「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

子どもたちの笑い声が響きあう、活気あふれる地域づくりをめざして
宮城県本吉町 馬籠新興クラブ
地域の概要

 馬籠地域は、本吉町の南西部に位置し、四方を田束山などの山並みに囲まれている。2級河川「馬籠川」沿いにわずかな平地がひらけた典型的な中山間地域で緑豊かな山里である。
 地域の基幹産業は農業で農家戸数は122戸、農家率は58・7%と高いが、そのほとんどが第2種兼業農家である。水稲・畜産・酪農・自家用野菜栽培などの複合経営が多いが、その経営規模は小さく零細である。また、生産性も低いことから所得には結びついていない。耕地は山間地のため沢田や傾斜地が多く、そのほとんどは未整備地となっている。近年は農業従事者の高齢化や担い手不足などにより耕作放棄地、遊休農地が増加し、農地の荒廃が進んでいる。
 生活環境の面においては、県道、町道、農道の整備が遅れており、改良・舗装を要する路線が多いほか、生活排水路の整備や合併処理浄化槽の設置促進などの課題も多い。また、近年の少子・高齢化の進行による1人暮らし高齢者の増加や若者の流出、馬籠小学校の全学年複式学級化など地域活力の低下が著しく、地域住民は強い危機感を抱いている。


これまでの地域活動の経過と「馬籠新興クラブ」の立ち上げ

 地域の現状打破と課題解決のため、平成12年度に現在の「馬籠新興クラブ」の前身となる「馬籠地域活性化委員会」を組織し、馬籠地域の住民の目線で地域おこしを考え、地域資源を生かした個性的で魅力あふれる農業農村の実現を目標に地域活動を開始した。
これまでの主な地域おこし活動
・「馬籠地域活性化委員会」の立ち上げ(地域の方々を中心に約30名)
・地域おこしマイスターの青木恭介先生(宮城高専教授)をアドバイザーに迎える。
・産業振興部会、教育文化交流部会、生活環境福祉部会の三つの部会ごとに定期的な「ワークショップ」を開催し意見交流。
・第1回「地域おこし先進地視察研修会」を実施し担当者等から説明を受ける。(葛巻町「高嶺水車母さんの会」、紫波町「産直センターあかさわ」、遠野市「風の丘・夢咲き茶屋」)
・現状把握と地域資源の再発見のため「集落点検調査」を実施し、地域内をくまなく踏査。
・「馬籠地域お宝マップ(集落点検地図)」を作成。
・地域おこしマイスターの山田晴義先生(宮城大学教授)を講師に迎え、「地域づくり講演会」を地元の集会施設で開催。
・馬籠地域の住民を対象とした「地域づくりアンケート」を実施し、地域づくり活動への関心度や地域の未来像について調査した。(地域内全210世帯へ調査依頼、176世帯から回答あり、回答率83・8%)
・第1回「地域おこし先進地視察研修会」を実施し担当者等から説明を受ける。(亘理町「旬菜館」「おおくまふれあいセンター」、丸森町「農業体験日曜農学校」「農業創造センター」)
・「隣むらの産直施設見学会」を実施し学習。(東磐井郡内6施設を見学し、説明を受ける)
・「馬籠地域活性化プラン」を策定し地域内全戸へ配布。
・活性化プラン策定報告会を開催し、今後の地域おこし活動について地域内での合意形成を図る。
 「馬籠地域活性化委員会」を発展・充実させた実行組織として「馬籠新興クラブ」を立ち上げ、平成12〜13年度で策定した「馬籠地域活性化プラン」の具現化と、さらなる地域振興のため様々な活動を展開している。


「馬籠新興クラブ」の現在の地域おこし活動

馬籠地域活性化プランの具現化第1弾「馬籠宿・いっぷく茶屋」(直売施設)の開設
 豊かな自然に囲まれた馬籠地域は、美しい景観はもとより農産物や山菜など食材の宝庫でもある。これまで見過ごされてきた地元産の素晴らしい食材に目を向け、地域の活性化に生かし、地域おこしの起爆剤として「馬籠宿・いっぷく茶屋」(直売施設)を開設した。
 毎週土日のみの営業ではあるが、全て地域内で生産された新鮮な野菜、米、餅、木工芸品、炭、花卉、山菜などを低価格で販売し好評を得ている。「いっぷく茶屋」は単なる直売施設としての機能だけではなく、地域内唯一の情報・交流ステーションとして、地域住民が気軽に立ち寄り、田束山麓の湧水(地域では「金命水」と呼ばれる清水)を囲炉裏で沸かしてお茶を入れ、自慢の漬け物を持ち寄り、馬籠地域の未来づくりに夢を膨らませている。また、自宅にこもりがちだった高齢者が毎週開店を心待ちにしているなど、地域コミュニティの醸成にも大きな成果を上げている。
 地域農業への影響も大きく、農家の生産意欲の向上や遊休農地の活用、農産加工への関心の高まりなど、手づくりの小さな「いっぷく茶屋」が地域住民にとって、大きな「夢」を語る貴重な拠り所となっている。


「馬籠新興クラブ」による馬籠元気村の創造と今後の具体的な取り組み

魅力ある農村集落の形成
 地域内の自然環境や歴史・文化を最大限に活用した地域振興を図っていく。具体的には地域内に残されている歴史的に貴重な「どう屋」(製鉄所)跡を巡る散策路を整備し、歴史と自然に触れる機会を創り出す。また、街並みを趣のある宿場風に統一し、地元産の木材を活用したユニークな屋号看板や地域標識を掲示するなど、個性ある農村集落を創造する。
地域内への定住促進と潤いのある暮らしづくり
 地域内には定住促進のための「馬籠住宅団地」があるが、入居者への農地貸付や農作物の無料提供など、クラブでも定住促進を積極的に支援していく。また、日頃から協働を心掛け「地域でできることは地域で」をモットーに、道路の草刈りや河川の清掃など地域内の環境美化に努める。
地域福祉への積極的な参加
 1人暮らしの高齢者や高齢者だけの世帯の方々が孤立しないよう交流を深め、給食サービスやお茶飲み会などを開催して地域福祉活動に関わっていくほか、各分野でご活躍された先輩(高齢者)を講師に迎えた講話会などを開催し、高齢者の生き甲斐と失われがちな地域伝統文化等の継承を図る。
やる気のある担い手の育成
 農林業の担い手による生産活動をバックアップし育成していく。農地の貸し借りや作業の受委託をクラブで仲介するなど、遊休農地の解消と農林業生産の向上を図る。また、担い手の結婚を促進するため、魅力ある農村の暮らしと儲かる農業の展開を支援していく。
馬籠宿「いっぷく茶屋」を核とした地域づくり
 昨年末に開設した「いっぷく茶屋」を「食の地域ステーション」として今後さらに拡充し、単なる農産物の直売機能だけでなく、地産地消を促進し、伝統的な地域食文化の伝承や食育推進の体験工房として活用していく。