気さくな人で、「駅の活性化で何か面白いことできないかなあ」の問いかけに、「このレトロな駅舎でコンサートやると面白いかも」。またまた、善は急げ。申請するとOK。でもそれからが大変。出演者への依頼調整、舞台準備、後援依頼、ポスター、案内状、パンフレット作成配布。でも意外とスムーズにいくのは日頃の人脈のおかげか。秋も深まったある日、汽車の時間に合わせて夕方6時53分にコンサート開演。童謡・クラシック・フォークからPOPSまで多彩。バイオリン・エレクトーン・フルートそしてボーカルにコーラス。子どもからシニアまで100余名の観衆が全員参加しての手話コーラスは圧巻。レトロな駅舎に心地よい秋の夜は更けていく。もちろん駅に設置の案山子くんも耳をそばだてて聞いている。このニュースもマスコミで紹介され恒例となり、今年で4回目を迎える。今年はハンドベルも加わる予定。 案山子が町内を練り歩く わが地区は新興住宅地。歴史がないので祭といっても巡行は神輿と太鼓のみ。そこでまたまた頭をひねる。案山子を台車に乗せて子どもたちに曳いてもらうというもの。案山子が立派な山車に変身して子どもたちの「わっしょいワッショイ」が町内を巡る。今年は4作目のドラえもん山車が登場する。 案山子が出張する あちこちから出演の依頼あり。男女共同参画フォーラムのイベントに、交通安全大会の式典にと出張の要請に応じる。今年も他地区から秋祭り山車巡行の予約あり。すべて快諾。モテモテだ。 継続は力なり 初年度の「千と千尋の神隠し」に続き、次年度は「となりのトトロ」、3作目の昨年は「ドラえもん」。「となりのトトロ」は案山子大賞を受賞。「ドラえもん」は小学館の雑誌に掲載された。 この3作品とも、駅への設置・祭山車で活躍してくれている。 もう一つのお話「新庄花物語」 案山子とは別に大きな事業がある。花いっぱい運動に共鳴したふるさと花壇作りだ。4年前に初めて応募し県で優秀賞。そして応募2回目の平成16年は実行委員会を組織して地区とも連携し、雪降る2月からスタート。練りに練った企画が功を奏してか、全国では厚生労働大臣賞を受賞。 花壇作りから「まちづくり」に 花壇作りという園芸技術主体の環境美化が主流。でも当会は主旨が違った。どうしてもまちづくりまで広げたい。コンセプトは「花壇作りをまちづくりに展開」です。 「新庄花物語」 通り過ぎるだけの街角に人が立ち止まった。 話の花が開いた。 花に興味を持ち勉強する姿があった。 文化が街に飛び出した。 アートが生まれた。 案山子が立った。 水車が回った。 交通マナー啓発の動きになった。どれもちっぽけな話。 でも たった一粒のタネから物語が生まれた。 「何でも有り」の欲張りプラン わが仲間には結構いろんな人が集っている。大工・デザイナー・医者・上下水道・電気・建築・交通指導員・警察協助員・音楽・芸術・外国人相談員・エンジニアなどなど多彩。みんなの力を出し合ったら環境美化の花壇の域を飛び出して、「新庄花物語」という大きなまちづくりに膨れ上がった。 以下の14アイテムがその全貌である。 1 環境美化の花壇作り(環境部門)=サルビア・マリーゴールド・朝顔など種から育成 2 交通マナー啓発街頭指導(安全)=交差点に位置する花壇にあわせて通学の街頭指導 3 街角ギャラリー「絵手紙展」(文化)=13名の絵手紙愛好者で花をテーマに花壇で作品展 4 老若男女共同参画社会(異世代交流)=小学生からシニアまで勿論男女共同花壇作業 5 あかり物語(風情)=孟宗竹を加工してろうそく点灯、あたたかい幻想的なあかり 6 竹の物語(癒し)=竹のプランターを製作、自然感が心を癒す7 ミニ植物図鑑(学習)=花壇に採用の花の図鑑を作成し設置 8 中国研修生との作業(国際交流)=地区内に在住の中国研修生9名と育苗など共同作業他 9 水車作り(情緒)=図面を元に製作、本物の水車を花壇の用水に設置する快挙 10 案山子設置(まちづくり社会教育)=勿論トトロやドラえもんを花壇に設置、人気抜群 11 大麻ケシ麻薬防止キャンペーン(少年愛護)=名吉屋からキャンペーンカーを招請 12 ミニコンサート(音楽)=ハンドベルのミニ音楽会 13 バルーンアート(遊び)=他地区の婦人グルーブが賛助応援で風船遊びを子どもに指導 14 タコ焼き&バーベキュー大会(交流)=花壇の横で話の花が咲く この「新庄花物語」は、テレビ新聞マスコミ各社の取材を受け、町はもとより県内に紹介された。 「新庄花物語」終わった後にもう一山やってきた 平成16年11月に全国表彰を頂いて完結と思ったが、物語はまだまだ続いている。それは福井県下のふるさとづくり関係団体からの実践発表・講演依頼です。平成17年5月までの半年の間に福井・三国・坂井・丸岡・勝山・丹南の2市4町に出向き、パソコンのパワーポイントを使って楽しい内容に編集し音楽と組み合わせて発表。このことで活動をひとつの作品にまとめあげることも学習した。おかげでパワーポイントのソフトも使いこなせるようになったみたい。うれしい副産物です。 名も無い物語 当会の主催事業以外に、ほかのまちづくり団体機関等の企画運営事業にも積極的に人材を派遣。 ・防災ボランティアリーダー検討会(坂井町社会福祉協議会関連)=平成17年 ・子供地域活動促進事業「子供英語劇」(美術指導)=平成14〜17年 ・故郷料理教室=平成17年4月 ・県男女共同参画次世代フォーラム実行委員会=平成16年 ・町男女共同参画を進める会=平成15年 ・県地域づくり団体協議会=平成17年3月〜 ・子どもミュージカル美術指導=平成12年 ・坂井町地域交流センター企画委員会=平成13年 ・丸岡駅周辺活性化調査委員会=平成14年 ・町中央保育所ひな祭茶会指導=平成17年 ・町夏祭実行委員会=平成14・15年 ・県男女共同参画社会推進委員=平成15年 広報も重要な活動なのね 会員はもとより地域や町・ 県の人に広報するのも大切と考え、広報誌作りにも力を入れている。編集担当者はけっこう楽しんでやっているのが本当のところだがこれまでに県のふるさと広報誌コンクールでは過去2回特別賞の福井新聞社賞を受賞している。 むすび 定年前後世代の夫婦が結集し、これからの人生を楽しく有意義に生きる道を考えた時、そこに案山子があった、花壇作りがあった。そしてそれは数年後、「まちづくり」になった。 |